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THINK! MAKE! SHARE! -1- アップサイクルプロジェクトスタート!

朝日クラフトの廃材「ターポリン」を再利用し、新たな商品開発を行うプロジェクト。FabLab SENDAI - FLATのデジタル工作機を活用した試作から商品開発までの工程を紹介していきます。

大網  こんにちは!FabLab SENDAI – FLATの大網(オオアミ:写真右)です。

小野寺 小野寺(オノデラ:写真左)です!

(photo by Yoshihiro Asano)

小野寺 私たちのメインの仕事は、誰でも使える図工室 FabLab SENDAI – FLATの運営と、ものをつくること。

大網  大学などに出向いて、ものづくりのための技術のレクチャーを行なうこともあります。

小野寺 FabLab SENDAI – FLATでは、学生さんから社会人の方まで、幅広い年齢やジャンルの方が日々ものづくりに取り組んでいます。金づちやノコギリなどのハンドツールに加えて、3Dプリンタやレーザーカッターといった『デジタル工作マシン』を利用できるというところが大きな特徴です。

※デジタル工作マシンとは?:パソコン等で作成された設計データを元に、様々な素材を加工するマシンのこと。

大網  まずはこのプロジェクトが始まった経緯から。ある日、SC3の工藤さんより「とある会社さんから出る廃材を、何か新しいかたちにつくり変えられないかな?」とのご相談が。

小野寺 実験好きな私たちとしては断る理由はないでしょう!ということで、いただいた廃材がこちらです。

大網 廃材の正体は、『ターポリン』という厚手のビニールシートのような素材。この廃材の持ち主は、仙台市太白区中田にオフィスを構える朝日クラフトさん。『ターポリン』や綿帆布などといった、厚手の生地の加工を得意とする縫製会社さんです。

小野寺 横断幕や大型シートを製作する際に、処分するにはもったいないサイズの廃材が大量に出てしまうとのことでした。

大網  まずは『ターポリン』がどんな素材かを知るために、いくつか試作をしてみることにしました。

小野寺 FabLab SENDAI – FLATには様々な『デジタル工作マシン』がありますが、すべての素材を加工できるわけではありません。そのため、加工する前にその素材がどのような原料からつくられているのかを知っておく必要があります。

大網  調べてみると、『ターポリン』は『塩化ビニル樹脂』などの合成樹脂フィルムで、ポリエステルや綿などでできた布織物をサンドしたものとのこと。

小野寺 『塩化ビニル樹脂』は燃やすと有害なガスが発生するため、レーザーの熱で素材を加工する『レーザーカッター』での加工はNG。エンドミルという特殊な刃で素材を切削する『CNCミリングマシン』も、薄いシート状素材の加工には向かないため除外します。

大網 ということで、今回は『デジタル刺繍ミシン』『UVプリンタ』『カッティングプロッター』『3Dプリンタ』を使用することにしました。

小野寺 まずは『デジタル刺繍ミシン』を使った加工から。このミシンは、自分でデザインしたさまざまな図柄を刺繍することができるのですが、もちろん布を縫い合わせることも可能です。そこで手始めに、ターポリン同士を縫い合わせてみることにしました。

小野寺 が、いざ縫ってみると、下糸がぐちゃぐちゃでひどいことに…。針や糸の強さを変えて何度もトライしてみたものの、きれいに仕上げることはできませんでした。しっかりとした縫製をするためには、特殊なマシンが必要そうです。

大網  次は『UVプリンタ』での加工テスト。『UVプリンタ』とは紫外線硬化インクを使用するプリンタで、木材やプラスチックなど、表面が平坦であれば厚みのある素材にもフルカラーで図柄をプリントすることが可能です。

大網  紫外線硬化インクは『塩化ビニル樹脂』との相性がいいので、『ターポリン』にも問題なく印刷できました。ただ、よく見てみるとインクがのった部分が若干盛り上がっています。

