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クリエイターインタビュー|門山 夏子さん(後編)

仙台生まれ、仙台育ちのプロカメラマン 門山夏子(かどやま なつこ)さん。現在は個人事務所「門山写真事務所」を屋号に活動している門山さんに、カメラマンになったきっかけや、仕事の難しさ、楽しさなど、さまざまなお話を伺いました。

 

仕事をされる中で難しいと感じるのはどんなことですか。

全部難しいです。写真は好きでも、仕事となるといろいろなしがらみがあって悩みますね。例えば、どこを完成とするかとか。妥協はできないから、こだわればどこまでも行ってしまうのですが、納期やほかの仕事とのバランスも考えて最適な判断をしなければいけない。あとは、クライアントによって求める写真が違うので、そこを汲み取るのがとても難しいところだと思います。

求める写真というのは、具体的に示してもらえるのですか。

どうしても最後は主観になってしまうので、具体的にというのは難しいですよね。注文どおりに撮ったつもりでも「いや、そういう感じじゃない」と言われてしまうと辛いです(笑)。なので、写真は撮る技術だけじゃなく、空気を読む技術も必要だなって思います。ただ、私の仕事を知ってくださっている方に「門山さんのいつもの感じで」と任せてもらえることもあって、そのときはすごく嬉しいです。

コミュニケーション能力が求められるのですね。

そうですね。特に、写真館とか、撮られ慣れていない方を相手にした撮影をされている方は、その能力が長けているのですごいなと思います。私は修行不足で、そこまでの能力には至っていないですね。

そういった撮影はされないのですか。

何年か前まで、衣装屋さんで撮影のお手伝いをしていたことがあります。そこでは、先輩カメラマンさんと一緒に仕事をさせていただいていたんです。その方は、一般の方をリラックスさせるのがとても上手で、ほかにもライティング技術を教えてくださったり、たくさん勉強させていただきました。

とはいえ、今でもたまに成人式や結婚式の撮影をすることがあるのですが、ご家族に半ば強引に連れられて嫌々いらっしゃった方を撮るとなると、そういう方でも盛り上げて撮る、というスキルはまだまだ足りていないなと実感します。

今までのお仕事で印象に残っているものは?

一昨年にあった、河北新報社さんの「宮城の魅力 伊達な色」という紙面企画のお仕事ですね。在仙カメラマン4人が、水玉紋様の各色をテーマにした作品を撮って、それを広告として載せるというものでした。私以外のカメラマンというのが、能登 直さん、磯崎 亮さん、望月 研さんという名カメラマン揃いだったので、非常に勉強になりましたし、光栄でした。

その一人に門山さんが選ばれたのですね。

お声掛けいただいた時は、ほかの方の名前を聞いて「大丈夫ですか?私でいいんですか?」と、かなり動揺しました。そうしたら、企画のディレクションを担当した会社の方が、カメラマンを決める際に私を推してくれたことを知って、すごく嬉しかったですね。

私は、赤と緑の色を担当しまして、大変ではありましたが、とても印象深いお仕事でした。

ずんだ
仙台ガラス
すずめ踊り
こけし

現在されているお仕事で、個人的に好きだなというものはありますか。

レギュラーでやらせていただいているウェブメディアの取材で、カフェの撮影が毎月あるのですが、それは個人的にすごく好きです。ライターさんと2人でカフェに行って、撮影したりするのがすごく楽しい。オシャレなカフェがいっぱいあるので、仙台っていいなと改めて思ったりします。

ハナミズキカフェ

門山さんは、ずっと仙台にいらっしゃるんですか。

生まれてからずっと仙台です。仙台はご飯もおいしいし、寒すぎず、暑すぎずで、住みやすい。なので、外に出たいということはあんまり考えたことがなかったですね。東京に行こうということもありませんでした。

仕事をしていて、仙台だからこその良さって感じますか。

分野を絞らずにいろいろなことができるところですかね。東京とかだと、専門分野が分かれているので、特定のものにしか手を掛けられないのかなと思うんです。そうなると、私はちょっとやっていけないかなと。仙台は、仕事が少ないからというのもありますが、幅広いジャンルのお仕事に関われるので、私はむしろそういうところがいいなって思っています。

反対に、仙台での仕事のしづらさはありますか。

私はあまり考えたことがないんですけど、先輩方から聞くところでは、10年、20年前と比べて仕事が減っているみたいです。それもあって、仕事の単価が低いなぁということは感じます。仙台は、東北では大きな都市ですけど、それでも東京のような規模の仕事はほとんどないですね。

あとは、アシスタントさんがとても少ないです。普段はアシスタントなしでできていても、規模が大きい仕事となると一人くらいは欲しいところなのですが、動ける方がまずいないというのが現状です。若いカメラマンがもっと増えたらいいなと思います。

仙台に期待することや、こういう街になっていったらいいなと思うことはありますか。

楽しそうなイベントが、これからもあちこちであったらいいですね。県外から遊びに来た人に「仙台で観光するのに、どこがいいか」って聞かれるとなかなか思いつかないので、いつもどこかで楽しいイベントがあるとか、それか、郊外の方で楽しめるスポットが欲しいなと思います。例えば、宮城の鳴子はこけし人気で若い女の人が街に来ているじゃないですか。そういうことが仙台の秋保とかでもあったりするといいなと思います。あとは、私はバイクに乗るのですが、バイクで立ち寄れる場所が少ないと思うので、道の駅みたいな場所がもっとあったら嬉しいですね。

プライベートでも写真を撮ることはあるんですか。

結構撮ります。一日一回を目標にインスタグラムにアップしているので、その作品をプライベートでよく撮っています。特に多いのは好きなバイクの写真ですが、ほかにもいろいろと作品を撮りためて、写真展をやりたいなと思っているんです。

バイクに乗っているのは、門山さん本人(写真下)

インスタグラムを見て、仕事の依頼が来ることはありますか。

門山写真事務所のフェイスブックページと連携させているので、そちらに問い合わせが来ることはたまにあります。ただ、インスタグラムは仕事につなげるというより、作品を見てもらえることが嬉しくてやっているところが大きいですね。

最後に、クリエイティブ分野で働きたい人、なりたての人へのメッセージをいただけますか。

「一度は東京に行って、下積みをした方がいい」みたいなことを言う方もいると思うんですが、カメラマンに関して言えば、行かれると困る(笑)。なので、仙台でやりたいっていう人がいたら、みんなで支えるよ、と言いたいです。そして、どこでやるにしてもですが、横のつながりを大切にしてほしいです。もちろん縦のつながりも。私はそのつながりのおかげで、ここまでやってこれたと思っているので。人とのつながりは財産だと思うし、つながっている方が仕事も楽しいと思います。

取材日:平成30年2月28日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

 

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門山 夏子

創表現研究所est デザイン学科 卒業

フリーランスの広告カメラマン

現在の主な仕事は、店舗取材、webコンテンツ、学校・企業パンフレットなど

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