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クリエイターインタビュー|稲葉 晴彦さん(後編)

有限会社スマッシュのアートディレクターとして、パッケージの企画、デザイン、設計を手がける稲葉晴彦(いなば はるひこ)さん。仙台の大学を卒業し、東京のデザイン会社でご経験を積まれた後、再び仙台へと戻ってきた稲葉さんに、パッケージ制作のおもしろさや仙台で働くことのよさについて伺いました。

―仙台で働き始めた時期やきっかけについて教えてください。

2015年の3月末に東京のウェブ制作会社を辞めて、5月から仙台で働き始めました。当社の営業の荒木に声をかけてもらったことがきっかけです。荒木は以前東京の出版社に勤めていて、会社は別でしたがよく一緒に仕事をしていたんです。音楽やWEBの仕事もおもしろかったんですが、短期的な流行に左右される部分に少しずつ違和感を覚え始めていて、また東京に住んで10年近く経ちそろそろ場所を変えたいなとも思っていたので、転職することにしたんです。

―東京と仙台で、仕事のやり方や規模等で違いを感じるところはありますか?

規模とスピード感は違いますかね。打ち合わせが毎回10人規模だったり、お客さまや協力会社さんとも物理的な距離が近くて、打ち合わせも制作も「すぐにやりましょう」みたいな感じだったりしますから。仕方ない部分なのかもしれませんが、それに伴って徹夜して働くのが当然になっていたりして、疲弊していってしまうんですよね。こっちに来てから、仕事が時間的に融通が利くように収まっているというか、距離がある分みんなの心にゆとりがある感じがしますね。お客さまと直接やりとりしたり、現場を見させてもらったりする機会も多く、商品をより深く理解した上でデザインできている感覚はありますね。

―そういう仕事の方が好きですか?

好きですね。楽しいです。すべてそうだというわけではないですが、私が都内でやらせてもらっていた仕事は、瞬間的に消費されている印象があって味気ないと感じることも少なくありませんでした。30日かけて頑張ってつくって、公開は2日間だけとか。パッケージはロングランが一番大事で、瞬間的に消費されるのではなくて、同じ製品がずっと売れていくことがお客さまにとっても私たちにとってもいいことなんですよ。

―製品を深く理解して、お客さまの想いを汲んだデザインでパッケージをつくる。それは製品そのものをつくっているのと同じですよね。

そうなんです。広告的な効果はもちろんあるんですけど、製品開発の一部なんですよね。パッケージは雑誌で言うところの表紙みたいなもので、売れるか売れないかを大きく左右する要素です。その重責を担わせてもらえるのはすごく嬉しいし、やりがいも大きいですよね。売れることが絶対条件ではありますが、流行りや時代の移り変わりの中でも廃れない、長く愛されるパッケージをデザインしていきたいですね。最近は、スタイリッシュでおしゃれなパッケージが溢れていて、デザインがいいだけのものは山のようにありますが、そこに地域性を組み込んだりするバランス感覚も大切にしていきたいです。

―今後どんなことにチャレンジしていきたいですか?

今は受託の仕事が100%なんですが、自社製品を開発していきたいと考えています。趣味で植物を育てているんですが、鉢ばっかりたくさん増えるのが悩みだったりします。使い終わったら捨てられるという紙の特徴を活かして、土と一緒にして捨てられる紙の鉢をつくるとか、やっぱり好きなもの、自分が欲しいものをつくって売りたいですね。そうじゃないと自信を持って売れないと思うので。紙の特性にアイデアをプラスして、おもしろいものをつくりたいですね。

―なるほど。他にはどうでしょう?

パッケージを通じていろんな人がつながる、コミュニティスペースをつくりたいと思っています。当社は紅茶とクッキーの詰め合わせ箱とか、複数の企業の商品を一緒にして販売するパッケージも製造しているので、そのお客さま同士がつながるとか、デザイナー同士でパッケージデザインの情報交換ができるとか、そんなイメージです。私たちにももっと気軽に相談できる、お客さまにもデザイナーさんにも開けた場所をつくることで、業界全体を盛り上げていきたいなと思っています。

―これからクリエイティブ分野で働くことを目指している方に向けてメッセージをお願いします。

1つは、いろんな分野に目を向けることですかね。Macのコミュニティでも、ミュージシャンとか編集者とか、異分野だけどデザインに近い位置にいる人からの話というのがすごく勉強になって。異分野のことを知ることでデザイナーとしての自分のポジションがわかってくるというか、自分の個性ができてくるような気がするんですよね。私自身、紙のデザイナーだけど映像もわかるとか、コンピューターに詳しいとか、違うジャンルのことを知っていたからおもしろがって使ってもらえたという経験があるんです。あと、学校でデザインの勉強を学校でしていたわけじゃないから絵が上手いわけでもないし、デザインの知識がたくさんあるわけでもないので、とにかく手数で勝負しようという気持ちがあって、そういう意味でもいろんなことを知っていたことは武器になりましたね。声をかけてもらってデザインの世界に飛び込むときには、正直不安もありましたが、やってみればなんとかなるもんです。というか、やってみないとわかりませんからね。期待に応えたいという強い気持ちで、とにかくやってみることも大切だと思います。

あとは、友達をたくさんつくることは大事ですね。ずっと仲間に助けられてきましたから。

取材日:平成30年7月5日
聞き手:仙台市地域産業支援課、工藤 拓也
構成:工藤 拓也

 

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稲葉 晴彦

栃木県出身。アートディレクター/グラフィックデザイナー。
都内制作会社にてCDジャケット、雑誌、広告などのデザイン、企画・制作を経験。
2014年より有限会社スマッシュにて、アートディレクターとして勤務。

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