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クリエイターインタビュー|千葉 太郎さん(後編)

フリーの映像クリエイターとして、広告の映像制作を中心に手掛ける千葉太郎(ちば たろう)さん。宮城県内を拠点に活躍する千葉さんのこれまで・これからのお仕事についてお話を伺いました。

 

―今までで一番印象に残っている仕事は?

フリーになって最初の仕事だった「海と日本プロジェクト」です。宮城県内のいろんな海に行けて。海がすごくきれいでしたよ。その仕事がきっかけで運よく素晴らしい出会いに恵まれて、新しい仕事にもつながっています。

―「海と日本プロジェクト」とは?

日本財団が海の魅力や恩恵、課題を発信するプロジェクトで、海で活躍する人や、海をよくしようという活動をしている人たちをピックアップして紹介しています。テレビ番組でも放送していますし、CMやYouTube用の動画もつくりました。

https://www.youtube.com/watch?v=6yyCppOuNDU

2017年 #2 宮城県塩釜市 佐藤昭市長インタビュー|海と日本PROJECT in みやぎ

2017年 #5 サーフショップフルスピード オーナー 澤地聡一さんインタビュー|海と日本PROJECT in みやぎ

―この映像はこのカメラで撮影したのですか。きれいですね。

文字通り、走り回りました(笑)。塩釜市長とか、地元のサーフショップの方が登場して。地元のサーフィンをするおっちゃん、熱い男なんですよ。意図的にそういう風な撮影や色味にしているっていうのもあります。

写真右:千葉さんが実際に使っているカメラ

―生活の海、趣味の海とか、いろんなカラーの海があって。それをパッと見て伝えるってすごいなと思って。

全然すごくないですよ。

―上手いカメラマンとそうではないカメラマンの違いって何だと思いますか。

ある程度の正解をどんな状況でも常に出せる人。時間がない、緊張感があるとか、いろんな状況が重なっていてもきちんとできるのが、優秀なカメラマンではないでしょうか。

―他にもBrooklyn DAYOUT!!というイベントのイメージ映像を制作されたそうですが、どういったイベントだったのですか。

公園をもっと人が集う場所にしようという趣旨で、肴町公園(仙台市青葉区国分町)で開かれたイベントです。この映像は、フリーになる前にプライベートでつくりました。

Brooklyn DAYOUT!! short ver.

―仕事のやりがいって、どんなところに感じていますか。

映像が完成した瞬間ですかね。「天下取ったぞ!」みたいな感じで(笑)、すごく嬉しくて、解放感あふれますし。でもその後、人に見てもらうときには夢からは覚めているので、怖いんですよ。「ここのテロップが小っちゃかったかな」とか、「ここのカットはあっちのカットの方が良かったかもしれない」とか。「いかがでしょうか…?」みたいな感じ見てもらって、OKがもらえるとようやくほっとできる。

―逆に、つらいと思う瞬間はありますか。

あります。それは常にそうですよ。常にしんどいですし、やめたいし、逃げたい。でも動画ができたぁっていう瞬間は、いかんとも代えがたいんです。本当は、お客さんに喜んでもらえるときっていうのが、一番素敵なんでしょうけど(笑)。

―カメラマン以外の仕事をしてみたいと思ったことはありますか。

実はあります。僕、レジ打ちの経験がないんですよ。なので、レジ打ちをスマートにやっている人を見ると、「僕もこういう風なのしてみたいな」って思います。スマートなレジ打ちは、素直に経験したいなぁ。しておきたかったなぁって思います。

―宮城県内でフリーで映像を撮る方はどのくらいいるのですか。

20代だと、僕ともう一人ぐらいしか知らないです。なんでなんですかね?

―仙台のまちでの仕事のしやすさとか、逆に、難しさを思うことはありますか。

仙台市ならではの仕事のしやすさとか難しさってものは、ほぼなくて、どこも一緒なんじゃないかなって思います。

―東京に行きたいと思ったことは?

