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クリエイターインタビュー|大網 拓真さん(前編)

3Dプリンタやレーザーカッタなどのデジタル工作機械を備える開放型の市民工房「FabLab sendai – FLAT」。エンジニアとして利用者のアイデアを形にするサポートをし、ラボを切り盛りする大網拓真(おおあみ たくま)さんに、現在の仕事に就くまでの経緯、ものづくりやデジタル工作への想いを伺いました。

—デジタル工作に興味を持った経緯を教えてください。

 プログラムを使って、モーターを動かしたり音声を出力したりすることができる「Arduino」という電子工作キットがきっかけです。高専の情報工学部を卒業して、九州大学の芸術工学部に通っていた頃に知って、これはおもしろいなと。

—高専に進学したのも、コンピュータを学びたいと思ったからですよね。

 はい。中学生の頃にピクサーに憧れて「パソコン使えるようになりてー!」と思ったんです。最初はおもしろかったんですよ、コンピュータとかプログラミングについて学べて。ただ、少しずつカリキュラムと自分のやりたいことがずれていっちゃって。

—コンピュータやシステムのつくりの話になっていったってことですか?

 そうなんです。効率よく検索できるデータベースのつくり方とか、通信速度を上げるネットワーク構成とか、性能の話になっていっちゃって。もちろんそれも大事だし、高専で学んだことは今の自分の力になっていますが、コンピュータとかプログラミングを使った表現で人を喜ばせたり楽しませたりしたい、という気持ちの方が大きかったので、九大に編入しました。

—九大では、どんなことを学んでいたんですか?

 芸術工学部の芸術情報設計学科で、UIUXという視点で使いやすいコンピュータとかソフトウェアについて考えたり、シンセサイザーをつくってプログラムを使った表現を学んだりという感じでしたね。
 「Arduino」もそうですが、とにかくコンピュータを使っていろんなものを動かすことが楽しくて。高専からの編入で3年次スタートだったんですが、学部だけでは物足りなくて大学院に進みました。
 大学院の最初の1年間は、交換留学生としてオランダのアムステルダムにある、アムステルダム応用科学大学という大学に通っていました。メディアラボがある大学なんですけど、そのラボでやっている企業や自治体との共同プロジェクトに参加したかったんです。

—それはおもしろそうですね。どんなことをするプロジェクトなんですか?

 「こんなことで困ってるんだけど、おもしろく解決してくれない?」みたいな感じで企業や自治体からお題が出されて、半年間かけてそれに答えを出していくんです。プロジェクトごとに企業がついていて、オランダの国鉄とか、IKEAとか、PHILIPSとか、結構大きな企業が参加していましたね。
 大学にとっても重要度の高いプログラムで、このプロジェクトに参加することで1年分の単位が賄えるくらいだったので、ほぼ毎日プロジェクトのことをやっていました。

—自由度が高い分、おもしろさも難しさも大きそうですね。具体的に、プロジェクトはどんな感じで進んでいくんでしょう?

 45人のチームでの作業がベースになります。うちのチームは僕の他に、オランダ人が2人、イタリア人とインド人がそれぞれ1人ずつというチームでした。このプロジェクト目当てで留学してくる人も多いので、オランダ人ばかりではないんですよ。あと、みんなが情報工学をやってきている訳ではなく、グラフィックデザインとか組織経営とかバックグラウンドがバラバラだったので、チームになって考えたりつくったりするだけでも結構な勉強になりました。
 チームでの作業の他に、専門家によるレクチャーがありました。リサーチフェーズには統計学の専門家やプロのインタビュアーが来てくれて、いろんなリサーチの手法を教えてくれたりとか。自分自身のスキルアップにはもちろんなったし、プロジェクトの完成度にもかなり影響しましたね。
 この半年間は、午前中はレクチャー、午後はチーム作業という毎日でした。やらなきゃいけないことは多かったですが、メディアラボが大学のメインキャンパスとは少し離れていたこともあって、かなり自由な雰囲気でしたね。中間発表の後とか、節目節目でラボの所長が酒買って来てくれて「飲むぞー!」みたいなのもあったりして。

「めちゃめちゃ充実してましたね」と当時を振り返る大網さん。

—大網さんのチームでは、どんなものをつくったんですか?

