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こだまのどら焼(後編) 手渡した先に人生がある 思い出販売業としての再出発

試行錯誤の末、原点に戻って「こだまのどら焼」を見直したとき、その先には誰かの人生があることに気付いた。自分たちが売っていたのは思い出なのかもしれない——そう考えると、一気に可能性が広がった。親子向けどら焼き作り体験、SNSを使った発信、オリジナル焼き印。さまざまな取り組みを展開する中にも、「思い出販売業」としての一貫性がある。人生の大事な場面で大切な方に親しみを込めて贈る懐かしい味。老舗がいま、再び成長期を迎えようとしている。

手渡した先に人生がある 思い出販売業としての再出発

−この先の展開について考えていることを教えてください。

児玉 これから僕たちは「提案できるどら焼き屋」になりたいと思っています。どら焼き専門店という自分たちの原点をあらためて確認したので、お客さまの人生の彩り、思い出を増やしていただくためにどんどん提案していきたいと考えています。

われわれがやっていることは単なるお金ともののやり取りではなく、一緒に何かをしたという思い出を届けているのではないかと思っています。味覚というのは必ず記憶に訴えますから、同じものを食べるとその時の出来事が思い返されます。それが冠婚葬祭や誰かの人生につながっていると考えると、われわれは「思い出販売業」と言ってもいいんじゃないでしょうか。

−すてきですね。思い出と共にこだまのどら焼があると。

児玉 そうであってほしいと願います。その一つとして、親子向けのどら焼き作り体験を始めました。商品やホームページや店舗の見せ方を変えたのは良かったんですが、店に来てもらって、商品を手に取ってもらうためには「体験」が必要なのではないかと思ったんです。

参加した親子が楽しそうにどら焼きを作る体験の様子

−元木さんもどら焼き作り体験に関わっているんですよね。参加された方の反応はいかがですか。

元木 お母さんが笑顔になるんですよ。子どもたちと楽しそうに一緒に作って、それこそ思い出づくりのお手伝いができている感じがして、私たちも積極的に「写真撮りますよ」などと声を掛けています。この活動はもっと広げていきたいですね。

児玉 お客さまだけでなくスタッフにもいい効果が生まれています。マニュアルだけでは不十分という先ほどの話にもつながりますが、こういう体験をすることで、お店に立った時に実感を伴ってお客さまに思いを伝えられるんではないかと思います。

−ほかにはどんなことに取り組まれていますか。

児玉 最近、どら焼きの皮の販売を始めたんですが、これが予想外の展開を見せています。ご家庭でどんな食べ方をしていただいても結構ですと、工場で残っているものをパンの耳のように並べて売っていたんですけど、その皮にさまざまな材料を挟んで作ったものをインスタグラムでアップする方が現れたんです。

初めはええっ?と思いましたけど、楽しんでいただけるんであればいいかなと。そうやってどら焼きの皮を使ってメニューを作って、インスタに上げる行為というのも、アップした方の記憶に残ることだなと。「あんこがあんまり好きじゃないので、これはいい」と言われた時は、「それ僕に言いますか…」と思いましたけどね(笑)

社内でも発信してみようかとなって、いろんなものを皮に包んで食べ方を提案しました。パートタイマーの方がいろいろと開発してくれて、こだまのどら焼の作品集のような形でいまも続いています。

従業員が考案したどら焼きの皮活用メニューをSNSで発信

−オリジナル焼き印も行われていますね。

児玉 これも思い出販売業ということの一つの解釈で、2016年ごろに始めました。正直、何に使ってもらえるかは分からなかったんですけど、結婚式の引き出物に使ってくださるお客さまもいらっしゃいました。お客さまの人生の中で大事な行事に使われていると知って、これはどんどん広げていくべきだなと思ったんです。これも僕たちの一つの役割じゃないかと。

インターネットでそういうサービスを見つけたから、じゃあ頼もうかという話ではありませんよね。人生の節目に選んでいただけるのは、お客さまと自分たちの関係性があるからだと思うんです。そういう特定客、関係性の近いお客さまをつくっていかないといけないということにも気付きました。

企業さまからも需要があります。主にイベントで配るようですが、会社のロゴをどら焼きに入れて食べてもらうというのは、確かに会社のパンフレットよりも記憶に残りますよね。

どら焼きに焼き印を押す焼きごて。オリジナルにも対応する

−そうした新しい展開を通して感じたことはありますか。

児玉 やっぱり何を伝えたいのか、自分たちが何者であるかをはっきりさせることが、デザインにおいても取り組みにおいても一番大事なんだなと思いました。過去の取り組みでは、自分たちののれんについて掘り下げないまま進めちゃったなという反省があるんですよね。

僕にとってこだまのどら焼は家業なので、経営理念など明文化されているものがなくても、何となくその色を出せていたんですよね。それをあらためて可視化しようとなって、ワンクルーさんに質問された時、恥ずかしながら答えられなかったんです。当たり前にやってきたことなんですけど、ぱっと聞かれると言葉にできない。そういうところを一つ一つ明確にしていけたのは、僕たちにとって非常に大きなことでした。

−ではあらためてお聞きすると、「こだまのどら焼」とはどういうものだと思いますか。

児玉 人は生まれて亡くなるまで、生まれる前からかもしれないですけど、必ず誰かとの接点がありますよね。うちのどら焼きが昔からやってきたことは、その人間関係を近づけ、つなげるということだったんじゃないかなと思うんです。

例えば誕生餅とか背負い餅とか、お祝い事には焼き印のどら焼きもお出ししていますし、入学式や卒業式の紅白まんじゅうもやっていて、仏事でも頼まれるわけですよね。極端に言えば揺り籠から墓場まで、お客さまの人生に関わらせていただいています。人生の大事な場面で大切な方に親しみを込めて贈る懐かしい味、というのがわれわれの原点だと思います。

−シンプルでとても明確な原点ですね。

児玉 ストレートにはたどり着かなかったですけどね。人と一緒で企業も蛇行しながら進むと思うんです。あっちに行ったりこっちに行ったり。迷いながら進んでいるうちに、これだという答えが見えてきて、そうやって一歩一歩進んでいきました。でもマニュアル通りにいかないそのプロセスが、やっぱり大事なんですよね。

3代目の時代になって、あらためて僕たちは成長期に入ったのかなと思っています。創業70年の老舗でありながら、いまが成長期。現在進行形で成長している僕たちを見てほしいですね。

老舗のさらなる成長へ意気込む児玉社長

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社こだま

本社 〒984-0001 宮城県仙台市若林区鶴代町6-77
TEL:022-235-5533 FAX022-238-9043

仙台市内を中心に直営店5店舗。仙台駅構内、仙台国際空港、サービスエリア、大型スーパーなど卸売りを展開。

【想い出販売業】として…「おばあちゃん家にいつもあった」「うちのお母さんとお店に買いに行った」「亡くなったおじいちゃんの好物だった」「お父さんの職場のお土産でもらった」
当店のお客様にお話しを伺うと、皆さま一様にご家族との楽しい思い出を語ってくださいます。
70年前から今日まで「こだまのどら焼」をお買い上げいただいたその先で、私たちの商品やサービスをきっかけに多くの【想い出】がつくられてきました。そしてこれからも「こだまのどら焼」を通じて、お客様と大切な方が明るく楽しい場をつくられることを願っております。
~大切な方に親しみを込めて贈るなつかし味~
こだまのどら焼はこの言葉を思い描いて、原材料にこだわり、作り手の技術はもちろんのこと、「またこのお店に来たい」と思っていただける店頭での接し方に至るまで、ひとつひとつの手仕事を大事にして参ります。

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