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藤崎未来創造ラボ(後編)地域と共創し、地域の価値を上げるプラットフォームに

百貨店の未来を考える上で、千葉氏が特に重要だと目しているのが地域共創コンテンツだ。地域に眠るコンテンツやクリエイティブの芽を、百貨店が得意とする編集力やネットワークを生かして育て、広げていく。それによって激化の一途をたどる競争から抜け出し、脱コモディティー化を図ることができるはずだ。創業時から変わらない地域のプラットフォームとして、クリエイターの活躍を後押しし、共に地域の価値をも上げていくために、実験は続く。

地域と共創し、地域の価値を上げるプラットフォームに

−3つの軸の中で、SC3としては「地域価値」の部分をもう少し詳しく知りたいです。

千葉 地域価値をつくっていくには、「集める」「育む」「広げる」という3つのフェーズがあると思っています。

まず「集める」ですが、商品には、まだ誰も知らない「潜在ローカル」、大崎市古川の銘菓「パパ好み」のように生産地以外ではニッチな「ローカルブランド」、「萩の月」のように地名を挙げれば全国的に名前が浮かぶ「ナショナルブランド」、「ルイ・ヴィトン」のように世界的に知られている「グローバルブランド」があります。バイヤーたちはナショナルブランドを集めることはできますが、効率を考えると潜在ローカルを一から掘り起こすことになかなか時間のリソースを裂けないでいる。それを地域の支援機関の皆さんからの紹介や、地域ブランド「都の杜・仙台」の活動プラットフォームから見つけていけたらと思っています。

「育む」は、例えばコンテストなどを行い、私たちのネットワークを生かしてさまざまなアパレルメーカーやデザイナーとも結び付け、OJTで並走しながらナショナルブランドへと押し上げていくこと。それこそ共創ですね。

「集める」「育む」について資料で説明する千葉氏

−なるほど。

千葉 そして、これから人口が減っていくと、今まで生産者が自分の周りだけで売っていたものをより遠くへ売り出していかないといけません。そうなったときに、そのノウハウを持っていなかったり場がなかったり、あるいはお客さまに合わせて展開していくことができないという問題が同時多発的に起きてくるはずです。そのソリューションとして、地域の生産者さまの活動を束ねて編集して、年間700万人のお客さまが来店される藤崎百貨店で、消費者に分かりやすくお伝えしていく。それが「広げる」、商流をプロデュースすることです。

都心の百貨店でも「集める」の部分で困っている現状がありますので、そこにコンテンツを持っていくことも「広げる」の中にあります。地域ブランド「都の杜・仙台」の編集コンテンツを藤崎で2回展開して非常に好評を得ましたが、それとは別に松坂屋上野店の催事場にも出店しました。

−商品に限らずクリエイティブも地域価値と捉えることができますが、地域のクリエイターとの連携についてはどうお考えでしょうか。

千葉 藤崎全体の打ち出し方など大きな枠では自社の営業部門が中心となって行っていますが、私がMD企画にいた時から、企画は地域の面白いクリエイターさんに着目してきました。例えばコラージュアーティストの松下さちこさんと一緒にクリスマスの企画を、門松クリエイターのカワムラガーデン川村博崇さんとお正月企画を、イラストレーターの樋口佳絵さんと焼き菓子のアトリエラフールさんと一緒にオリジナル商品開発を行いました。

樋口佳絵さんとアトリエラフールと共に開発したオリジナル商品

−そうした事例は、地元で頑張っているクリエイターにとって励みになると思います。

千葉 面白いものづくりで評価を得ていながら、まだマスに認知されるまでは広がってないクリエイターさんが多くいらっしゃいます。私たちはデザインやクリエイティブを専門的に学んだわけではありませんが、よりマーケットの声に近い場所にいます。ですから、こうした方がいいかもしれないというのを、私たちの視点でクリエイターさんに伝えて一緒にものづくりができると思っています。

