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クリエイターインタビュー前編|大江絵美(ファブリックブランド「LAWN」主宰)

CREATOR INTERVIEW クリエイターインタビュー

長男が自分のスタイをにぎって楽しむ姿から生まれた表情ゆたかな“スタニギー”

ファブリックブランド「LAWN(ローン)」を主宰し、にぎって遊べる子ども用のスタイ“スタニギー”を制作している大江絵美さん。その活動のはじまりにあったのは、生後6ヶ月の息子が自分のスタイ=よだれかけをにぎったり引っ張ったりしてのびのびと遊ぶ姿でした。にぎにぎと、思わず触ってしまいたくなる表情のスタニギーたちはどのように生まれるのでしょうか。家族5人で暮らす家の一角にあるアトリエでお話を伺いました。

ー現在、「LAWN」ではどのような活動をされているのでしょうか。

"スタニギー"という、にぎって遊べる子ども用のスタイをつくっています。一番最初につくったのは、長男が6ヶ月ぐらいのとき。元々アパレルの会社で働いていたんですが、妊娠をきっかけに退職していたので、自分自身のなかに何かしなければという焦りがずっとあったんです。そんなとき、長男が自分でスタイをひっぱって遊んでいたのを目撃して。布を顔にかけたり、ぎゅうぎゅうにぎったり、かみかみしたり。そうした姿を見て、ここににぎにぎがついていたら面白いかもと思い、思い切ってにぎれる部分をつけてみたのがはじまりです。

ーお子さんにつくってあげたことから、活動がはじまっていったんですね。

子どもも喜んでくれたし、周りのママたちもかわいいと言ってくれて。仕事もしていないし、子育てばかりの日々でこれからどうなるんだろうと自分のなかにぽっかり空いていた穴みたいなものが、"スタニギー"をつくることで埋まっていきました。最初は店舗に卸すのではなく、友人たちのリクエストに応じてつくるぐらいでした。友人づてで依頼をいただいたり、Instagramを通じて連絡をくれた方に販売したり。第1号じゃないけど、子どもたちが当時使っていたものは今も大事にとってあります。ちょっと汚いけど、見ますか?(笑)周りのお母さんたちからも「つくりたい」というリクエストがあり、一緒につくったりもしていました。東京にいた頃は子育てでいっぱいいっぱいで、まだ「LAWN」の活動を仕事にはしていませんでしたね。みんなに喜んでもらえたらいいなぐらいで。まさかこんなに長い間つくっているとは思っていなかったので、みんなのおかげだなと思います。

ーそんなふうに作っていたものが、自分のなかでもだんだんと大きな存在になってきたんですね。

大きくなっていきました。今は仙台や東京を中心に何店舗かで委託販売をしてもらっています。仙台で一番安定して取り扱っていただいているのはPARCOⅡの「東北スタンダードマーケット」さんです。InstagramのDMなどを通じて注文をいただくこともありますし、年内までに自分のオンラインショップをオープンできたらと思っています。そうした活動も私ひとりではなく、家族である夫にもサポートしてもらっていて、商品パッケージやオリジナルテキスタイルの制作、アテンションなどの紙まわりなどは任せてつくってもらっています。

オリジナルテキスタイルやパッケージの制作はパートナーの大江ようさんが担当。昨年行なったクリエイターインタビューはこちらから。

ー"スタニギー"には色々な動物がいて、色んな表情がありますが、作品の構想はどのように思いつくのでしょうか。

最初につくった"スタニギー"は「うさぎ」と「ぞう」。つくるときはまず絵を描くんですが、にぎにぎするなら耳がいいかな、鼻がにぎりやすいかなと、そんなふうに考えていきます。これまで色んな動物を描いてきましたが、試作したけどしっくり来なかった動物もいますね。「ひつじ」は難易度が高すぎてできなくて、「サイ」や「ハリネズミ」もダメだった。幻のメンバーです。つくりやすさや肌触りなどを考え、絞られた子たちがここにいます。こういう動物をつくって欲しいという声をいただくこともあり、リクエストから生まれた作品も。今はスタイの他に、ポシェットやポーチなどもつくっています。「LAWN」の作品は、すべて口に入れても大丈夫な生地でつくっているんです。ファーとボア以外は、コットンかリネンを使っています。

