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クリエイターインタビュー前編|佐藤 ジュンコ(イラストレーター)

私のイラストが、未来に繋ぐための「道具」になってくれたら、こんなにうれしいことはありません。

心がほっこりするような、可愛らしさと温かさ。彼女が描くイラストには、そんな魅力が詰まっているように感じる。現在、数々の媒体で連載を持つ、イラストレーターの佐藤ジュンコさん。どのような思いを持ち、日々の仕事に取り組んでいるのだろうか。

 

―現在のお仕事を始めるまでの経緯を教えてください。

生まれは福島県で、大学進学と同時に仙台に引っ越してきました。大学を卒業した後は1年ぐらいフラフラしていましたが、友達から「そろそろ働いたほうがいいんじゃない」と言われ、元々本が好きだったこともあり、仙台市内にある書店で働き始めました。それから何年か経った頃、「月刊佐藤純子」という漫画を趣味で描くようになりました。コンビニでA4用紙1枚にコピーして、書店に来てくれた友達などに配っていたのですが、ある日、それを出版社の営業さんに渡したところ、とても気に入ってくださって。「うちの出版社でウェブマガジンを始めるので、連載しませんか」と言ってもらったのがはじまりです。

―「月刊佐藤純子」とは、どんな内容でしょうか?

手紙と日記の中間みたいな感じです。友達たちに近況を報告するような感覚で、身近な生活で起こった、どうでもいいことばかりを描いています(笑)。年賀状を自分から送ることがほとんどなくなってしまって、届いたら返事を出すというくらいでしたが、ある年は返事を出すことすらしなかったんです。それで1月の下旬になり「これは不義理だ、よくないぞ」と思って、こたつで漫画を描いて送ったら、友達がとても喜んでくれたんです。そこから、漫画を描いてはみんなに配って、というのを繰り返していました。

―2012年には書籍化もされ、大きな反響を呼びました。

本にするために描くというよりは、身の回りにあった日々の出来事をただ描いているだけなんですけどね(笑)。でも、震災のときの様子は描いておいてよかったと思っています。テレビで被害の映像は流れていましたが、人々がどうやって過ごしていたのかという『非日常の中にある日常』はあまり知られていない部分。遠方で暮らす読者の方から「この本を読んでいると、他人事と思っていた震災を身近に感じるようになりました」と感想をもらったことがあって、うれしかったです。今になって読み返すと、大変なときによく呑気なことを描いているなと感じますが(笑)。

2012年に書籍化された「月刊佐藤純子」。ほのぼのとした日常の出来事がイラストで描かれている

―イラストレーターの仕事を専業でやるようになったのはいつ頃ですか?

働いていた書店が閉店することになり、仕事を辞めることになりました。その後、期間限定のアルバイトを1年間して、イラストの仕事だけになったのが2015年です。それまでは「書店員」か「元書店員」として紹介されることも多かったのですが、そのときを区切りに「イラストレーター・佐藤ジュンコ」という肩書きになりました。なので年の割には意外と新人なんですよ(笑)。

―今はどのようなお仕事をご担当されているのですか?

漫画の連載が多いですね。新聞や、雑誌、ウェブサイトなどで描かせてもらっています。それと、2019年から、3.11せんだいメモリアル交流館で販売している「海辺のメモリアルソーダ」の付録の漫画「海辺のメモリアル帖」を描いているのですが、ここでは沿岸部に関わりのある方たちに話を聞いて、イラストにして紹介しています。最近では、いちばん楽しい仕事ですね。

―どのようなところに楽しさを感じていますか?

決して派手ではないけど、真面目に地道にコツコツ生きてきた人はたくさんいる。そうした方たちの物語を、私が漫画で表すことによって、誰かの記憶にずっと残せるかもしれない。そう考えると、すごい仕事だなあと思いました。この付録は、春、夏、秋、冬と季節に合わせ1年に4回出すことにしているのですが「100人に話を聞いたら展示をしましょう!」と言っています。計算すると25年掛かるので、そのときには66歳ぐらいになっていますが(笑)。年を取っても、指が動く限りはイラストレーターをやりたい。このメモリアルソーダの仕事を担当させてもらうようになってから、そう強く思うようになりましたね。

昨夏から発売されている「海辺のメモリアルソーダ」。付録の「海辺のメモリアル帖」のほか、パッケージのイラストも担当した

―「描く」だけでなく「伝える」という役割もあるんですね。

そうですね。話を聞くことで、この街にはどんな人たちが暮らし、どんな営みと想いがあったのかを知ることができるのも、この仕事のおもしろさでもあります。歴史に残りにくい部分ではあるけれど、私が描いたイラストが、未来に繋ぐための「道具」になってくれたら、こんなにうれしいことはありません。また、先日取材で伺った方から「いろいろな場所に行って、いろいろな人に会うことができるって、良い仕事ですね」と言われました。個人での活動は大変なことも多いですが、人との関係性を自分自身で作っていけるのは、とても素晴らしいこと。ありがたい仕事をさせていただいているんだなと、改めて実感しています。

取材日:令和元年12月13日
撮影協力:せんだい3.11メモリアル交流館
取材・構成:郷内 和軌
撮影:豊田 拓弥

前編 > 後編

佐藤ジュンコ

1978年生まれ、福島県霊山町(現伊達市)出身。宮城教育大学を卒業後、1年間のフリーター生活を経て、ジュンク堂書店仙台ロフト店に勤務。書店員時代から趣味で漫画を描き始め、2015年よりイラストレーターとして活動。現在は雑誌、新聞、ウェブサイトなど多くの連載を持つ。

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