ちょっと、憧れはありました。今も全く憧れがないかって言ったら、それは嘘にはなる。でも、自分が生まれ育った仙台、宮城、東北を盛り上げる仕事は、「海と日本プロジェクト」を代表に、結構あるんで、そういう仕事をしているときは、やっぱりやりがいを感じます。強いて言えば、もっと独自の仙台にしかないようなコンテンツとか、仙台にしかないような文化とか、そういうもののが根付いてくると、もっと面白くなるんでしょう。まぁでも、どこの自治体みても、一緒だし、僕はそれでいいと思っていて。

例えば、YouTuberっていう仕事について僕は研究しているんですけど、彼らっていろんなところにいるんですよ。いろんなところで、いろんな動画を撮ってる人がいて、それに地域性があるかって言ったら、そんなのないんですよ。田舎か都会かぐらい。福井県とか香川県が結構代表格なんですけど、福井県でつくっている動画が福井らしいかって言ったら、そういうわけではないし。福井の田舎でつくっているか、都心部でつくっているかの違いくらいで。場所は関係ないのかな、と思います。

―仙台で今後チャレンジしていきたい仕事はありますか。

なんか、仙台にしかない風景だったり、仙台にしかない人の表情だったり、そういうのをきれいに美しく、人に紹介できるような動画をいつかつくれたらいいかな。あと、東京オリンピックで活躍しようとしている宮城のアスリートとかは、すっごく応援したいんですよね。

―そうやって、映像によって知らせることができるのはすごいですよね。その人を魅力的に撮ろうと思ったら、いくらでも魅力的に撮ってあげられる。すごい仕事ですよね。

宮城県内なら、南三陸町のフェンシングの兄弟とか。あと、パラリンピックは、仙台の車いすバスケがすごく強いんですよ。日本代表選手が3人所属していたりとか。前回のパラリンピックの選手団の団長も、仙台の車いすバスケのチームの人なんですよ。それをみんな知らないじゃないですか。なんて誇らしいことなんだろうって思っているから、なんかうまくできないかなって。オリンピックまでに。

―こういうまちになって欲しいとか、行政にこういうことをして欲しいとか、仙台市に期待することはありますか。

仕事を発注していただけたら、すごく嬉しい(笑)。僕は両親からフリーであることに反対されているので、そういう両親に対しても「仙台市から仕事もらった」って言えれば、安心してもらえるかな、と(笑)。あと思うのは、本来クリエイターは、応援される側ではなく、応援する側なんですよ。なので、別にクリエイターをバックアップしてくれ、応援してくれとは、僕はあまり思っていないんです。でもドローン特区なので他と比べたらドローンを使った撮影もやりやすくて、ありがたいなと思います。

―ドローンも飛ばしたりするんですか。

飛ばしますよ。ドローンも自分の機材を持っています。15万円も出せば、ちゃんと仕事に使えるようなもの買えちゃいますから。昔は200万円ぐらいかかっちゃいましたけど。今では、中国のシンセンにある企業が全部牛耳っている状況ですね。

あと今、話をして思い出したのは、仙台市がいろんなテクノロジーの力をもっと取り入れて、ボーダーをなくすために尽力してほしいと思います。例えば、障害のある人と無い人の境目がなくなったりとか。そういうのが、仙台からも発信されていくようになると面白いかなと。仙台にもIT企業がもっと増えて、日本のシンセンは仙台だ、みたいな。仙台市民は財布を持たない、とかね。仙台に来たら一枚のカードで全部会計できちゃうとか。そうなったらいいな。

―フリーランスになって、自分からの営業活動はしていますか。

今のところ、一回もしたことがないですね。でも営業をすることによって、自分好みの仕事だったり、自分でコントロールできる仕事が増えるのはいいことだと思います。自分がやりたい仕事にシフトしていくために戦略的にそれをやるのは全然ありだな、と。

―大学卒業後、就職までの期間のフリーランスと今のフリーランス、それぞれで心境の違いはありますか。

技術面では当時つくったものを見ると、もう見てられないくらい全然違うんですけど、心境として何か変化があるかと言われたら、ないですね。当時も今も、目の前にあることを一生懸命がんばっています。

―クリエイティブ関係の仕事を目指している方や始めたばかりの人に向けて、何かメッセージをいただけますか。

あんまり偉そうなことは言えないんですけど。絵を描くのとか、写真撮るのとか、映像とか、好きだからこれを仕事にしたいって思うんでしょうし、多分それが一番美しいんだと思います。好きでも食えないとかそういう話をする人がいると思いますけど、どうにかなるので、気にせずそのまま行ってほしいですね。

取材日:平成30年2月22日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

 

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千葉 太郎

1989年宮城県生まれ。

仙台を拠点に、主に広告やテレビ番組を制作。

ディレクター・映像カメラマン・エディターとして、様々な案件に参加。

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