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クリエイターインタビュー|後藤 亜紀さん(後編)

宮城県南三陸町にある「株式会社ヤマウチ」のインハウスデザイナーとして、商品のデザインやプロモーションなどを行っている後藤 亜紀(ごとう あき)さん。ヤマウチの商品、そして地元である南三陸に愛着を持って意欲的な取り組みを続ける後藤さんに、お話を伺いました。

―新卒で横浜の会社に入社したということでしたが、戻られてからはずっと南三陸で暮らしてきたんですか?

そうですね。ほぼ南三陸です。

―こちらに戻られたのはどうしてだったんでしょう?

都会への憧れというか、ちょっと外に出てみたいなという気持ちから横浜の会社を選んだんですが、いざ行ってみると仕事が精神的につらかったり、周りに知っている人がいないことが不安だったりして、暮らしていく自信がなくなってしまったんです。

―戻られてすぐに入社された印刷会社は、何年勤められたんでしょう?

18年間お世話になりました。仕事を好きになれたことが大きかったですが、仕事の内容だけでなく地元という安心できる場所で働き暮らすことができたのも、長く続けられた理由だと思います。

―デザインの仕事を、南三陸ですることのよさはなんですか?

デザインって正解がはっきりしない分考えが行き詰まることが多いんですが、そんなときはSNS用の動画撮影がてら海に出かけたりしています。帰ってくると気分がリフレッシュされていて、またデザインに集中できたりして。息抜きができる気持ちのいい場所がたくさんあるのは、南三陸のよさかなと思います。そんなふうに自由に外出することを会社が認めてくれていることも、ありがたいですね。

―他にも自由だなと感じる部分はありますか?

部署間の壁があまりないことですね。お客さまからいただいたご意見は、どんなものでもすぐに共有されるので、「それじゃ、こういうのをつくってみようか」みたいな流れを迅速かつ自発的につくることができます。考えたことはまずやってみようという雰囲気もあり、いいものが生まれやすい環境だと思います。

―ヤマウチの通販サイトも後藤さんたちがつくっているんですよね。レシピページなどもあってとても充実していますね。

自分たちで企画したものをかたちにできることがとても大きなやりがいで、いろいろなことに意欲的に取り組めています。サイト構築のスキルは専務に教えられながら、みんなでゼロから勉強して習得しましたし、レシピは料理が得意な取締役やスタッフのアイディアだったり、お客様の声を生かしながら考えています。オフィス内にオープンキッチンもあるので、調理工程の撮影もそこまでハードルが高くありません。

―すごいですね。みなさんで力を合わせて取り組まれているんですね。

社員の少なさを補うために、やれることはやれる人がやろうというスタンスで取り組んでいます。そのうちにみんながスキルアップして、さらにできることが増えてくる、それがまた楽しいですね。

―なるほど。他にも何か新しい挑戦はありますか?

地元企業数社と一緒に、大学生のインターンシップを積極的に受け入れています。若い世代にも、もっとヤマウチの商品を知ってほしいと思っていて、一緒に市場分析を行い新商品を提案してもらうんですが、いつもこちらの予想を超えていてとても面白いです。ただ、やっぱり若い人が通販で魚介品を買うことってほとんどなくて。彼らが大人になったときに「そういえばヤマウチっていうお店があったな」と思い出してくれるといいですよね。中には南三陸が大好きになって「南三陸に住もうかな」なんて言ってくれる人もいて、そういうつながりができるのも楽しみの1つです。

―他にも地域と連携した取り組みはありますか?

障害者の方の生活介護事業所「のぞみ福祉作業所」さんが取り組まれているアートプロジェクト「NOZOMI PAPER Factory」とコラボさせていただいたことがあります。プロジェクトメンバーの方々が描く絵が本当に魅力的で、何か一緒にできないかなと社内で話していたんです。それで、うちのブランディングの一環としてお店の紙袋を一新しようということで声をかけさせていただきました。「南三陸の海」をテーマに、魚や海にまつわるものをたくさん描いていただいて、そのイラストを使って紙袋をデザインしました。描いてくださった方全員の絵を使いたくてレイアウトに悩んだりもしたんですが、どの絵も本当に素敵でデザインするのがとても楽しかったですね。

他には、宮城大学の学生、南三陸の及善蒲鉾店さんと一緒に「ほや鍋具材4点セット」という商品を開発したこともあります。

「NOZOMI PAPER Factory」とのコラボによりつくられたヤマウチの紙袋

―ヤマウチが成長していくことだけでなく、地域とのつながりも大切にされているんですね。

人口が少しずつ減ってきているので、やっぱり若い人にも魅力的に映る町になったらいいなと思っています。新しいことを地域の仲間たちと一緒にやっていけば、南三陸全体の盛り上がりにつながるんじゃないかと考えています。いい仕事をする漁師さんや農家さんもたくさんいるのに、伝え方や売り方がわからないせいで、お客さまに魅力を届けられずにいる。それもすごくもったいないなと感じています。

ヤマウチの社員として、南三陸町の一員として、これからも地域と連携できることを見つけて取り組んでいきたいです。

―最後に、これからクリエイティブ分野で仕事をしたいと考えている方にメッセージをお願いします。

デザインするときは、その対象に愛情を持つことを大切にしてほしいと思います。商品撮影をしているとき、専務にどうやったらおいしそうに撮れるかと聞いたら「愛だね」って言われたことがあって。最初はピンと来なかったんですが、実際に自分たちでレシピを考えたり盛りつけをしたりしていると、「おいしそうだな」とか「食べたいな」という気持ちが湧いてきて、その気持ちで撮影すると本当においしそうに撮れるんですよね。なので、デザインでも撮影でも向き合う対象に愛を持つことができたら、もっといいものができるんじゃないかなと思います。

あとは、どんな仕事でもまずはやってみることですね。「成功の反対は失敗じゃなくて何もやらないこと」みたいな言葉があるように、やってみないことには結果は残せないですよね。失敗でも結果を残していけば、その蓄積は後々活かせる財産になっていきますから。

取材日:平成30年10月18日
聞き手:仙台市地域産業支援課、工藤 拓也
構成:工藤 拓也

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後藤 亜紀

南三陸町出身、在住。
株式会社ヤマウチ デザイン室
町内印刷会社にてDTPオペレーター、グラフィックデザインを経験。
2016年より株式会社ヤマウチ デザイン室に勤務。

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