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クリエイターインタビュー|稲葉 晴彦さん(前編)

有限会社スマッシュのアートディレクターとして、パッケージの企画、デザイン、設計を手がける稲葉晴彦(いなば はるひこ)さん。仙台の大学を卒業し、東京のデザイン会社でご経験を積まれた後、再び仙台へと戻ってきた稲葉さんに、パッケージ制作のおもしろさや仙台で働くことのよさについて伺いました。

―まずはスマッシュさんの事業内容について教えてください。

主に“板紙”を用いたパッケージ製造を行う紙器メーカーです。形状を設計して、絵柄を印刷した後に抜き型を使って紙を打ち抜き、ものによっては貼り加工を施し、製函という組立の工程を経てお客さまに配送するところまで、一貫して手がけています。特定のお客さまだけですが、できた箱に対して商品を詰めて配送しているものもあります。

―まるで展開図のような木の型。これはなんですか?

これはトムソン型という打ち抜き型です。ベニヤ板にレーザーなどで溝を切り、紙を切り落とす外枠の部分には切れる刃を、折り目をつけるだけの内側には切れないプレートを入れたもので、これを使って紙を打ち抜くと、展開図の通りの材料、つまり組み立てる前のパッケージができるわけです。型は製品ごとに必要なので、工場内には結構な量のトムソン型が保管してあります。

トムソン型と呼ばれる抜き型
中野工場にある打抜機

―パッケージの設計から組立・発送という一連の流れの中で、稲葉さんのお仕事はどの部分なんでしょう?

営業と一緒にお客さまにヒアリングに伺い、企画、デザイン、設計をするのが私の仕事です。お客さまから商品をお預かりし、サイズ的な要件を満たすことはもちろん、デザイン面でも最適な形状・外観を検討していきます。もちろん営業も設計の知識は持っていますが、最終的なデザインをイメージしながら打ち合わせした方が時間的なロスも減りますし、クオリティも上がりますよね。

―現在のお仕事を始めるまでに、パッケージデザインのご経験はあったんですか?

なかったですね。私はもともと栃木県出身なんですが、進学で仙台に移り住み東北学院大学の機械工学部で車や機械の設計をメインに学んでいました。

―何がきっかけでデザインの世界に進まれたんですか?

在学中に立ち上げた、Apple製品に関する情報交換をするWEBコミュニティがきっかけでした。当時、Macを使ってインタラクティブ系のモーショングラフィックスなどを公開していたんですが、ミュージシャンや編集者、デザイナーなど、全国のいろんな方がおもしろがってくれて。その中にいた都内の制作会社のプロデューサーの方に声をかけていただき、卒業後上京しデザイン部署にバイトとして入ったんですが、社内にはデザインできる方がいなくて、そのままいろいろ任せてもらうようになったという感じなんです。

―その後はどんなキャリアを積まれてきたんですか?

その会社を辞めて1度フリーランスを経験した後、自分で立ち上げたAppleのコミュニティで新たに出会ったデザイナーさんに誘われてグラフィックデザインの会社の立ち上げに関わりました。その方はすでに音楽分野のデザインで売れていた方で、音楽CDのジャケットやポスター、映像などの制作を一緒にやろうということになったんです。そこでの仕事を通じて、初めて本格的にデザインを学びましたね。その後また転職し、WEB制作の大型のプロジェクト等も複数経験しました。

―映像、WEBなども含め幅広くデザインをご経験されていますが、パッケージの設計をすることになったのは今の会社に入られてからだと思います。経験がなくてもできるものなんでしょうか?

そうですね。なんか、できたんですよね。この分野には興味があったし、グラフィックとかWEBなど平面のデザインを中心にやってきましたが、パンフレットのストッカーみたいなものなど、立体のデザイン経験もゼロではなかったんです。もちろんまだまだ勉強中ですが、割と理屈はすぐ理解できましたね。

―やっぱり、大学での設計の経験が活きているんでしょうか?

いや、どうですかね。あんまり関係ないと思います。

―クライアントの業種に傾向はありますか?

食品関係が多いです。当社は工場で製造までやるので、お中元やお歳暮の時期は特に忙しくなりますね。家電製品やアパレル系のご相談をいただくこともありますが、まだまだ少ないというのが現状です。

―パッケージの設計、どういうところがおもしろいですか?

平面から立体へのジャンプというか、なにか壁のようなものを越えていく部分は大きな魅力だと思います。あと、パッケージのデザインに特化している人ってあまりいなくて、希少ジャンルなだけに勉強しがいがあります。私も今の会社に入るまでは細かな見識はなかったので、やればやるほどおもしろさが増していくし、いろんなパッケージの設計が見えてくるんですよ。パッケージの形状には絶対理由があるわけで、それが見えてくると商品自体もより深く理解できて、その辺はやっぱりおもしろいですね。

―やっぱり気になるパッケージを買ってきて研究したりするんですか?

そうですね。おもしろいものを見つけたら購入するようにしています。一見簡単に見えるものでも、何でここはこうなっているんだろうと思うものが結構あっておもしろいんですよ。

―今までで一番印象に残っているお仕事はありますか?

いろいろあって選ぶのが難しいですが、強いて言うなら南三陸町にあるかまぼこ屋さんから、外装だけでなく製品自体のデザインもやってほしいというお話をいただいて、包装フィルムも含めデザインさせていただいた仕事ですかね。南三陸町の「きりこ」(*)をモチーフにしたデザインで、地元に根づいている商品と地元に根づいているデザインを融合させるというイメージで取り組んだので、すごく思い入れがあります。最近は特に、仙台市外からデザインを頼まれることが増えてきていて、地域にあるモチーフを使いたいというお話が多いんですよ。可能であれば使いたいとは思うんですけど、使われる場面が決まっていたりと、強い意味を持っているものが多くて。南三陸町の「きりこ」は、神棚飾りなどに用いられる神聖なもので、デザインに使っていいものか悩みましたね。きちんと地域の方とコミュニケーションをとりながら地域のことを理解した上で、デザインに落とし込んでいくことを心がけています。あとはまあ、水産加工品の会社さんに伺って、「今日アワビの解禁日なんだよ」ってごちそうしていただけたり、仲良くさせてもらえるのはすごくうれしいことですよね。

 *きりことは、南三陸の宮司の氏子たちのために半紙でつくる神棚飾りのこと。

「きりこ」をモチーフにしたかまぼこの包装フィルム
南三陸町で生まれた製品の数々

取材日:平成30年7月5日
聞き手:仙台市地域産業支援課、工藤 拓也
構成:工藤 拓也

 

前編 > 

稲葉 晴彦

栃木県出身。アートディレクター/グラフィックデザイナー。
都内制作会社にてCDジャケット、雑誌、広告などのデザイン、企画・制作を経験。
2014年より有限会社スマッシュにて、アートディレクターとして勤務。

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