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ピクセル(中編)インディーズスタジオがゲームを作り、売り上げを得るまで

ここからはオリジナルゲーム開発について。外部クリエイターと連携しながら作品を作り上げている工程と、ビジネスとしての側面についても聞いた。答えにくい質問にも包み隠さず話していただいたことで、なかなか見ることのないインディーズスタジオの一端をうかがい知ることができた。取材時は新型コロナウイルスが市民生活に影響を及ぼし始めて間もない頃だったが、話の最後にはイベント主催者の視点で正直な実感が語られていた。

インディーズスタジオがゲームを作り、売り上げを得るまで

−ゲーム事業についてもお伺いしていきたいと思います。自社製品を開発するメーカーということになるのでしょうか。

佐々木 インディーズスタジオですかね。自社製品の開発が基本で、受託業務の依頼もありますが、今は受けていません。プラットフォームは基本的にPCメインです。スマートフォンアプリはとにかく数が多いので広告料をかけないと埋もれてしまいますし、よほど当たらないと、なかなか。ネット通販とイベントでの販売がメインで、東京や北海道、新潟、大阪などの店舗で扱ってもらったりもしています。

−開発の技術はどうやって身に付けたんですか。

佐々木 独学です。本とネットで。今はネットでもかなり詳しいところまで調べられますので。

佐々木氏が普段開発を行っている仕事場の様子(写真提供=ピクセル)

−子どもの頃のゲーム遍歴も伺えますか。

佐々木 人並みにプレーはしましたが、業界一般の人から見たらたいしたことはないと思います。うちは親からファミコンは駄目と言われて、パソコンにもなるからとMSXを買ってもらったんですよね。

−あるあるですね。そしてコナミのゲームを散々遊ぶという。

佐々木 そうですそうです。その後、セガマークIII、メガドライブでコンシューマーデビューしました。

−そこでセガのハードを選ぶのもまた(笑) でも、そこまでゲームにのめり込んでいたわけでもないのに、なぜゲームを作ろうと思われたんでしょう。

佐々木 漫画家さんのアシスタントをしていた話をしましたが、漫画家になりたくて週刊少年ジャンプに投稿していたこともあるくらいなので、キャラクターやシナリオを考えるのは昔から好きだったんですね。

 −小さい頃から基本的にものづくりが好きなんですね。

 佐々木 そうです。粘土と画用紙があればいい子どもでした。

−制作体制はどのように。

佐々木 基本的に私は企画やプログラミング、ディレクションなどを担当し、一部のグラフィックやイラストなどは、クラウドワークスなどを使ってクリエイターさんに外注しています。大手のゲームメーカーを辞めてフリーになって登録している方も多いんですよね。それで次の作品をお願いすることもありますし、作品の色によってまた別の方にお願いすることもあります。

あとはイベントでつながりができたクリエイターさんに直接お願いすることもあります。「ドットの拳(けん)GIGA」という格闘ゲームは、「Mr. ドットマン in SENDAI」がきっかけで小野さんにドット絵とロゴデザイン、中潟さんに音楽をお願いできました。「焔龍聖拳(えんりゅうせいけん)シャオメイ」というアクションゲームも中潟さんに音楽を担当していただいています。

「ドットの拳 GIGA」ゲーム画面(写真提供=ピクセル)

−込み入ったことをお聞きしますが、どのような契約になるのですか。

佐々木 ほぼ買い上げですが、権利はお互いで共有できる形にしています。特に昔のゲームは権利が企業に残っていたりして、自分の曲を自分で演奏できないなど、作ったクリエイターさん本人ですら自由に使えない場合が多いんです。それを避けるために、クリエイターさんにも権利が残るようにしました。

−イベントの話とも関係がありますね。

佐々木 そうです。

−制作のスパンはどれくらいですか。

佐々木 規模にもより、早いものは1、2カ月ですが、だいたい半年から1年はかかりますね。作っている途中でアイデアが湧いてくることも多いので、同時進行で何本かやっている状態です。

−受託業務ではないので、ゲームを売って初めてお金になるんですよね。

佐々木 そうです。巨大な開発費をかけているわけではないので、それほどリスクはありませんが、販売するまでお金にならないんですよね。どうしてもウェブ制作の仕事をしながらになって、時間がうまく配分できない難しさはあります。また、発売直後やイベントでは伸びるんですが、それ以外は落ち着いてしまいますね。でもありがたいのは、一定のファンというかお客さんが付いてくれていることです。

2019年に「ホーギーヒュー」のニンテンドースイッチ版を開発するためのクラウドファンディングを行い達成したので、いま、2020年内の発売に向けて開発を進めているところです。そこから新しい客層も広げていけたらと思います。

−グッズ販売も事業の一つとして行っていますが、そちらの状況は。

佐々木 自社コンテンツのキャラクターグッズを中心に、一部エメラルドドラゴンのグッズも取り扱っています。将来的にはこのグッズ販売を伸ばしてキャラクタービジネスを展開したいですね。いつか秋葉原にグッズ屋さんを持つことが夢です。そんなこともあって、ゲーム作りにおいてキャラクターには特に力を入れています。

「焔龍聖拳シャオメイ」ドット絵キーホルダー(左)、「ホーギーヒュー」缶バッジストラップ(右)

−ここまでの道のりを振り返って、ピンチだったことは何ですか。

佐々木 イベントは毎回紆余(うよ)曲折があります。一番大きかったのは台風と重なってしまったHEARTY MUSIC CLUB BANDのライブ。110枚くらいチケットが売れて、実際に来られたのは急きょ発売した当日券を含めて50〜60人でした。12月のエメラルドドラゴンのイベントも500人ほど見積もっていたのが半分ほどの集客で、額面的な意味で言えばちょっと厳しかったですね。とは言え30年前の1つのゲームをテーマにしたイベントでこれだけの人数が集まるのはすごいことです。作品の人気を改めて感じました。毎回ゲストとファンの熱い思いに触れると、結果的に苦労やピンチといったネガティブな記憶は消えてしまいます。毎回失敗も多く、反省ばかりですが(笑)

 

イベントでの苦労を振り返る佐々木氏

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社ピクセル

2016年設立。ウェブやその他のデザインなどの業務、レトロゲームイベントとゲーム開発を行う。「文化としてのゲーム」「アートとしてのゲーム」「レトロゲーム=ゲーム業界のクラシック、としての位置付け」。これらの理念の下、ゲーム開発やイベントを通じてファンとゲスト、クリエイターとクリエイター、古い技術と新しい技術など、ゲーム文化のつなぎ手というポジションを志す。

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