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一実

Creators Diary クリエイターズダイアリー

仙台で活動するクリエイターらが日々の出来事や想いを書き留める7日間のフォトダイアリー。誰にでも等しく訪れる一日。けれどもその数だけ異なる一日がある。書くことで読まれる出来事と、読むことで知る誰か。コロナ禍に顔を合わせる機会は減れども、それぞれの日常は続いている。「元気だろうか?仕事はどう?」と頭に浮かぶあの人が近くて遠いこの頃に綴る、一週間の記録です。(月3回更新予定)

2月18日【晴れ】

久しぶりに新しいアイシャドウを買った。綺麗な色を瞼にのせると気持ちが上がる。メイクは好きだ。色には不思議な力がある。

私は人形を作っているので人の顔には興味がある。時々、人形に「いいお顔」なんて言うことがある。恐らく美人であるとか、可愛いとか、そういうものではなくて「私にいい表情をしてくれる」という意味なのだと思う。誰かが品評したものではなく「いいお顔」は私が決めたい。

メイクは私が「いいお顔」になるものだ。綺麗に色がのって、まつ毛があがった日には少し気分がいい。お気に入りのピアスを付けて、保湿のリップも塗る。
昨年から使っていないお気に入りの赤いリップをはやく付けて歩きたい今日この頃だ。

2月19日【曇り】

上手い作品に目がいく。上手くなりたいと思うし、できれば評価されたい。そんな風に思ってから十数年が過ぎている。ふとそう思ったのも、この季節は各地で卒業制作展が行われていることもあるのかもしれない。

いつもこの時期になると作品の価値や評価について考えさせられる。10代の頃の私は「価値」の答えをどこかに求めていた。しかし、作品の価値は自分で決めることで、どこかに答えがあるわけではないようだ。自分を納得させ、肯定してようやく自分の作品の価値が分かる。評価などを人に求めると揺らいだり落ち込んだりする。SNSの反応でさえ敏感になったりもする。見えているものは一部でしかない。大切なのは私の作品の良し悪しを私が一番理解しているということだ。

2月20日【曇りのち雨】

美容とダイエットに良いと聞きたので、アーモンドを食べるようにした。スーパーなんかで買うとそこそこお高いので、まとめてネットでポチる。そして、毎日コーヒーと一緒にポリポリする。そんな私は昔とても太っていて、いまも10年以上変わらず万年ダイエッターなのである。ずっと座って制作しているのでなかなか痩せない。

体脂肪1kgを減らすには7200kcalが必要らしい。また、30代女性平均の基礎代謝量は1150kcalらしい。ということは、一日で増えることもなければ、逆に一日で痩せることもないということだ。ダイエットは日々の努力ということになる。私は低身長なので普通より脂肪を減らすのは大変だ。食べるのはこんなに簡単なのに…と思いながらつい食べ過ぎてしまう。でも、まぁ美容にいいしな、と自分を納得させたりしている。

2月21日【曇り】

身体が重い。気圧のせいだろうか。細かい作業をしているので目もしぱしぱする。体がだるいときは脊柱起立筋をストレッチするといいらしい。深呼吸をして、ゆっくりと身体を伸ばした。ちなみに肩が凝った時は肩をたたくのではなく、肩甲骨を動かかす(腕を回す)といいようだ。

 時々、嫌なことを思い出しては過去の自分を救いたいと思うことがある。今より駄目だった自分を否定したくない。昔は身体がうまく動かないと、本当に何もかも駄目になった気がしていた。しかし、懸命にしぶとく大人をやっていると、上手く休むことを覚える。一生懸命に頑張るのもいいけれど、無茶をして動けなくなるのなら意味がない。体調が悪いと心も弱くなっていく。健康第一。ということで、気圧の頭痛にもアーモンドが良いと言うので今日もポリポリと食べている。

2月22日【晴れ】

食べたもので体は作られると言うが、毎日野菜だけを食べても肉だけを食べても同じ人間の形になるのだから不思議だ。今の生活は10年後に表れるという。だとすれば、今食べているものが未来の自分を作るということになる。

私は日々人形と向き合っているので人間の形については興味を持っているほうだ。しかし、人体については意外と知らなかったりする。筋肉だって、筋肉痛にならない限りその存在を意識することはない。考えてみれば「お、いま大殿筋を使っているな」と思って生活することもない。私は昨年からゆるく筋トレを続けている。そして、筋肉痛になっては解剖学の本を開き、意識して動かしている。筋肉はいくつになっても鍛えれば大きくなるらしい。

今日は高たんぱく低脂質の鶏むね肉を紅茶でくつくつ煮た。将来、私の細胞の一部になる予定だ。

2月23日【晴れ】

3月から始まる「丑展」に出展する作品ができた。黄色いリボンを付けた手のひらに収まる白い仔牛のレリーフだ。元々は数年前に秋保にある佐々木美術館の「牛を描こう」で牛を描かずに粘土をこねていたもの。放置し続けてしまったので、なんとか完成してよかったとほっとする。今日できなければ12年後になっていたかもしれない。

時々、私の作る動物は「可愛くない」と言われることがある。今回も好き嫌いは別れるのかもしれない。けれど、だからといって誰かに合わせようとは思わない。「作家は弱者や社会の為に作るべきだ」と熱く語られたことがあるが、それも正しいとは思えない。でも、どこかで誰かが好きでいてくれたらいいなぁ、とは思う。この世界に生まれてきたものならそう願って当たり前のことだ。ほんの少しでも誰かに必要とされることは幸せなことだ。無理に合わせない、私は私に正直でいたい。

2月24日【晴れ】

何処かへ行けば、何かに出会えれば、自分の世界がひっくり返ると思っていた10代。しかし、未来は日々の積み重ねであり、ゆっくりと緩やかに波を打ちながら変化してゆくもの。突然自分自身が変わることなどそうそうない。

昔の作品の写真を整理する。個展は何度も開催してきた。ぼんやりと過去のことを思い出す。いい事も悪いことも当たり前にある。

 「人形を作るのはとても大変です。だから、辛くなったらやめていいんです。でも、あなたが制作を辞めても、あなたの作品がずっと好きです」

作品は続けることが大事だと今まで言われてきた。しかし、初めて開いた個展で言われたのは「辞めてもいい」と言う言葉だった。思えば私は何度もこの言葉に救われた気がする。

いつ辞めてもいい。でも、辞めるのはいつでもできる。続けていれば好きだと言ってくれた人に会える理由が作れる。気がつけば、あれから10年以上が過ぎている。あの日から変わらず、今日もまた人形を作っている。突然の変化なんてない。何でも積み重ねの先に変化がある。

写真と文 = 一実(いつみ)

1989年生まれ、仙台在住。人形作家。2005年頃から人形制作を開始。仙台を中心に個展などの活動を行う。秋保の杜佐々木美術館&人形館での常時展示。秋保ひとがた文化研究室を立ち上げwebサイト「ひとがた通信」配信。東北生活文化大学非常勤講師。

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