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パルサー(後編) 課題先進地の東北から事業を全国へ その成長の先に

券売機事業で積み上げてきた経験とノウハウを生かし、自動販売機やセルフレジなど取り扱う機器の幅を広げている株式会社パルサー。さらなる事業拡大が見込めるいま、阿部氏が最も注力しているのが組織づくりだ。会社をさらに成長させることで、苦難の船出からここまで助けてくれた人たちに恩を返し、人口減少という社会課題の解決に寄与し、社員やその家族の幸せを実現する。三方良しの精神で、課題先進地の東北から社会を明るくしていく。

課題先進地の東北から事業を全国へ その成長の先に

−いま券売機事業はどのような状況ですか。

阿部 消費増税に伴う軽減税率対策があり2019年度は伸びましたが、全体的には落ち着いてきています。それは想定していたので、ほかにも柱を増やそうと、2016年に「自動販売機JP」というメディアを新しく作りました。それがだんだんと伸びてきて、いまでは券売機よりも問い合わせが多くなっています。

一口に自販機といってもいろいろあるんですよ。飲料はもちろん食品も、豆腐やソースや乾のり、カレー、昆虫食なんていうものまで。下着やTシャツ、葬儀場の靴下の自販機もあります。

左から豆腐、乾のり、靴下の自動販売機

−なるほど。言われてみれば、さまざまな需要がありそうですね。

阿部 券売機JPで一番勉強になったのは、そうしたいろんなニーズが入ってくるということでした。メディア(ウェブサイト)を立ち上げると、こんなことはできないだろうかと、自分たちが考えていなかったニーズがどんどん寄せられるんです。

その最たる例がレンタルです。いままで券売機の業界でレンタルはなかったんですが、スキー場など一定期間しか使わない場所にニーズがありそうだと分かりました。うちは中古機も扱っているので、中古機をきれいにして貸し出したところ、それが毎年回ってくれて、売り上げの一定のベースをつくってくれています

自動販売機JPでも同じように、こんなことはできないかという問い合わせがたくさん届いています。どういうワードで検索されているのかも分かるので、それを見ただけでもニーズがつかめてくるんですね。それに対応できる機械がなければいったん断らざるを得ないんですが、そういう要望をたくさん集めておいて、あちこち探して、見つけて、マッチングしていくと、それが一つの事業に育っていきます。

2019年には「セルフレジJP」というメディアも作りました。立ち上げたばかりで売り上げ自体はこれからですが、そちらも同じような形でニーズがどんどん集まってきているところで、今後の展開が楽しみです。

2019年に開設した「セルフレジJP」トップページ(2020年6月現在)

−券売機から自動販売機、セルフレジと展開を広げているのはどのような考えからでしょうか。

阿部 人口減少という社会課題があり、中でも東北はその先進地域と言えます。それを何とかビジネスで解決できないかと。人が減るんだったら人の代わりをする機器やシステムを扱って、この地から社会に普及していくことがうちの役割だと思っています。券売機、自販機、セルフレジ、さらに少しずつ普及してきているサービスロボットなど、人の代わりをする機器を社会にどんどん普及させていきたいです。

キャッシュレス対応が進んでいる海外にもさまざまな機械があるので、新しい商材をどんどん増やしていきながら、ネットメディアで困り事やニーズを集めて、それに応えられるものを提供していく。国内だけでなく、ほかの国に普及させていくことも可能性としてはありますね

−タッチパネル化もどんどん進んでいますが、これまでのノウハウは生かせるんでしょうか。

阿部 タッチパネルも設定をいろいろと変えられるんです。メニューの配置だけでなく、UIをどのようにしたら使いやすいか、外国の方でも使いやすくするにはどうしたらいいかなど、研究しながらやっています。いままでの製品で積み上げてきたノウハウと行動心理学の知見をベースにした提案力は、これからも変わらずうちの強みとなっていくでしょう。

−まだまだ成長が見込めますね。

阿部 人口不足で券売機も自販機もセルフレジもサービスロボットもどんどん社会に出ていくことは明らかなので、ビジネス的には追い風に乗っているかなと思います。そこに向けて、いま力を入れているのが組織づくり。これから5億円、10億円と売り上げを増やしていくための組織のベースを組み立てている最中です。

上場しようとか大もうけしようということが目的ではなく、根底にあるのは人に喜んでもらいたい、人を幸せにしたいという思いです。いま会社があるのは苦しい時に助けてもらった経営者の先輩やメーカーさん、お客さんのおかげ。そういう方々に恩返しをしたい。もちろん、社員にも幸せになってもらいたいです。

お世話になった人々や社員への思いを語る阿部社長

−どのようなことでその幸せを実現していこうと。

阿部 日本理化学工業株式会社という、従業員の7割が障がい者で「幸せを創造する会社」として有名になった、チョーク製造の会社があります。そこの大山泰弘会長(故人)が、人の幸せとは「愛されること」「褒められること」「人の役に立つこと」「人に必要とされること」だとおっしゃっているんですね。それらは仕事で得られ、仕事を通して成長するとさらに大きく得られるものだと私は思います。

いまはこういう変化の激しい時代で、新卒採用面接でも将来に不安だという学生が本当に多い。二十歳そこそこで希望に満ちた未来があるのに、不安を感じているんです。だから、仕事を通して人間力を付けて、どこに行っても自信を持ってやれる自分になっていってほしい。そうなれるように応援していきたいです。

子育て世代の社員も多いので、親が人間的に成長して心が豊かになっていけば、子どもにも連鎖していくはずです。まだまだ規模の小さな会社ですが、そんな社員が一人でも多く育ってくれれば、将来が明るくなっていくのではないでしょうか。

子育て世代の社員も多いパルサー社内

−突然事業を継ぐことになって、ほぼリセットの状態から1人でスタートして、いまでは社員の幸せやその子どもたちのことまで考えて経営をされている。こういう未来は思い描いていましたか。

阿部 まったく想像していませんでしたよ。安定した売り上げがあって、自然に囲まれた中で趣味のサーフィンやスノーボードをして遊んで暮らせるんじゃないかなんて思っていたくらいですから。でもそれは、神様が許してくれませんでしたね(笑)

いまがあるのは、同友会や経営者仲間の存在が非常に大きいです。一人で何をやっているんだ、倒れたらどうするんだ、もっと上を目指してやろうとハッパを掛けてくれますし、実際に実行している姿を見せてくれる。自分だけ取り残されるわけにはいかないという気持ちになりますよね。そういう環境に身を置いていたおかげで、自分も会社も変わることができました。皆さんには本当に感謝しています。だからこそ、もっともっと成長していきたいです。

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社パルサー

本社 〒981-3213  宮城県仙台市泉区南中山4-3-16

株式会社パルサーは、「できたらいいね」を実現しますというMISSONに向けて、人口減少という社会課題に対して、自動券売機、自動販売機、セルフレジなどの人の代わりをする機器やシステムの販売・リースレンタル・カスタム・メンテナンスを全国に展開しています。

関わる全ての人が幸せになれる会社を目指しています。

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