大網  裏返すと、プリントされた箇所がボコボコへこんで独特のテクスチャに。これはこれで面白い仕上がりです。

小野寺 続いては『カッティングプロッター』でのカット加工。『カッティングプロッター』は、パソコンで作成した設計図の線どおりにカッターが動き、薄手の素材をカットするマシンです。

小野寺 今回使用した『ターポリン』は、間に繊維が入っているため綺麗にカットできるか不安だったのですが、思いのほかあっさり加工が完了。

小野寺 できたパーツを組み合わせて、こんなものをつくってみました。あまり重さには耐えられなさそうですが、『ターポリン』は水に強い素材なので、ペットボトルやプールグッズを入れるのにもいいかもしれません。

大網  他にも変わり種として、『3Dプリンタ』でも加工の実験をしてみることに。FabLab SENDAI – FLATで使用できる『3Dプリンタ』は、スパゲッティのような形状の樹脂を溶かし、ソフトクリームのように積み重ねてかたちをつくっていくタイプのもの。樹脂の出るノズルは0度から200度以上の高温にまで設定が可能なので、それを活かしてターポリンの表面を薄く溶かすことができないかチャレンジしてみました。

大網  できあがったものがこちら。まだ温度などの調整が必要ですが、素材の間に繊維が挟まっているおかげで、良い具合に片面だけが溶けています。

小野寺 裏から見てみると、溶かした部分がボコボコと浮き上がっているのも面白い!

 

大網  また、ターポリンの表面に直接3Dプリントするという実験もしてみました。専用の土台にプリントするのではなく、布や紙などといったさまざまな素材に3Dプリントするという実験自体は、世界各地の大学やメイカースペースで盛んに取り組まれています。

(参考)FAB TEXTILES|http://fabtextiles.org/fabtextiles-workshop-3d-print-on-fabric/

大網  完成したものを手にとってみると、プリント自体はうまくいっている様子。

くっつきの強度を見るために、プリントしたパーツをひっぱってみると…

大網 はい!あっさり剥がれました〜!強度は残念な結果でしたが、これはこれで新しい発見です。

小野寺 そして最後は『バキュームフォーミング(真空成型)』にもチャレンジ。今回唯一デジタル工作マシンを使用していない加工方法です。

大網  『バキュームフォーミング』とは、加熱して柔らかくしたシート状のプラスチックを、原型にぴったりとくっつけて成形するという造形技法。吸引機で空気を吸い込んで、プラスチックと原型を密着させるというのが大きな特徴です。

小野寺 厚さ9mm、直径70mmの円形にカットされた木材を原型として使用したものがこちら。繊維が間に入っており素材自体が伸びにくいため、原型の形状をしっかり再現をすることはできませんでしたが角はしっかりと出ています。立体的なテクスチャを付けるのに使えそうです。

大網  ということで、今回は、6種類の方法で『ターポリン』の加工実験をしてみました。

小野寺 でもまだまだ深く掘っていけそうですね。

大網  次回は『ターポリン』加工のプロ、朝日クラフトさんのオフィスにお邪魔します!

FabLab SENDAI ‒ FLAT

FabLab SENDAI ‒ FLAT は、個人や小規模チームによるものづくりの実験の場であり、実践の場です。レーザーカッターや3D プリンターなどデジタルデータを利用する加工機械を使い、スピーディーかつ低コストなトライ&エラーを通して、自分のアイデアを形にしていくことが可能です。
また、集まった人同士で情報交換や協力をし合ったり、日本や世界に広がるFabLab ネットワークを通じた世界中の人たちとの交流の中からアイデアが立ち上がるような、新しい形の工房です。

FabLab SENDAI ‒ FLAT で機材を利用するためには、機材ごとに初回講習を受講していただく 必要があります。初回講習や見学会などは、下記よりスケジュールをご確認ください。 http://fablabsendai-flat.com/facilities/

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