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ピクセル(前編)レトロゲームへの愛と制作者へのリスペクト、使命感を胸に

仙台でウェブ制作とオリジナルゲーム開発、レトロゲームのイベント運営という3本柱で事業を展開する株式会社ピクセル。代表の佐々木英州(ひでくに)氏はアパレル店に勤めながら独学でウェブを習得し、漫画家のアシスタントをしていた時期もあれば自著もある、異色の経歴の持ち主だ。やってみたいと思うことがあると、矢も盾もたまらず行動に移す。そんな佐々木氏の性分が縁を呼び込み、レトロゲームファンの間で話題となるイベントを次々と実現させていく。

レトロゲームへの愛と制作者へのリスペクト、使命感を胸に

−ピクセルを2016年に創業されましたが、それまではどのようなことをされていたんですか

佐々木英州(以下、佐々木) 私は山形県新庄市出身で、母親の実家のある秋田に就職して2年ほど働いてから仙台に来て、あとはずっと仙台で働いています。仕事はアパレル関係が多かったですが、漫画家さんのアシスタントをしたこともありました。

アパレル勤務の時にTシャツのブランドを立ち上げて、独学でウェブを学んでネット通販を始めました。ネット通販がまだ一般化する前で、商売になるほどは売れませんでしたが、某有名ブランドのバイヤーさんから声を掛けてもらったこともありましたね。

同じ時期ですが、1人で過ごす時間が多かったので本をとにかくたくさん読んでいたら、自分も書いてみたくなって自費出版をしたこともありました。

−すでに面白い経歴です。いろいろ突っ込んで聞きたいところはありますが、その時のウェブ制作が今の事業につながっているんですね。

佐々木 はい。勤務先のウェブサイトを担当しているうちに詳しくなっていって、同じ会社でウェブ事業部を始めて、ウェブデザイナーやコーダーとして仕事をしました。そのあと独立して7年ほどフリーランスでやって、2016年に法人成りしました。

異色の経歴で現在に至る佐々木氏

−ゲーム事業を始めたのは。

佐々木 フリーになって、ウェブの仕事をしながら個人的にスマホアプリを作っていました。法人になった翌年の2017年、会社としてゲーム事業を強く打ち出していこうと決意し、それが大きな転機となります。

ゲーム事業を明確に打ち出したことで人とのつながりもできて、2018年1月に「Mr. ドットマン in SENDAI」というイベントを開くことになりました。ナムコで「ゼビウス」「ギャラガ」「マッピー」「ディグダグ」といったゲームのドット絵を描かれていた、Mr.ドットマンこと小野浩さんをお招きしたワークショップとトークショーのイベントです。

トークショーでは、ナムコ提供の深夜ラジオ番組でパーソナリティーを務めていた大橋照子さん、元ナムコで「源平討魔伝」「サンダーセプター」「超絶倫人ベラボーマン」などのゲーム音楽を制作した中潟憲雄さん、イラストレーター・漫画家でレトロゲームコレクターのRIKIさんをゲストに迎えました。

「Mr. ドットマン in SENDAI」トークショー(写真提供=ピクセル)

−話が急展開しましたね。

佐々木 そうですよね(笑) そこから急にイベントの仕事が多くなります。その年の9月には1989年に発売されたPCゲーム「エメラルドドラゴン」の原画展を東京・吉祥寺で行いました。作品のキャラクターデザイン、ビジュアルを手掛けた木村明広さんの原画展示とトークショーを行いました。

10月にも同じ会場で、うちで出した「HORGIHUGH(ホーギーヒュー)」というシューティングゲームのリリースイベントを行っています。

−自社製品のイベントは分かりますが、そうではないイベントを手掛けるのはなぜでしょう。

佐々木 変な使命感みたいなものです。レトロゲームのイベントは版権を管理している大手が直接手掛けることは少なく、開催してほしいというファンの声は多くても実現が難しい部分もありました。じゃあ自分がやろうと、版権とはぶつからない範囲でやらせてもらっています。グッズ販売やチケット代の収入はありますが、会場費や謝金で利益はほとんど出ません。結局右から左へ、ちょっとプラスがあるかないかです。

