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クリエイターインタビュー|工藤 彩子さん(後編)

印刷機器のレンタルスタジオ「analog」で働く工藤彩子(くどう あやこ)さん。山形県の東北芸術工科大学(芸工大)を卒業後、メディアテーク、森の中のイベントスペース、山小屋と、さまざまなジャンルでの仕事を経験されてきたという工藤さんにお話を伺いました。

―山小屋での仕事の後、仙台に戻られたのですか。

そうです。本当はもうワンシーズン違う山小屋に行きたいと思っていたんですが、合間で働いていたスキー場で大きな怪我をしてしまって。手術や入院が必要で、治るのも時間がかかる怪我だったので、一人暮らしでは大変なこともあり、転院して仙台の実家に戻ってきました。結局治るまで1年くらいかかって、その間は仕事もできなかったです。

―これまでメディアテークで3年、那須のイベントスペースで2年、山小屋半年。相当珍しい経歴ですよね。

自分の中ではストーリーがあって自然な成り行きなのですが、自分自身が何か一貫したものを持ってないといけないという気持ちにはなります。「自分はこれができます」という、個人としてのスキルが何かないと、これから厳しいんじゃないかと。

―確かに1年間働けないと不安になりますね。

そうなんです。療養中は仕事もしていなかったですし、このまま仙台にいてもいいし、いなくてもいい。ある意味自由な状況になったことで、いろいろ考えることができました。

これまで仕事をしていて何がおもしろかったかなと考えると、その仕事をしていたからこそ出会えた人たちがいたり、その人と仕事を通して何かをつくり出せて、それによって今までとは違う段階にお互いに行くことができたことがおもしろいと思えたので、これからもそういうことができたらと思ったり。あとは大学で学んだ写真や、メディアテークで文化に関わる仕事していた経験を活かせたらいいなとか。働き方についても、朝行って夜帰ってくる形もひとつだけど、もっと柔軟にできるといいなとか…わがままなんですけど(笑)。そうやって条件をいろいろ考えた時、WEB制作をやってみようと思ったんです。もともと、おもしろいことをやっている人を裏で支える仕事がしたいと思っていたことも果たせるかなと。

―仕事としてWEB制作を始められたのですか。

いえ、まだ仕事にはなっていなくて、勉強をしながら、友達のサイトをつくらせてもらったりしています。ずっと独学でやっていたんですが、2017年の夏ぐらいからは学校にも入りました。通わなくても映像で授業を受けられて、週に1回先生に話を聞けるみたいな所です。

―ゆくゆくはフリーでやるのが目標ですか。

どうしてもフリーでやりたいっていう気持ちでもないんですけど、やれる状況になれたらいいなって思います。こんなふんわり言ってるうちはダメかもしれないけれど(笑)。自分で荷物を背負って歩ける技術を身に着ければ、違う場所に行っても暮らしていけるかもしれないし、会社で働くってなったときも、自分の強みになってくれると思うので、そこまでは行きたいです。

―現在は、analogで働いていらっしゃいますが、きっかけは何ですか。

analogは友達が利用していたので存在は知っていて。そんな中でご縁があって、紹介していただきました。WEB制作というデジタルなものと、手仕事っていうアナログなものって、一見違うように思えるんですけど、何かをつくるという点で共通点が多いなと感じて、やってみようと思いました。

印刷加工に特化したレンタルスタジオ「analog」

―WEBデザイナーとして入られたのですか。

いえ、何者としてでもないです。いち運営スタッフでしょうか。

―analogでのお仕事を教えてください。

利用者さんの対応をしたり、受注している製作の仕事があればそれを進めたり。ワークショップなどのイベントもあるので、その準備をすることもあります。あとは、analogがまだスタートして2年くらいなので、設備やソフト面で、整っていないところを使いやすくしていくみたいなこともします。その日によって仕事の内容は全然違いますね。

―analogのお仕事でのおもしろさは?

利用者さんの反応が直接見えることですね。何かをつくりたい人がこの場所に来て、ここの機械を使ってそれをつくる。「思っていた通りのものがつくれた」とか、「思っていた以上のものがつくれた」とか、「つくること自体が楽しかった」と言われると、素直に嬉しいです。

私自身も、ここでのモノづくりのおもしろさはすごく感じていて。機械って聞くと、ボタンを押せば機械が自動でやってくれて、仕上がりも均一なイメージがあると思うんです。ここの機械も、操作法や機能は決まっているんですけど、使いこなし方は、使う人に委ねられていると気づいたんです。たとえば、レーザー加工機はレーザー光をあててモノを切るので、裏側に焦げ跡が付くのですが、マスキングテープを貼ってやると焦げ跡をつけずにできるとか。機械に、人の小さな工夫が加わることで、もともとの機械の機能以上のことができたりするのが、すごくおもしろいなと思って。

