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ヒロセ(後編) 生活に寄り添った靴ビジネスのプラットフォームに

過当競争にある靴の卸から脱却するために打ち出したもう一つの基軸が、現代人の生活ニーズに寄り添った商品の開発。単に商品を売るのではなく、そのスタイルごと提案するというスタンスで、新たな流通先も見いだしている。さらには自社展開のショップを通して新たな角度で靴にスポットを当て、ニーズを喚起。共通認識を持つほかの分野の事業者と共に、大量生産大量消費の先にあるライフスタイルのプラットフォームを築こうとしている。

生活に寄り添った靴ビジネスのプラットフォームに

―「Bon voyage(ボンボヤージュ)」という新商品も発売されましたが、こちらのコンセプトは。

菅井 いま男性も女性も、特に地方部の若い子たちの外出率が著しく下がっているそうなんです。スマホがあって外に出なくてもコミュニケーションが取れるし、子どもを遊びに連れていったり買い物に出たりするのも少しおっくうだと。できるだけオフは体を楽にして、気張らない生活スタイルになってきています。

それを象徴するように「楽チンで快適」という言葉が出回るようになり、雑貨店でも「楽チンで快適」をアピールする商品やコーナーが増えました。その延長線上には「快適で便利」という言葉があるだろうと予測し、その一つの答えとなるようなものづくりをしていこうと考えました。

素材からメード・イン・ジャパンで良いものを追求する「SOJI」とは異なり、こちらはコンセプトに基づいて製品を考え、商品名の「ボンボヤージュ」とは別に「オフ履き」という言葉も商標登録出願中です。オフの日に楽に履けるもの、快適で便利なもの、そういった生活提案型の開発のアプローチでプロダクトを作っていくとどうなるのか。2018−19年秋冬でテストマーケティングをして、1年後から本格的に広げようと思っています。われわれが主に扱っている商品よりも若干高めの価格で5,000円台に設定しています。

2019年2月に第1弾を発売した「ボンボヤージュ」

―高め…なんでしょうか。

菅井 そういうリアクションになりますよね。われわれの業界では5,000円でも高めなんです。2,900円や3,900円、「ニッキュー」「サンキュー」と言われるところが超ボリュームゾーンで、特に量販店さんはそのゾーンからなかなか抜けられない。ナイキやアディダスはもっと高いじゃないかと思われるかもしれませんが、結局は値段を下げなければ売れません。原価が高いため最初は上から盛って、下げていく商習慣なんです。それも時代的に合わなくなってきているので、そういう売り方ではない軸を持とうという意図もあります。

―「オフ履き」のスタイル自体を提案していくということですね。

菅井 現代の生活スタイルに合った、快適な靴はどういうものか、どこに置かれるべきかと発想していくと、いろいろな可能性が見えてきました。例えば靴専門店のお客さんはどんどん減っているんですが、それ以外のお客さんがどんどん増えています。最近特に増えているのは、手袋や軍手や作業服を売っているようなワークショップ。もともとの客層とは違ってアウトドア好きや釣り好きの人、若い人にも人気になっていますよね。

私もクライミングを趣味でやっていますが、アウトドアショップよりもワークショップの方が安くて使えるものがたくさんあると感じます。内側に起毛の入ったとても温かい軍手が、価格を見たら298…とあって、ニッキューかと思ったら298円。「298円でこれか!」という驚きがあって、目線が変わればもっといろいろな可能性があることに気付きました。

単にパンプスを靴コーナーに並べるという商売は限界が見えますが、「オフ履き」というくくりの中であればどこまでも枝葉を広げて提案できる。靴屋さんではなく雑貨屋さんでもいいわけで、そういうやり方を今後試してみようと思っています。

靴店や靴売り場に限らず「オフ履き」の概念を展開する場を模索する

―直営の小売店「SHOES STOCK(シューズストック)」も展開されていますが、その意図は。

菅井 若い頃に世界を回った時、自転車で移動していたんですが、ショッピングセンターを通り過ぎたら次のショッピングセンターまで今日中にはたどり着けないということが普通でした。ネットショッピングはそういう国や地域にこそ本当に必要とされるもので、日本ではあちこちに店があって、ほとんどの地域で歩いていくことができますよね。ネット販売も伸びていますが、ものを実際に見て買う文化が根強い。それはいいことでもあると思います。

また靴は実際に履いてみない限り自分に合うのかわかりません。店頭で手に取り質感や感触を確認するだけでなく、自分の足に合うかどうかが重要な項目になっているのです。ですからうちもいま直営店事業を広げており、すぐ近くにできたイオン(イオンスタイル仙台卸町、2018年9月オープン)にも出店しました。

―店ではどのような試みを行っていますか。

菅井 量販店さんは薄利多売が進んだところで競争しているので大量に売らなければならないというミッションがあり、どうしてもせかせかした売り方になってしまっています。それに対して、あえて一呼吸置きましょうという提案をする店です。もちろん売り上げや利益からは逃れられませんが、量販店さんとは別の思想で展開しています。

「シューズストック」イオンスタイル仙台卸町

例えば一つが夫婦提案という売り方。いま世の中の夫婦は、日本の歴史の中で一番仲がいいんじゃないかというくらい夫婦仲がいいんです。旦那さんは奥さんが望むものを買ってあげたいと思うし、奥さんも旦那さんが望むものを買ってあげたいと思っている。でも、そこまでお金もかけられない中、ちょうどいいのが靴。同じ靴を色違いで買っていかれる方が多くいらっしゃいます。

「卸町ふれあい市」(卸町で4月と10月に開かれる一大イベント)でお客さまと直接触れ合いながら、どういう靴を履いているか見ているんですが、夫婦やカップルでいらっしゃると同じ靴の方が本当に多いですね。それも踏まえてうちの店では、普通は女性7:男性3で靴を置くところを、ユニセックスのコーナーを3分の1くらい設けています。出店してそれほどたっていませんが、売り上げ上位で表彰されるなど、さっそく効果も現れています。

―最後に、これからの展望をお聞かせください。

菅井 われわれの先輩たちは紹介のビジネス、「リファーラルマーケティング」といわれるもので成果を上げてきたんですが、これから先を考えると、何かが自然に集まってくる集合体を作らない限り、中小企業単体では行き詰まることが見えています。

それを乗り越えるために、まとまりができていくといいのかなと思っています。靴はわれわれがやるとして、例えばデニムだったら気仙沼のオイカワデニムさんという会社がありますが、ものを大事に作ってゆっくり売って長く使ってもらおうという同じ意識を持つ会社が集まって一つのプラットフォームができると、面白い展開になる予感がしているんですよね。

自社商品を優しいまなざしで見つめる菅井社長

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社ヒロセ

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国内全域に販路を持ちナショナルブランドシューズおよびドメスティックブランドシューズ販売代理店、約150社。ファブレス生産による企画商品(PB、OEM)の開発。国内工場及び、中国・欧州を主とした契約工場へ生産依頼を行い国内向け商品の開発を行う。地方広域商圏を持っている商業施設へ出店。東日本に現在10店舗運営。

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