ーたしかに、つい触りたくなる肌触りです。完成したらお子さんたちにも使ってもらうのでしょうか。

一番下の子が女の子なんですが、どの動物にしようかを選んで、おでかけの時は必ず持って行ってくれます。長男や次男は4歳ぐらいまでは使ってくれてましたけど、今はゴツいリュックとかの方がいいみたい(笑)。おさげ髪の「おんなのこ」シリーズは、娘にぬいぐるみをつくってあげたいなという想いから生まれたものです。当時、母子手帳を入れるポーチがなかったので、母子手帳やお薬手帳などをガサガサと3人分入れておけるポーチがあったらいいなと。もうボロボロだけど、私も使っています。

「LAWN」で使う生地にはオリジナルプリントを施しているんですが、こうしたテキスタイルの制作は夫が担当してくれています。作品のパッケージデザインも一緒に考えて。プレゼント需要も多いので、そのまま「はい」って渡せるようにパッケージも工夫しています。包装をあけたときに、「なにこれ!?」って思ってくれたら嬉しいですね。

私は作品をつくるのにいっぱいいっぱいで時間が足りなくて。毎日ちょっとずつしかつくれないんです。子どもたちも保育園ではなく幼稚園に通っているので、午前中に作業をして、午後は子どもたちとの時間で、みんなが寝てからまたやる。だから、家族のサポートがないとできません。あとはお願いできる部分の縫製作業や、検品、出荷などを手伝ってくれる友人たちも。心強い助っ人たちの存在があります。

ー昔から制作することは好きだったのでしょうか。

布を縫ったりというようなことはあんまり。でも、絵を描くことは好きでした。父親が建築の内装デザイナーで今も仕事を続けていますが、そうした姿を近くで見て育ったので、私も絵を描くことが好きだったんです。実は、漫画家になりたいと思っていたことも。服飾系の専門学校を出てからはずっとアパレルの会社で働いていたんですが、当時もデザイン画やスタイル画を描くのがなにより好きでしたね。

ーやはりお子さんが生まれたのがきっかけで。

不思議なもので、自分の子どもが生まれると「この子に何かつくってあげたい」という気持ちが出てきたんです。みんなそういうものなのかもしれないけど、そうした想いが「LAWN」の活動に続いていったんだと思います。子どもがスタイを必要とする時期は結構短くて限られてしまうんです。あまりよだれが出ない子もいるし。だけど、成長して使わなくなったあとでもずっととっておきたくなるようなものをつくりたいと思っています。スタイは消耗品だから、安いものは数百円で買えてしまう。よだれでカビが生えたり、毎日洗濯するものだからぐしゃぐしゃになったり。私がつくるものはわりとごてっとしているので実用的じゃないと思われるかもしれないけど、それを子どもが使って、そのあととっておいたり飾ったりしちゃいたくなるくらい、特別なものになれたらいいなって思います。

大江家の子どもたちが愛用していた"スタニギー"。使わなくなった今も大切にとってある

取材日:令和2年10月8日

取材・構成:鈴木淑子
撮影:小泉俊幸

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大江絵美(おおえ・えみ)

神奈川県出身。桑沢デザイン研究所卒業後、アパレルで勤務。2018年、家族で仙台に移住したことをきっかけに本格的ににぎって楽しいファブリックブランド『LAWN』の活動を始める。テキスタイルとのふれあいや、そこから物語を想像することといった親と子の豊かな関係性への想いのもと、製作している。8歳、6歳、4歳の3児の母。

https://www.instagram.com/lawn_by/

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