―逆に、困ることはありますか。

レーザー加工機も、シルクスクリーンの加工にしても、いろいろな素材があって、それこそ使いこなし方が無限にあるがゆえに、「こういう感じをつくりたい」って思いで来ているお客さんに、自分がやったことがないっていう理由で、アイデアを提案できなかったりすることがあって。それがとても難しいですね。似ているパターンを応用して、こうすれば上手く行くような気がするっていう感じで、なんとか応えられるようにしています。

―analogをこう使ってほしいというアイデアはありますか。

少し変わったものをつくれるのがanalog。たとえば、シルクスクリーンでTシャツにプリントをしたいときに、安くたくさん正確につくるなら、ネットで注文しちゃった方がいいとは思うんです。でも、analogでやるなら、Tシャツは着古したものや自分がつくったものでもいいし、何かプリントされているものに、さらに重ねてもいい。プリントも、一色でもいいですけど、色を混ぜることもできるし、一枚一枚違う色で刷ったり、位置をわざとずらしたり、かすれさせることもできるんです。そういう、機械のライン生産では出来ないおもしろい使い方ができますってことを広めたいですね。でも、何でもできますよって言っちゃうと、どう使ったらいいのかわからない人も多いと思うので、そういう人がもうちょっと気軽にモノづくりを体験できるワークショップみたいな機会もつくれるといいかと思っています。

―仙台で仕事をする中で、仙台について思うことは?

東北の中では大きい都市だから、人は割と集まっていながら、業界とかでくくると見渡せるくらいの規模感ですよね。それがやりやすさにつながることもあるのですが、一方で、窮屈というか…。やりやすさと窮屈さの両面があるのかなと感じることがあります。

―窮屈だと感じるのはどういうところでしょうか。

那須に住んでいた時に知り合った人たちは、“ないと思ったらつくる”ということをしていたんです。それはモノだけじゃなく、イベントとかもそうで。見たい映画があったら上映会を開いたり、誰かの話を聞きたかったら、そういう場をつくったり。自分と自分のまわりの人たちが、もっとよく暮らしていくためにみたいな、すごく個人的で素直な動機で動いているから、みんなが共感しやすいんです。いろんなことに前向きさや説得力があって、まわりに届く力があったと思います。もし仙台で同じことをやったら、大きい街だから関わる人も増えて、単純だった動機がどこかで複雑になったり消極化したりして、届き方が変わってしまう気がするんです。もしかしたら私が見えていないとか、気づこうとしていないだけかもしれないですけど。

―那須にいた時は、よりよい場づくりができていたということですか。

「場づくり」っていうこと自体意識されていなくて、単純な動機で動いた結果、そうなっているっていう。「まちづくり」とかもですが、そういう言葉に縛られず、純粋にまわりのことを思って、やりたいことができていたってところが、すごく気持ちがよかったなと。

―そこに気づけたのはとても大きいですね。

そうですね。そういう小さな伝わり方でもいいんだな、みたいな。何かイベントをやるときに、たくさん人が集まって、いろんな人に届いたらいいというのは確かにありますけど、隣の人にさえ伝わればいいみたいなことが、場合によってはある気がします。

個人的な動機で始めたり、広めたり、つくったりしているものの説得力はすごいなと思うんです。仙台にもそういう人がたくさんいたらいいなと思うし、自分もそういうことができたらいいなと思います。

―今後、仙台でチャレンジしてみたいことはありますか?

仙台に限っているわけではないんですが、生活する体力みたいなものをつけたいですね。別に山奥でサバイバル暮らしをしたいってわけじゃないんですけど、釣った魚は自分で捌くくらいのこととか。生活のお金も、お給料っていう形じゃない稼ぎ方ができたらいいですね。それはWEB制作でかもしれないし、それ以外のことでもいいとも思います。

―工藤さん自身も現在は勉強中とのことですが、これからクリエイティブな分野で働きたいという人にアドバイスやメッセージをお願いします。

クリエイティブとか、デザインとかアートとかっていう表面の言葉だけにとらわれすぎないでほしいと思います。どんな仕事でも、そういう力や技術を求められる場面はあると思うので、もっと広い視野で見てほしいですね。

取材日:平成29年11月10日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:岡沼 美樹恵

 

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工藤 彩子

秋田県生まれ、仙台市育ち。
東北芸術工科大学を卒業後、文化施設やイベントスペース、山小屋などで働く。
現在はDIY印刷加工レンタルスタジオ「analog」で働きながら、個人でweb制作を行っている。

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