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クリエイターインタビュー|高野 明子さん(前編)

東北芸術工科大学を卒業し、現在は仙台で主にグラフィックデザインや企画制作の仕事をしている高野明子(たかの あきこ)さん。フリーランスで活動する傍らシェアオフィスTHE6のファシリテーターも務めています。その他にも、とうほくあきんどでざいん塾が主宰する「蛇足の会」に参加するなど日々活動の幅を広げている高野さんにインタビューしました。

 

−東北芸術工科大学(以下、芸工大)卒業後の経歴について、簡単に教えてください。

 卒業後は、せんだいメディアテークの企画・活動支援室で学芸員のアシスタントや、「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の担当をしていました。その後、公共施設だけでなく、民間企業でもアートに関する仕事がしたいと思い、アートやデザイン分野で事業を展開する東京の会社で働きました。201512月に家族の仕事の都合で戻ってきてからは、仙台を中心に活動しています。

−芸工大ではどんなことを学んでいたんですか。

 プロダクトデザイン学科に所属していました。並行して、学芸員の勉強をしたり、インスタレーションを制作したりしていました。在学中にスウェーデンに留学し、ファインアート学科で学びました。

−デザインには、小さい頃から興味があったんですか。

 絵を描いたり表現することが好きでしたね。小学校2年生の夏休みに、七夕絵画コンクールで仙台市長賞をいただいたことがありました。その絵はもうないんですけど・・・。

−捨てちゃったんですか?

 いえ、返却しようと段ボールに入れていた作品を展示会場のスタッフが、ゴミと誤って焼却炉で燃やしてしまったらしくて。次の日の新聞に「コンクールで児童の絵が◯点焼失」というような記事も出たんですよ。後日、主催者が謝罪に来てくれて、「君の絵は星になりました。」って説明されたのを覚えています(笑)。その時に、小学生が使うには立派そうなアクリル絵の具セットをいただき、さらに絵を描くようになりました。

−(笑)。プロダクトなど、立体にはいつ頃から興味が出てきたんですか?

 中学生の頃だと思います。母が買ってきてくれたイームズ展の本を見て、チャールズ&レイ・イームズに憧れるようになったんです。総合学習の時間に彼らについて調べたりするうちに、デザインの力ってすごいなと思うようになり、高校では美術科のある宮城県宮城野高校で彫刻を専攻しました。ひたすら変な形の椅子をつくっていましたね。

−だから「暮らす仙台」のリーフレットが半立体のような感じなんですね。

立体を学んでいた経験が少しは影響しているかもしれませんね。

暮らす仙台リーフレット

−学生時代の表現活動と社会に出てからのクライアントワークって、やっぱり違いますか。

 デザインしているつもりでも、自己表現としてのアートに偏りがちだった学生時代と、社会に出てから関わるデザインは違いますね。アートとデザインは、共通している要素はありますが、頭の使う場所が、例えば英語と日本語のように違うなと感じます。

−クライアントワーク以外でものをつくる機会はありますか。 

 とうほくあきんどでざいん塾の「蛇足の会」※は日常の仕事ではなかなか実現できないアイデアを同世代のクリエイターと取り組める機会になっています。前期はグループワーク中心で、建築系の仙台市職員の方と写真家の方との3人チームだったのですが、文化横丁の某カレーショップのZINEをつくりました。analog※で、カレー粉をインクに混ぜてシルクスクリーン印刷をしたのが楽しかったです。

カレーショップZINE

 後期は、一人で手のひらでできる範囲で成立する、原始的な制作を意識しました。広瀬川の河原に転がる無数の石を選んで組み合わせるということが、普段の仕事のデザインや編集という行為に似ていると思い、石を金継したジュエリーを制作しました。発表会では、実際にジュエリーを販売し、拾った石に、自分のセンスを加えて編集することによって、新しい価値を生むことができるのか実験する場にしました。

私が届ける物の価値-広瀬川にもいる無能の人

※蛇足の会:とうほくあきんどでざいん塾が主宰する仙台市域で活動する若手クリエイターを対象としたワークショップやフィールドワークを通して思考を磨く実践の場です。
analog:印刷加工に特化したレンタルスタジオです。試作品やオリジナル商品の制作など、自由度の高い使い方ができます。

−今の仕事のどんな部分に、やりがいや面白さを感じますか。

 一つの仕事がきっかけになり次の仕事をいただける。そういうつながりが実感できるのは面白いですね。フリーランスならではだと思います。あとは、プライベートで仲の良い人と一緒の仕事は、仕事に限った関係性よりも、共有できる感覚がより広くなり、深いものづくりができる気がします。
 逆に難しいのは自分をマネジメントすること。スケジュールや体調管理がしっかりできないと、仕事がストップしてしまうのは怖いところですよね。

−デザインをする上で、大事にしていることはありますか。

 人の心が踊りだすようなものをつくりたいという想いで仕事をしています。だから屋号にも「ワルツ」と入れて「WALTZ by Lucy」と名付けています。提案したときに「うわ!やってくれましたね!」ってなればいいなと思って仕事をしています。

−デザイナーとして、今後チャレンジしてみたい仕事はありますか? 

 仕事はご縁だと思っているので、「こういう仕事がやりたい」という強い想いはないです。どんな仕事でも自分のベストを尽くしながら、クリエイティブの質を上げていけたらいいなと思っています。

 

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高野 明子

髙野明子による企画とデザインのプロジェクト。現在は主に、フライヤーやグッズのデザイン、展覧会やイベントの企画等を制作。生活の中で、デザインやアートに触れた時に、ワルツを踊リたくなるような瞬間を生み出すことをコンセプトに活動している。
髙野明子 Akiko Takano  1987年宮城県仙台市生まれ。愛称はルーシー。
宮城県宮城野高校美術科、東北芸術工科大学卒。在学中にスウェーデン王立美術工芸大学 konstfack 留学。学芸員免許を取得後、せんだいメディアテークで学芸員アシスタント、東京の制作会社で展覧会やメディアの企画・制作等を経て、2016年からフリーランス。THE6ファシリテーター。株式会社モーフィング東北支部。

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