それがクリエイターさんたちの販路拡大にもつながることを期待します。松下さんは藤崎の全館ラッピングを担当した後、伊勢丹新宿店にも起用され、認知が広がっています。こういった取り組みで私たちは決して抱え込んだりはしません。共創した結果、一緒にその人たちが輝くというのが私たちの誇りですし、それが仙台の街の個性になっていけばと思います。

松下さちこさんを起用して展開した2017年のクリスマスディスプレー(写真提供=藤崎)

−地域のクリエイターと共に地域の価値を上げていくということですね。

千葉 その通りです。小売りの現状を考えたとき、供給側の問題で言うと、基本供給過多ですし、今はECでどこでも何でも買える時代です。リアルでは大手のチェーンがその強靱(きょうじん)な体力を生かして、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返しながらどんどん地域に進出しています。それで元気のなくなった地域からは撤退してまた新しい地域に展開していますが、私たちは常に地域と共にあるので、撤退することはあり得ない。だから地域を盛り上げるために何をすればいいかということを絶対に考えなければいけません。

需要側のニーズも変化もあります。今までは百貨店に行けば新しいものは何でも手に入りましたが、今はそうはいきません。多様化したニーズに応えたものを全部並べるのは「百貨」店では到底無理で、「千貨」店や「万貨」店になっても無理でしょう。そこを絞り込んでいくときに、コモディティーではなく独自性を持ってできる、強みを持って打ち出せることの一つが地域共創コンテンツなんです。

ただ一方で、百貨店は今まで積み重ねてきたのれんに対するお客さまの信用があり、期待値の高さがあります。ですからグレードの部分は守らなければいけない。「仙台平」と「グッチ」のコラボ商品のように、ローカルとグローバルを掛け合わせたグレードの高いもの、仙台のメゾン・ド・クチュールのような位置付けで新しいコンテンツを作っていきたいです。仙台はもともと洗練された文化背景があるので、いつの日か仙台から「エルメス」のようなグローバルブランドが生まれるかもしれません。

−お聞きしているだけでわくわくするような話です。まさに地方百貨店のこれからの役割かもしれません。

千葉 私たちはそのお手伝いや並走をし、お互いのシナプスを結び付けるようなプロデューサーを目指したいですし、本来百貨店はそうであるべきだと思います。今までのやり方や商流も逆転させて、生活者に対してもっと新しい発見や生活を豊かにする刺激を提供する、そういう新しい消費文化をつくるくらいの気持ちでやっています。

仙台駅前は交通の玄関口ですが、一番町の藤崎は文化や豊かな生活の玄関口だと自負しています。ここに来れば東北の最旬の生活スタイルや観光、新しい文化に触れられる。そのことを強く打ち出していくことが、共創の意味でもあり、これから地方の百貨店の強みになっていくのではないかと考えます。

地元のクリエイターさんや企業さんと連携して仙台のまちをもっと明るく面白い、クリエイティブな場所に変えていきたい。その実験場や発信拠点として私たち自身もクリエイティブに成長していけたらと思っています。

「このまちをもっとクリエイティブに変えていきたい」と意気込む千葉さん。藤崎本館1階で

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社藤崎

〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町3-2-17

TEL:022-261-5111(本店代表)

創業1819(文政2)年。事業内容は百貨店業(店舗販売、外商セールスによる外販)。

事業所:本社/仙台市、営業店/秋田、盛岡、一関、山形、原町、福島、気仙沼、佐沼、古川、石巻、塩釜、船岡、白石、庄内、サテライト店/泉中央、長町、六丁の目、石巻

藤崎関連企業:株式会社フジスタイリング(紳士服縫製業)、藤装建株式会社(内装工事)、株式会社藤崎エージェンシー(藤崎友の会、保険代理店)、株式会社藤崎ビジネスサービス(人材派遣・紹介)、株式会社藤崎商会(不動産業)

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