−私も「ファミコンナイト」というイベントを開いていたので、よく分かります。ほかにどんなイベントを。

佐々木 2019年3月には「伝説のクソゲー」といわれながらBGMの評価が高い「デス・クリムゾン」の音楽を手掛けた渡辺邦孝さんのライブを新宿で行いました。

10月には元コナミのサウンドチーム「矩形波倶楽部(くけいはくらぶ)」のメンバーによる「HEARTY MUSIC CLUB BAND」というバンドのライブを仙台で行いました。ところが台風19号(ハギビス)と重なってしまって、実施しましたが、半分くらいは払い戻しとなりました。

その翌日が「インディーゲームマーケット」というイベントで、これはまさにファミコンナイトのような、子どもも大人も楽しめるものをやりたいと思って企画したんです。

「インディーゲームマーケット」会場の様子(写真提供=ピクセル)

−そうでしたか。どのようなイベントですか。

佐々木 インディーゲームやオリジナルゲームと、レトロゲームやマイナーゲームを題材にした漫画や二次創作、書籍、オリジナル・レトロゲーム機器の展示、頒布などを行う極めて小規模なコミケのようなものですね。

元矩形波倶楽部リーダーの古川もとあきさん、Mr.ドットマンの小野さんのほかに、「チャレンジャー」「忍者ハットリくん」「スターソルジャー」などを作曲した元ハドソンのキノコ国本剛章さん、タイトーのサウンド開発部門「ZUNTATA」で「電車でGO!」などを手掛けたなかやまらいでんさん、スーパーファミコンのゲームを皮切りに最近では「パズル&ドラゴンズ」のサウンド制作を行う中島享生さんなど、レジェンド的なクリエイターの方々に加えて、私が大きく影響を受けたレトロゲームイベントのパイオニアともいえる広島のゲームインパクトさんが、「熱血硬派くにおくん」「ダブルドラゴン」などのキャラクターデザインを手掛けたKonさんと共に参加してくださいました。

またありがたいことに、東北を代表するゲーム会社の一つともいえる株式会社ピコラさん、プレイステーション4やニンテンドースイッチなど「最悪なる災厄人間に捧(ささ)ぐ」の開発元である山形のウォーターフェニックスさんなど、東北からも多くの方にご参加いただきました。

−そうそうたる顔触れですね。イベントの規模も大きくなっています。

佐々木 一番大きかったイベントは、2019年12月に原宿クエストホールで行った「エメラルドドラゴン」の30周年記念イベントです。ほかの作品も含めた木村さんの原画展示と、エメラルドドラゴンゆかりの声優、保志総一朗さんと冬馬由美さんを交えたトークライブを行いました。

−そうした著名なクリエイターとのネットワークはどのように広げているんですか。

佐々木 何のつてもないところから、「好き」とか「リスペクト」の思いのみで一ファンとしてツイッターなどでダイレクトに特攻しています。

−予算組みは。

佐々木 だいたいチケット代の範囲で計算して、スポンサーになってくれる方も探して、まあ持ち出しは後から考えるような感じで(笑)

−本業とは別の活動という感覚ですか。

佐々木 いえ、会社の売り上げとしてはけっこうな割合を占めるんですよね。ウェブ制作、ゲーム開発と3本柱の一つです。

本稿ではあまり触れていないが、ピクセルのホームページにはウェブ制作の実績もずらりと並ぶ

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社ピクセル

2016年設立。ウェブやその他のデザインなどの業務、レトロゲームイベントとゲーム開発を行う。「文化としてのゲーム」「アートとしてのゲーム」「レトロゲーム=ゲーム業界のクラシック、としての位置付け」。これらの理念の下、ゲーム開発やイベントを通じてファンとゲスト、クリエイターとクリエイター、古い技術と新しい技術など、ゲーム文化のつなぎ手というポジションを志す。

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