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クリエイターインタビュー|川上 謙さん(後編)

東北芸術工科大学の出身で、現在は仙台在住の建築家である川上謙(かわかみ けん)さん。リノベーション専門の設計事務所LIFE RECORD ARCHITECTSの代表として、仙台を拠点に活動されている川上さんにお話を伺いました。

―リノベーションに対して、こだわりを持っているところを教えてください。

いろんな人の話を聞いて、一つの解答に絞らないで提案するっていうのは、こだわりなのかなと思います。これまでは住宅のリノベが仕事の大半でしたが、最近は屋上のリノベにも携わっていますし、定禅寺通を変えていくとか、公共空間に関わる仕事もどんどん増えてきて。

今回取材させていただいた会場の仙台協立第7ビル屋上レンタルスペース「定禅寺ヒルズ ROOF GARDEN」

自分のつくるものは特徴が様々で、“これが僕だ”っていうのがあまりありません。それは、住む人や使う人の根本にあるものを抽出して設計をすれば、その人らしさがその空間に出てくるのではないかなって思っているからです。十人十色、いろんな解答があるんだなって気づいたので、こだわらないのがこだわり、ですかね。

―仙台でのリノベーションで、難しいと思うことはありますか。

ひとつお金の問題はありますね。例えば賃貸の場合、都内だと、リノベして5年ぐらいで費用を回収できるように計算します。でも、仙台は東京のような賃料とはいきませんが施工費自体は東京とそれほど差はないので回収の計算が5年では合わないことも多いです。計算が合わないとリノベに弾みがかからない。そういう点は地方ならではの難しさだと思います。

―同じリノベーションをしても、仙台の方が回収に数年余分にかかってしまうということなんですね。

賃貸以外でも、マンションとか戸建てに関しても同じことが言えて。施工費をそれなりにかけてリノベした場合、新築マンションや建売の戸建てに費用が近づいていきます。

ただ、ポジティブに考えれば、仙台にはいろんな選択肢があるとも言えますね。自分がやりたいことや暮らし方から、新築かリノベを選択できるっていうのは、仙台ならではの良さだと思いますし、だからこそ僕はリノベの良さを丁寧に伝えていく事は大事だと思っています。

―リノベーションに加えて、新築のお仕事もされていると伺いました。川上さんのお仕事の中で、新築とリノベーションで共通するようなところはあるのでしょうか。

あると思います。最近はリノベが浸透してきた中で、新築の価値観も変わりつつあると思います。例えば「予算なくなっちゃったから床は自分で塗るよ」とか、「壁は下地のままでいいよ」とか、今まで新築だったらNGだったことが、リノベであれば許される。自分で手を加えられる余白がある、編集のしやすさがリノベの良いところだと思うので、僕が新築をつくるにしても、そういう編集のしやすさを考えた住まいにしたいです。

僕の中では建物ができて完成ではなく、むしろ建物ができるまでで40%くらいだと思うんですよ。住む人が生活していく中で味わいが出てきたり、人が手を加えて、その人の経験や記憶が建物に入っていったりすることで、どんどん建物の良さが出てくる。暮らす人の想いによって100%に近づけていくのかなって。その感覚はリノベや新築に共通するものだと考えています。

―お客さんの予算の問題もあると思うのですが、その辺りで逆に制約を超えてやろうという、モチベーションになることはありますか。

かなりありますね。その制限の中で、予算で諦めそうだったところを発想の転換でプラスに変えるっていうのは、意識的にやっています。

私事ですが、この間塩竈の公民館をリノベして美術館にしたところで結婚式を挙げたのですが、自分たちのやりたい事を足していったらだんだん予算がなくなってしまって、僕も予算の壁にぶち当たりました(笑)。ケーキカットを泣く泣く無くそうかというところまで行きましたが、すごくありがたいことに、友人のSENDAI COFFEE STANDさんが会場でコーヒーを淹れてくれることになりました。それに便乗して、ケーキ入刀ではなくて、「コーヒー入湯」にしたらどうだろうと(笑)。毎朝、妻とコーヒーを淹れるのが日課だったので自分たちのコンセプトとも合うよねって話になって。

そういう発想の転換で解決できることがあるのではないかなと思っています。結婚式では、マイナスだと思ったことがプラスに転じた時に、みなさんに喜んでもらえた。リノベーションもそうですよね。この空き物件、どうしようもないんだよねっていう、ものすごくマイナスなところから、楽しい空間にガラッと変えるのはとてもドラマティックですし、リノベをやっていて良かったと思う瞬間です。

―実際にお客さんとコミュニケーション重ねて、マイナスをプラスに変えるのは、川上さんにとっても嬉しいですよね。

ずっとお住まいだったご実家のリノベーションに携わったことがありましたが、趣のあるものを残しながら設計してお引渡ししたときに、「大切にしていたものも残してくれて本当に嬉しい」って泣いて喜んでいただいたことがあって。それは新築にはない面白さだと思いましたね。

リノベーションならではの醍醐味を語る川上さん

―仙台でリノベーションをやってみたいというお客さんは増えていますか。

震災後から活動を本格的に始めましたけど、みんなリノベの「リ」も知らなかった頃と比べれば、リノベやりたいって来てくださる方はだんだん増えてはきましたね。ますますリノベやりたいが増えるようになればいいなぁ。

―確かにその方が、空き家や人口減少という社会的な問題とフィットしていく気がします。最後に、クリエイターを目指す人や、若手クリエイターに伝えたいメッセージはありますか。

ボブ・ディランの言葉で、「朝起きて、自分のやりたいことをやれる人。それが成功者だ」という言葉があるんですけど、それなんじゃないかなぁと思います。もちろんすべてが自分のやりたい仕事じゃないことでも、考え方の転換で、どんな仕事も自分らしく楽しくやれると、人生もきっとワクワクしてくる。まず一歩踏み出してみることかと思います。

取材日:平成29年7月20日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:岡沼 美樹恵

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川上 謙

1986年神奈川県生まれ。栃木県宇都宮市育ち。

東北芸術工科大学院修了。

仙台市の設計工務店に勤め、住宅や店舗などの設計施工に携わる。

2015年 LIFE RECORD ARCHITECTS設立

仙台を拠点に宮城、山形を中心に活動。

独立後はリノベーションを中心とした活動を行う。

仙台リノベーションまちづくり実行委員着任後、他業種のメンバーからなる「街の庭師」を設立。仙台をもっと楽しく、豊かな暮らしへの実現に向けての挑戦を行っている。

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