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クリエイターインタビュー|高平 大輔さん(後編)

企業広告をベースに、自然・アート・復興からドキュメンタリーまで幅広いプロジェクトに関わってきた映像ディレクター。現在はフリーランスで活躍されている高平大輔(たかひら だいすけ)さんにお話を伺いました。

 

仙台で活動を続けてきて、気づいたことなどがあれば教えてください。

もともとは、仙台が好きで福島から移り住んで来たのですが、最近仙台好きじゃないんですよ(笑)昔好きだったのは、個人経営者の面白い店がいっぱいあったり、仙台らしさが感じられていたからなんですが、今はどこも東京主導のチェーン店だったりしますよね。ペデストリアンデッキに出ても、アーケード街もどこにでもある風景になっちゃったみたいな。失敗しないビジネスとして成功事例や流行りの模倣は重要だと思いますけど、個人のフィルターを通したうえでの新しいアウトプットがちょっと少ない気がしています。

それでも仙台で活動する理由は何ですか?

尊敬する先輩方が仙台、東北で作品をずっとつくり続けていているということもエールになっていますし作り続けている人とか、クリエイターに限らず農家さんとか商店街の人たちとか、そういう誠実な人にスポットあてられるようにしたいっていうのが東北にいる理由です。

地方に必要なクリエイティブとは、どんなことだと思いますか?

やっぱり、その土地を活かすということです。最近、商品パッケージを変えて、リブランディングするみたいなのあるじゃないですか。あれも、結局どこでもやっていて、差別化できてないんですよね。綺麗にデザインする事だけが目的になっていて、本当の魅力であり、差別化のポイントである土地のシズルや匂い、表情みたいなモノを無味無臭化する事が多い、目的がズレてるなって気がしているんですよね。匂いやシズルを見つけ、上手に引き出し、活かすことが大切だと思います。

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仙台にこんな場所があったら、こんな人がいたら…と思うことがあれば教えてください。

なるべく木は伐らないでくださいって言いたいです。自然を残さないと、仙台終わりですよ。進むだけではなく、一度立ち止まろうっていう人もいてもいいかなと思います。そういう人の声もちゃんと聴いてもらえたらなと思いますね。もうちょっと本質的なところを共有できる人がいたらなっていう、マイノリティの人を大切にできたらいいなって思います。

あと、仙台は批評が少ないって思うんですよね。それはSNSとかじゃなくて、高めあう批評がないなって思うんですよ。批判されるとへこたれますけど、批評がないとだめだと思います。

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批評があるとことは、見直しを図るために必要ですよね。

僕、行政の街づくり案件の講師に呼ばれた時に言ったんです。このプロジェクトのお金は、年金で暮らしているおばあちゃん達からもらった税金だっていう意識がないとダメだって。お金の出所が何なのかもう一回再認識する勉強会、まずそういう時間をつくんなきゃいけないって前市長にも言ったんです。そういうストイックなものづくりの場所が必要かなって気がしますね。なかなか難しいことではありますし、行政にやって欲しいことではあります。

おっしゃる通りですね。

自分もいろいろ失敗してきたのでね…。そのレクチャーのときにTVドラマ「北の国から」の純が北海道から上京するときに、乗せてくれたトラックの運転手に五郎がお金を渡すんですが…後で運転手が純にお金を返すんです。このお金には泥がついているって言って。そのシーンを生徒さんに見せたんですが、作り手の姿勢にその感覚が全くないとダメ。僕は、クライアントから仕事をもらったら、現場の方々が汗水たらして稼いだお金を考える。お互いに好感を持って、それで経済が生まれるっていうこと、それをはき違えている人が多いですね。そういうことに対して、ストイックにやれる場所とか人が必要だと思います。

今後、チャレンジしてみたいことは何かありますか。

ものづくりの原点、人間の初期衝動みたいなモノをもう一度撮影したいですね。もちろん、伝統工芸もきっかけなんですけど。そういうチャレンジのときに、若いクリエイターも交えてやりたいと思います。僕は、そうやって育ててもらったし、そういう風に、仙台を活発にしたいですね。

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クリエイターを目指す人に、メッセージをお願いします。

僕はWOWや東北で素晴らしいものづくりをしている先輩方に出会えました。特に高校3年間担任だった、和合亮一先生の影響が大きいです。谷川俊太郎さんや吉永小百合さんと共演したりしている素晴らしい詩人なんです。その人がまだ無名だったころ、「南相馬の土地にいるんじゃなくて、君は都会に出ろ。外に出て、ものづくりをしろ」というエールをもらって、背中を押してくれたんです。和合先生は卒業式の日に「つくり続けなさい」っていう言葉をくれたんですね。先生は、震災後、家族を山形に避難させて、福島に一人残って詩を書き続けて、ツイッターにあげています。ずっとつくり続けるってことでいろんな方に注目されて、教師をやりながら、詩の創作をしている。人生の節目でつくり続ける姿勢を通してエールをもらってきました、これは、次の世代の人にも伝えたいです。

取材日:平成29年5月23日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

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高平 大輔

福島県南相馬市出身、仙台市在住。WOW Sendaiでキャリアをスタート、映像ディレクターの月田茂に師事。その後は地元プロダクションや松島の老舗・松華堂で監督として活動。
CMなどの企業広告をベースに東北の自然やアート、復興の様子などを撮影した作品を金沢21世紀美術館や国内外のメディアで発表。音楽プロデューサー・小林武史氏が主催するReborn-Art FestivalのPR映像や、タップダンサー熊谷和徳氏のドキュメンタリーなど様々なプロジェクトに関わってきた。
クリエイティブディレクションを務めた伝統工芸のPRサイト「手とてとテ」の映像がVimeo Staff Picksに選出される。世界中で100万回以上のビュー数を記録、HUFFPOSTやWIREDなど海外メディアに取り上げられ、販売や集客などの経済効果を生み出す。広告で養ってきた課題解決の姿勢と、人や土地へ寄り添う素朴な眼差しを通して精力的に作品を作り続けてきた。現在はフリーランスとして東北を拠点に活動中。「ワケルくん」で環境省 環境コミュニケーション大賞、4年連続環境goo大賞。グッドデザイン賞など国内外で受賞歴多数。プロレスが好き。原子力エネルギーに反対。

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