 「オランダの歴史を、移住者や旅行者に知ってほしい」という行政のお題に対して、タイムマシーンをイメージしたデジタルサイネージをつくりました。サイネージ上のタイムスライダーを動かすと、その場所の写真が古くなったり新しくなったりするものです。オランダっていろんなことがあった国で、歴史はそれ自体ですごくおもしろいので、とっかかりのハードルを下げることが1番のキモでしたね。

大網さんが旅行者役で登場する紹介動画。

—オランダでの残りの半年間は、普通に大学に通っていたんですか?

 いえ、前半のプロジェクトで日本に持って帰れる上限くらいまで単位が取れていたので、大学にはほとんど行かずファブラボアムステルダムでインターンをやらせてもらっていました。プロジェクトをやっている頃から使わせてもらっていて、すごくおもしろい場所だなと思っていたんです。

—ここでついにファブラボが登場する訳ですね。

そうです。

ファブラボアムステルダムは古城の中にあるそう。
ラボ内の様子。

—インターンとは言え、働くためには面接とかありますよね?

 ありますね。もちろん受かったから働かせてもらえたわけですが、後からラボの所長に「ぶっちゃけ採用するか迷ったよ、英語ヤバ過ぎて」って言われました。

—ちょっと話がそれますが、オランダの公用語って英語なんですか?

 英語ですね。ただ、交易が盛んな国なので3カ国語4カ国語喋れるのがあたりまえ、みたいな国です。

—そうなんですね。インターンは、ラボの運営を手伝ったりすることが仕事ですよね?

 そうですね。あとは、1クールが3カ月なんですが、その間に何かをつくることが課せられていました。その成果次第で、さらに3カ月やらせてもらえるかが決まるシステムで、結局僕は6カ月間やることができました。
 デジタル工作機械に本格的に触れることができて、情報工学とか今まで身につけてきた知識と自分のやりたいことがようやくここでつながりましたね。

—オランダでの1年間を経て、久しぶりの日本はどうでした?

あ、実はその後すぐアイスランドに行ったんですよ。

—え?そうなんですか?

 一時的には帰国したんですが、横浜で開かれたファブラボ世界会議で出会ったアイスランドのラボのマネージャーが僕のことを気にいってくれて。「留学しない?」「します」みたいな感じで行くことになりました。

—アムステルダムのラボとは、やっぱり違いました?

 全然違いましたね。アムステルダムの方は周りにデザインの学校があって、そこの学生たちが集まる場所だったんですが、アイスランドの方は子どもたちの教育を目的としたラボだったので。

—子どもにものづくりの楽しさを知ってもらう、みたいなことですかね?

 そうですね。車で120分くらいの小さな離島にあるラボで、「田舎にいても、最先端技術に触れながらものづくりの楽しさを知ることができる」みたいなことがコンセプトになっていました。小学校の図工の授業をラボでやったりとか、結構本格的に教育に携わっているラボでしたね。

ラボのある島の港。
ものづくりを楽しむ島の子どもたちとスタッフの方々。

取材日:平成28年11月21日
聞き手:工藤 拓也、SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:工藤 拓也

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大網 拓真

FabLab SENDAI – FLAT エンジニア / 一般社団法人FLAT
2014年、九州大学大学院芸術工学部デザインストラテジー専攻修了。1年半、オランダとアイスランドにて3Dプリンタやレーザーカッタなどのデジタル工作機械を備え、一般に開放された市民工房FabLabにてインターンシップを経験する。
帰国後は、仙台市内のFabLabであるFabLabSENDAI – FLATにて技術的なサポートや工房の運営を行いつつも、同工房を拠点として企業の試作品開発、大学と連携しての技術開発など設計から製作までを行えるエンジニアとして活動している。

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