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ピー・ソフトハウス(後編)小さな開発会社だからこそできる、開発者の支援

開発会社という根幹をしっかり持ち続けた上で、時流をうかがいながら堅実に事業を展開してきて間もなく30年。規模の小さな開発会社だからこそ現場の問題が手に取るように分かり、それを解消する最適なツールを開発してきた。なかなかその功績に光は当たりづらいが、ものづくりをする人であれば誰しもその恩恵に預かっていることは間違いない。ピー・ソフトハウスはこれからも日本のクリエイターの活躍を支える欠かせない存在であり続ける。

小さな開発会社だからこそできる、開発者の支援

―この20数年を振り返って大変だったことは。

畠山 その時代その時代でいろいろな波がありますよね。ビットバレー(1990年代後半から東京・渋谷にITベンチャー企業が集積した現象)が騒がれた頃、エンジニアが足りないといってうちにも話が来るんですが、急きょ用意できる人材なんていませんから、話が流れたこともけっこうありました。エンジニアはすぐには育ちませんので、需要と供給のバランスというところが難しいですよね。新しいトレンドも時代ごとにありますが、何もかもはできないので、新しいものに飛び付くのはほかの会社さんに任せて、自分たちが得意としていることを進めるしかないと思ってやってきました。

―振り返ってみると、堅実な選択だったのではないでしょうか。

畠山 結局私はあくまでエンジニアですので、何か新しいビジネスをと考えている経営者の方とは、そこがちょっと違うのかもしれませんね。

でも泥くさい仕事ですよ。例えば映画はわれわれのソフトがなかったら出来上がりませんが、そこを評価されることはほとんどない。家を建てるとしたら、設計する人がいて、インテリアコーディネートの人がいて、実際に建てる大工さんがいて、みんな褒められるんですけど、電動工具を褒める人は誰もいないんです。僕らがやっている仕事はまさしくそれなんですよね。

現在22人の社員が働くピー・ソフトハウス

―分かりやすいです。もともと大工だから道具の使い勝手も分かるので、自分たちが使いやすい道具を開発したと。

畠山 そういうことですね。いままで、のみやトンカチで作っていたのを、電動工具で作ったら速くきれいに作れるよね、じゃあ電動工具を作ってみようと。一度作った後も、この隅の切れ味を出すためにはどうしたらいいか、どうすれば使い勝手がさらによくなるかということを突き詰めてきたんですが、なかなかその電動工具を進化させてきたことは褒めてもらえません。

―それでも、ものづくりをする人たちにとって既に欠かせない存在となっています。

畠山 われわれも、ものづくりで散々苦労しているわけです。大手さんがお金をかけてシステムを導入してやっているようなやり方は、自分たちのような小さなところではやりたくてもできない。ならば、自分たちで使えるものを作れば、同じような思いをしている会社、規模の小さなところは絶対に必要としてるはずだと。

ですから、自分たちの作ったものは、マーケットが最初から見えているんです。かつてゲームのパブリッシャーを目指したときに、「このゲームは誰が遊ぶんだろう…」と思いながらやっていたのと比べて、いまは自分たちがリリースした製品のターゲットがきっちり見えているんです。ですから浸透したんだと思います。

業界において自社が担う役割を大工の道具作りに例える畠山社長

―最後にこれからの展開も教えてください。

畠山 いまやっていることで飛躍的にマーケットが大きくなることは考えにくいのです。非常に小さい市場の中で製品をリリースして収益を上げていくわけですが、それが末広がりになればいいんですけど、しぼんでいくことも考えられます。そのときに備えて、何かまた柱になるようなものを探していかなければいけないですね。これまでも、マルチメディア関係、CG関係、音楽関係、モバイル関係と、開発という軸からそれないように動いてきたんですが、例えばこれから5年というスパンを見据えて何に取り掛かるべきか、いまのところは見当たらないです。

それでも制作現場の課題はまだたくさんあると思うんですね。何か仕事をするときにワークフローがあって、その一つ一つが徐々にバージョンアップしてリプレースされていくのが一般的ですが、そこに踏み込んでいけばもっと違うやり方があるんじゃないか、ということを提案していければと思います。

例えばコンシューマー(家庭用)ゲームはプラットフォームがいくつかあって、それごとに作っていたら大変なので、ゲームエンジンというものを使います。それで1つ作ればPS4でもSwitchでも動くように、ゲームエンジンが差異を吸収するようになっているんですね。そうやってマルチプラットフォームで出せると開発費が折半できる、そんな作り方をしています。

そのゲームエンジンが、一般の3DCGソフトよりもリアルタイム表示に優れています。ですから、既存の制作ラインをそういうものにスワップしたら制作効率が上がるのではないかと取り組んでいます。例えばコンピューターが10台必要だったのが1台で済むようになれば、大幅なコスト削減になるわけです。そういう取り組みを企業さんと一緒にしています。

―それはアニメ制作の現場ですか。

畠山 そうです。いままで3DCGのソフトウエアで作っていたものをゲームエンジンに置き換えてアウトプットするということをやっていて、少しずつ作品が出てきているところです。最終的にアウトプットは彼らが行うので、われわれが作ったものを評価していただきながらブラッシュアップしていくという工程が必要で、本当に使えるものになるのかならないのかは使う人たち次第なので、キャッチボールしながらやっています。

ゲームエンジンでセル画調の表現を可能にした「PSOFT Pencil+ 4 Line for Unity」

―作業フローの一部分を省力化するシステム、というビジネスの可能性がありそうなんですね。

畠山 新たなワークフローを作り出すことに大きなビジネスの可能性があります。ただし、気を付けなければならないこともあります。ゲームエンジン向けの製品は機能を簡略化したものなのですが、一方でハイエンドの製品もリリースしているんですよね。そのシステムにリプレースされるとハイエンドのものを買わなくてもいいということになりかねないので、なかなかあんばいが難しいですね。

2017年に「Pencil+ 4」をリリースしましたが、まだまだしばらくは新製品のリリースが続きます。

これからの動きにもご注目ください。

編集工程で3DCGソフトが出力したラインをコントロールする「PSOFT Pencil+ 4 Line for After Effects」スクリーンショット

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

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株式会社ピー・ソフトハウス

1990年設立。PSOFTブランドのCG制作支援/音楽制作支援ソフトやPSOFT MOBILEブランドの携帯端末アプリのメーカーです。コンシューマゲーム機向けゲームソフト、制御系や組み込みシステム、デジタルコンテンツやWeb制作など、新サービスや新製品の開発など、受託の各種ソフトウエア開発も行っています。また、独自の特化した保有技術は他社へライセンスするなど、仙台でワールドワイドに事業展開しています。

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