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クリエイターインタビュー前編|岩村和哉(ビデオグラファー)

地域の魅力を映し出すビデオグラファーになりたい。

ゲストハウス「Hostel KIKO(ホステル キコ)」のスタッフとして勤務する中で、ビデオグラファーとして歩むことを決意したという岩村和哉さん。一つの夢でもあった「ゲストハウス」を卒業して動画制作の道に進んだきっかけと、その思いをご紹介します。

ー現在の活動以前は、ゲストハウスにお勤めだったとお聞きしました。経緯を伺ってもよろしいでしょうか?

親の影響で、公務員を目指し福島大学で法律の勉強をしていましたが、「自分のキャラクターは民間向き」と思い、当時アルバイトでお世話になっていた会社に就職し仙台に移り住みました。でも、実は大学3年生の頃からゲストハウスを作ることが夢でした。
突然始めるにはリスクが大きすぎたので、お金を貯めながらゲストハウスの経営について勉強していこうと思っていました。そこから2年目、3年目と社会人経験を積む中で、ゲストハウス「Hostel KIKO(以下KIKO)」を作るためのクラウドファンディングを知ったんです。自分が仙台にゲストハウスを作りたいと思っていたので「やばい!先を越された!」と焦りましたね。そのタイミングで会社を辞める決意を固め、やる気と愛だけでゲストハウスの世界に飛び込みました。

ー実際に働いてみていかがでしたか?

すごく飽き性な僕ですが、ゲストハウスの仕事は意外とハマったように思います。
社会人になり、学生時代からお付き合いをしていた方と結婚をしたのですが、ゲストハウスの仕事と同じくらい、夫婦で旅をしながら暮らすことを目標にしていたので、ブログやウェブマーケティングのように、場所にとらわれず働くスキルを身につける必要があると考えていました。KIKOにはボランティアスタッフとして清掃などを手伝う代わりに、勉強や仕事場として利用させてもらうつもりだったんです。けれど、なかなか性に合わなくて…結局すぐにKIKOのマネージャースタッフとして働き始めることにしました。

ーKIKOのマネージャーとして生活する中で、ビデオグラファーになろうと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか?

KIKOに長期滞在していたカナダ人のゲストが、「KIKOのプロモーションムービーを撮影させてくれ!」と声をかけてきたんです。よく写真を撮っていた人なので承諾したら、とてもかっこいい動画が完成して「まじか…(笑)」と思いましたね。同世代だっただけに、悔しくてライバル心が湧きました。
その時に、大学時代に友達と旅行や遠出をするたびに作っていた「思い出ムービー」の存在を思い出し、「あれ、俺、動画できるんじゃん。やるしかない!」と動画制作を仕事にすると決めました。

ーライバル心と一緒に、ご自身の原体験を思い出したということですね。

当時の先輩が、ムービーメーカーというソフトで作った動画も思い出しました。ただ写真を並べたスライドショーではなく、動画と動画が繋がることで、当時の様子がそのまま残っていることに感動したんです。動画についての知識は全くありませんでしたが、すぐに周りの人に宣言。独学でインプットをしながら知人への営業活動を始め、とにかく場数を踏もうと行動に移しました。

ー長年の夢でもあったゲストハウスを辞める選択肢はどのタイミングで生まれたのでしょうか?

KIKOで働いていると、世界中の旅人と出会います。その中でも大きな転機は「定額制住み放題サービスHafH(ハフ)」との提携がスタートしたことです。「旅しながら暮らす/働く」というライフスタイルを送る、全国のアドレスホッパーやフリーランスの人たちが宿泊に来てくれるようになりました。
「KIKOのマネージャー」として関わっていた人たちに、「ビデオグラファー」としても関わりが生まれると、格段に交流の広がりを感じました。
一緒に旅に出たり、フリーランスに向けた講座などを企画・運営したりするうちに「地域の魅力を映し出すビデオグラファーになりたい」という方向性を固めました。今までは漠然と動画を撮りたい、動画の編集を仕事にしていきたいと思っていましたが、方向性が定まったことでKIKOからの卒業を決め、動画一本で生活をしています。

ー心残りはありませんでしたか?

「動画を撮りたい」という気持ちの方が大きかったです。あとは、その後ろに控えている「夫婦で旅をしながら暮らしたい」という気持ちを尊重しました。ゲストハウスの運営は場所を制限されてしまう。働きたい内容ではあるけれど、働きたい環境ではなかったように思います。なので、一旦そこはお預けですね。最初はゲストハウスを作るために働き始めましたが、今、目指しているものは、もう少しゆっくりしたものかもしれません。夢ばかり語っていますが、僕一人だったらここまでできていません。

ー「旅しながら暮らす/働く」ライフスタイルの人たちとの出会いや交流は、「夫婦で旅をしながら暮らしたい」という目標に大きな影響があったかと思います。具体的に「旅をしながら暮らす」プランがあれば教えてください。

将来子供が生まれたとしたら定住を考えなければと思うので、それまではいろんな土地を見て回りたいですね。「世界」という予定もありましたが、今は「行きたい!」という衝動では動けません。どこまで移動していいのか明確ではない中で、時間が過ぎていくのは変わらない。日本や世界を回り、いろんなものを見聞きしてスキルを持って東北に帰ってきたいなと思います。「どこでも仕事ができる」を軸にすると編集がメインになるかもしれませんが、僕は地域に特化したビデオグラファーになりたいと考えています。

https://youtu.be/RO9PKnNM17Q
(動画① 撮影・編集|岩村和哉)

ー地域に特化したビデオグラファーとは具体的にどのようなものでしょうか?

「撮影」だけでなく「企画」から携わることだと考えています。地域の人と、どのようなコンテンツが必要なのかを一緒に企画しゴールを作ること、そのゴールに必要な要素を撮影し作り上げていくことかなと思っています。

ー地域の人と一緒に活動をする上で、撮影時に気をつけていることはありますか?

地域に関係なくですが、ただの作業にならないように意識をしています。目指しているのは「コミュニケーションが取れる動画」で、視聴者の間に会話が生まれるものを作りたいです。もちろん、仕事なのでいろんな種類の動画制作依頼が舞い込んできます。バラエティ調、かっこいい、チルアウト系、シネマティック……自分がゆくゆく作りたい動画の形もあります。でも、やはり技術が追いついていないと難しいですね。
ただ、自分の人柄的にアーティストのMVのような作品よりも、地域に密着したプロモーションビデオやインタビューの方が、作るのは大変だけれど楽しいなと思います。

後編につづく

取材日:令和2年9月17日

取材・構成:鈴木杏
撮影:小泉俊幸

前編 > 後編

岩村和哉(いわむら・かずや)

1992年生まれ。東北を拠点に地域の魅力を動画で発信するビデオグラファー。
「自分が好きなことを仕事にしたい」と思い、仙台のゲストハウスHostel KIKOで「世界と地元を繋ぐ」仕事を2年間する。その後「自分の強みを活かして東北の課題を解決したい」と考え、動画制作のフリーランスとして独立。企業ビデオパッケージや地域のプロモーションムービーの制作をする傍ら、地域を動画で盛り上げるプロジェクトなどもしている。

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