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ハヤシ印刷(後編)始めたばかりの頃を思い出し、素直な気持ちで

「何でもやります」の言葉を形にして発展し続けてきたハヤシ印刷。その原点は「何でも屋」だった初代と、林社長の高校時代の部活動にあった。営業回りで苦渋を味わったエピソードも笑い飛ばす豪胆さと、初めて仕事をもらった時の気持ちをいまだに忘れない謙虚さを兼ね備える林社長が語る、本当に大事なこと。単純明快でありながら、誰もが忘れがちな仕事の原点。クリエイターのみならず、あらゆる職業人への提言として受け取りたい。

始めたばかりの頃を思い出し、素直な気持ちで

―わらをもつかむ思いで社長のところに連絡してくるわけですからね。

林 私のところにずっと頼んでくる人たちがよく言っているのが「電気、水道、ガス、ハヤシ」。ここ一番というときはハヤシに頼めば何とかしてくれるし、駄目と言われたら諦めるしかないと。みんな同じことを言っています。そうなるともう気持ちで受けますよね。

「駄目と言われたら諦める、なんて言われたら気持ちで受けるしかないですよね」と林社長

―お聞きする限り、ずっと気持ちの部分でやってこられたんだろうなと思いました。

林 でも、やりたくないものはやりたくないとは言うんですよ。偉そうな言い方になりますけど、この人のためならやってあげようかなと思うからやるんです。

うちでそういうキツいのを受けると、例えば製本屋さんとか、後加工の方にも負担がかかるんですけど、そういうときに印刷会社の営業の人はみんな電話で解消しようとするんですよね。それじゃ駄目。よく「下請け」と言いますけど、あの言葉が大っ嫌いなんです。表だけで「協力会社」なんていうのも嫌ですし。

職人さんですから、足を運んで何とかお願いしますと言えば、しょうがないなと言って対応してくれることが多い。何か手伝うことありますかと聞いても「いいよいいよ」と言って、ぱぱっとやってくれます。だからすぐに動けるかどうか、人の立場に立って考えられるかどうかが大事です。

―動くという意味では、営業活動も積極的に行われているんでしょうか。

林 去年は東京で1000件飛び込みで回りました。何件取れたと思います?

 

1%くらい?

林 ゼロ。

 

―!

林 本当に笑っちゃいますよ。1000分のゼロ。名刺を投げ返されたりもしました。そうなるともう居直りますよね。ああ面白い、俺って全然、力がなかったのかと。仙台で頑張っていた方がよかったな、あーつらいって笑えてきます。

飛び込みで1000件回って成果ゼロ、という苦い経験をいかにも楽しそうに話す

―笑い飛ばせるのがすごいです。

林 そういうのが面白いんですよ。初心に戻れますもん。そこが一番重要なところで、上の方になっていくと勘違いして、下の人たちの気持ちが分からなくなりますから。

そういうことをやっていないと仕事がなくなるんですよね。会社にいてボーッとして楽をしていたら、さっぱり声が掛かってこなくなる。これじゃまずいなということで営業してぐるぐる回って、やっぱり駄目だな、営業が下手くそなのかもな、と思ってがっかりするんですが、しばらくすると電話がかかってくるようになる。やっぱりお天道さまが見ているんだろうなと思います。

高校時代、私は軟式野球部だったんですが、1年の時に練習試合で代打に出たら、先輩から「見逃し三振だけはやめろ。とにかく振れ、振らないんだったらやめろ」と言われました。

会社に入って、仕事ができる人たちの話を聞くとみんな同じこと言うんですよ。振ってこい、振らなきゃ何もできないぞと。だから18歳で最初に話を聞いてもらえた営業先で「何でもやります」と言ったら、急ぎの文書作成の仕事を一つ頼まれて、すぐ会社に戻って1時間で作って渡しました。ところが、とにかく急いで入力したものだから間違えだらけ。でもその社長は「お前は偉い。『急ぐ』ということに対応した。データも持ってきているので、これを直せばいいだけだから楽だ。ありがとう」と言ってくれて、そのまま印刷も頼んでくれました。

―それはうれしいですね。

林 その時はとにかく仕事がもらえたことがうれしかったですね。最初はみんなそういうことがうれしかったはずなんですよ。でもだんだんと忘れていくんです。でも私はそれを忘れていないので、いまもその調子でやっています。

 

―「何でもやります」を続けてきたのが、いまのリクロスにつながっているんですね。

アパレル店への「リクロス」導入事例

林 頼まれたことに「できない」と言いたくないんです。誰かがせっかく頼んでくれたんだから、失敗しようがやれるところまでやらなきゃと。それに、みんなが「できない」と言っているからこそ私のところに話が来るわけで、みんなができるようになってしまったらやることはないんですよね。

ハヤシ印刷は「何でも屋さん」なんです。そもそも、うちのおじいさんが創業した時は「林屋」という何でも屋で、それが印刷の専門業を経て、また原点に戻っていこうとしているだけなんです。

何でも屋の「林屋」から始まったハヤシ印刷の現社屋

これを読んでいる人にも入社した当時、仕事を始めたばっかりの頃を、もう一度思い出してみてほしいんです。そこを考えたら、これはこうだから難しい、とは言えないはず。頼まれたことに対して「これはね…」なんてうんちくを言う人もいますけど、お客さんが聞きたいのはうんちくではなくて、やれるかやれないかですよね。評論家みたいなことはいいですから、できるかできないのかをはっきりさせて、どんどんやっていくと、仙台の経済のスピードももっと速くなるはずです。

始めたばかりの頃の気持ちを忘れないで、仕事を頂いたことをお客さんに「うれしい」と素直に言って、やれるだけやる。そういう単純なことじゃないですかね。

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

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