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日の丸ディスプレー仙台(中編) クリエイティブとの融合で生まれる新たなサイン

サインの製造現場にデザイナーらを招き、見学会を行っている日の丸ディスプレー。現場を見てもらうことで仕事の流れをスムーズにすることも重要な目的の一つだが、工場にある機械や素材を見たデザイナーが創造的な刺激を受けて、新たなものづくりの可能性が広がることを狙っている。「目に付くものは全部サイン」。業界団体ではすでにそういった認識となっているいま、クリエイターとの協働によってまちの景観をさらに豊かにする新たなサインが生まれる。

クリエイティブとの融合で生まれる新たなサイン

―見学会を通してどういう効果を期待していますか。

遠藤 私たちがやっていることを理解していただくというのが大事ですね。例えばヘアライン(金属板の表面を髪の毛のように細かいラインで直線的に研磨する)仕上げのステンレスは溶接をすると目(ライン)がつぶれてしまうため、最後は手で仕上げるんです。お客さんはその工程を見たことがないので、いつも「ヘアラインは高いですよね」と言われるんですが、見に来てもらうと「ああ、最後の仕上げは手でやっているんですか。これならお金がかかって当たり前ですね」と理解してくれます。

そういうところを理解していただくと、後で見積もりや図面のやり取りをするときにも説明がしやすいですし、これくらい手間がかかりますという話も分かってくれるんですね。さらにお客さんがクライアントさんに対して、「こういう工程が増えるので高くなるんです」と説明できるんです。

工場を見学していると意外に手作業が多いことに驚く

―後工程を考えたデザインをしてくれるようなこともあるんでしょうか。

遠藤 それをやるとデザイナーさんの視野が狭まってしまいますから、最初は自分の思った通りのデザインにしてください、と。実施設計になった場合は作れる、作れないが出てきますので、そこで相談させていただいて、この形だと作れないけど、ここをこうすれば意匠が守れますよという話をします。基本的に、できないものはないんです。ただ必ずコストの設定があるので、その部分との兼ね合いですね。

むしろ、現場を見て実物を触っていただくことによってうちに対する期待度が上がって、じゃあ何ができるだろうとデザイナーさんが発想を膨らませて、何か新しいものを作るきっかけになればと思っているんです。

例えば照明屋さんからすれば中に照明が入っているものは全て照明器具なんですが、それに表示面を入れるとサインになります。同じように、最近多いデジタルサイネージでもただ壁に付いていればただのモニターですが、モニターをはめ込む金物やボックスと一体になればサイン工事となります。見に来ていただいた方たちに、そういうものを探していただくという感じですかね。

大型の機械で鉄板を裁断し、さまざまな形に加工していく

―これまでどういった実例があるんでしょうか。

遠藤 私たちは内装の金物は気にしてなかったんですが、脚の部分がかっこよく曲がったようなデザインのテーブルがありますよね。その脚を一貫して作れるところがないと内装業者さんが苦労していて、日の丸ディスプレーさんなら作れるんじゃないかと相談を受けました。脚の金物を専門に作っている工場はもちろんあって、既製品でしたらそちらの方が安いんですが、デザイナーさんとしてはどこかに一つ自分のオリジナルを残したいという思いがあって、それを作れるところがなかったんですね。

ほかにも、一時期モニュメントサインが流行して、まちなかにたくさん作られましたが、モニュメント専門の工場ではなくサイン工事としてうちにお話がくることがあるんです。ただ、デザイナーさんやアーティストの方はこだわりが強いので、実現しようと思うと何千万円という額になってしまうこともあって、本決まりになることは少ないですけどね。

それでも、まずは見ていただいて、可能性を探っていただいて。私たちとしてもサインを狭い範囲で捉えるのではなくて、別の方からアイデアを頂いて形にしていくことで視野が広がりますので。

鉄という素材を楽しみ、隠れている魅力を見つけ出すプロジェクト「Fe-H,A,S」

―デザイナーさんとのコラボにどういう期待がありますか。

遠藤 私たちはどうしても設計通りにどう作るかという方向に真っすぐ行くんですが、デザイナーさんは意図を持ってデザインしていて、それが分かれば、どうやらここを気にしているようだから、それを生かすためのよりよい方法を提案することもできます。直接デザイナーさんと話すことがあまりないので、そういう人たちに来てもらって、「私の作品をこうしたい」という話をしてもらえたら楽しいですね。

メインとなる看板製作の仕事を「母屋の仕事」と私たちは呼んでいますが、母屋とは別に、そういう話がたまに入ってくるとワクワクするんですよ。

ハスの葉をイメージした作品。デザイナーの発想と金属加工の技術が融合

―そういった中から新しいサインも生まれてくるのかもしれませんね。

遠藤 いま、日本サインデザイン協会の考え方としては、目に付くものは全部サインだと。人の生活を豊かにする、あるいは安全を守るために情報を提供するものは全てサインだということになって、領域がどんどん広がってきています。

例えば外国人からすると富士山はランドマークだからサインだと。あるいは仙台駅のステンドグラスで3人で待ち合わせしたときに、1人だけがお互いを知っていると、その人に向かってほかの2人は来るので、その人がサインだというんです。仕事として考えた場合にそれをどう表現するのかと言われると難しいんですが、それぐらい概念は変わってきています。

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

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株式会社日の丸ディスプレー仙台

〒981-0134 宮城県宮城郡利府町しらかし台6-7-1
TEL:022-356-6789 FAX:022-356-6780
URL : https://www.display.co.jp/

企画デザインから製造まで、サインのことなら何でも自社一貫生産ができる体制を誇りにしています。金属加工、アクリル加工の技術はもちろんのこと、サイン業界では東日本一の機械設備を持つ仙台工場をはじめ、設備の充実も怠らず発展させてまいりました。仕事はきれいに、素早く、責任を持って。商業ユース中心のサイン業界で培ったこの「常識のレベル」を、より広範囲に皆さまにご利用いただけるよう、開発を続けてまいります。

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