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クリエイターインタビュー後編|大江絵美(ファブリックブランド「LAWN」主宰)

CREATOR INTERVIEW クリエイターインタビュー

誰かのために、というまなざしから生まれてくるもの

2018年、生まれ育った東京を離れ、家族とともに仙台へ。学校や住宅が見渡せるアトリエの壁には、3人の子どもたちが描いたのびのびとした絵。作品のパッケージやオリジナルテキスタイルの制作をパートナーの大江ようさんが担当したりと、家族5人がいて、日々の生活があるからこそ生まれる「LAWN」のものづくりがあります。

ー現在は仙台にお住まいですが、家族で東京から仙台に移られたのにはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

仙台に来たのは2018年。次の4月で3年目になります。当時、夫もアパレルの会社で働いていましたが、元々は衣服造形家の先生に師事していて、つくることが大好きな人。衣服だけれどいわゆるアパレルではなく、もっと違う表現をしたいと思っていました。お互いにやりたいことが出てきたとき、仕事を辞めて新しいことに挑戦するには東京だとコストがかかり過ぎるし、私も子育てでいっぱいいっぱいで。
当時は仕事をしていなかったので、東京にいたころは保育園にも入れませんでした。色々な条件を考えたとき、夫が仙台出身でこっちに義理の母がいること、夫の実家を使えるということ、あと夫が会社員を辞めて在宅で仕事ができれば一緒に子育てができるし、お互いにやりたいこともやれるのかなと。そういう働き方もいいんじゃないって。東京で家賃を払い続けるよりも、少し視点を変えて、もっとゆったりと生活してみてもいいんじゃないかと思ったんです。

でも、最初はかなり戸惑いました。"スタニギー"の制作ひとつでそんなにやっていけるとも思わなかったし。そんなふうにうだうだする私の姿を見て、夫が半ば強引に展示をしないかと提案してくれて(笑)。仙台に移住する直前に吉祥寺の「イイダ傘店」ではじめて展覧会をひらいたんです。そこではじめてお客さんに商品を手にとってもらい、オーダーをいただくということをやりました。それまで趣味に近かったものが、仕事としてちゃんとかたちになった。仙台に移住することは決まっていたけれどくすぶっていた気持ちが、その展示をしたことで「いいかも、できるかも」と思えたんです。こういう働き方をしていきたいなと思い、すっきりとした気持ちで仙台に来ることができました。

ー背中を押してくれた展覧会だったんですね。ご出身は東京ですが、家族5人での仙台暮らしはいかがですか。

生まれは神奈川で、高校からは東京でずっと暮らしてきたので、生きてきた環境や親元から離れることは少しつらかったですね。親もきっと孫に会いたい盛りというか、かわいい時期だと思うので。でも、新幹線に乗れば1時間半で着くし、仙台と東京は意外と近く感じます。アトリエにもこんなふうにぐしゃぐしゃと布を置いていますが、コロナ禍になる前は生地の買い付けなどでよく行っていました。

東京にいた頃は夫の帰りも遅くひとりで家事をすることも多かったんですが、仙台に来てから子育てのかたちも変わりました。朝はどっちかが幼稚園に送って行き、夕飯もみんなで一緒に食べる。子どもたちの成長を一緒に喜べるのが、本当によかったなって思います。あとは義理の母が近くに住んでいるので忙しい時間に子どもたちと遊んでくれたり、自分ひとりじゃないと思える子育てができているのはありがたいですね。時々、みんなでキャンプに行ったりもします。仙台は公園も多くて、暮らしやすいです。空いているし、人口密度も低い。2年前、あのタイミングで仙台に来ていてよかったねという話はよくしています。

ーウィズ・コロナの日常がやって来て、制作環境や発表の場にはどのような変化がありましたか?イベントの開催も制限されるなか、皆さんどう活動されているのかなと気になっていました。

作品は手縫いが多いので量産することが難しく、一つつくるのに結構な時間がかかるんです。大量生産ができないので、参加できるイベント数も限られてしまう。元々、委託販売が多く、以前から直接お客さんとコミュニケーションして販売する機会は少なかったんですが、それでもコロナの影響で即売イベントが中止になったりという変化はありました。ウェブメディア「ほぼ日刊イトイ新聞」の即売展示会『生活のたのしみ展』もその一つで、それに向けて年明けから今まで作ったことのない量の作品をつくっていたんです。コロナの影響もあって開催が保留になり、結果ウェブ上で開催できることになったのでよかったのですが、このような状況のなかどんなふうに作品を届けたらいいんだろう、どうやって知ってもらったらいいんだろうということは常に考えますね。今はオンラインショップの制作にも取り組んでいるので、またご紹介できたらいいなと思います。

でも、やっぱり直接作品に出会ってもらいたいなという気持ちはあるので、状況に合わせて工夫をしつつ、そういった場をつくっていけたらとも思っています。どうやったらもっと仙台の皆さんに知ってもらえるかなというのも、今、試行錯誤しているところです。

ー今後、やってみたい活動はありますか。

今後は作品をつくるだけでなく、カタログやビジュアルなど、作品の魅力に触れられるメディアも充実させていきたいと思っています。これは昨年つくったカタログです。こんなふうにカードになっていて、"ほっこり"という印象だけでなく、商品の背景にあるストーリーや想いが伝わるようデザインや文章も工夫しています。そういうものをひっくるめた「LAWN」の活動をもっと皆さんに知ってもらいたい。仙台でも展示会をやりたいなと思っています。

あとは、皆さんやっぱり自分の手でつくってあげたいと思うみたいで、ワークショップをやって欲しいという声もいただきます。コロナもあって落ち着いてしまっていたけど、来年は再開したいですね。塩釜の杉村惇美術館で開催された「暮らしの市」では、お父さんも来てくれました。子どもと一緒に上手に縫ってくれて。あとはおばあちゃん世代の方が孫のためにつくってくれたりとか。

ーそうか、みんな誰かのためにつくっているんですね。

誰かのために、という想いから生まれるものがあるんだと思います。

ー仙台でこうした活動をしてみたいと考えている方もいると思います。クリエイティブ分野に興味を持つ若い世代に、大江さんの活動を通してお伝えしたいことはありますか。

私はまだそんなに知名度もないし、毎日自信をなくしている日々です。違う作家さんの作品を見ては「あっ、かわいいな…」「私のが横に並んでいて大丈夫かな」って比べては落ち込んで。でも、何人かでも自分の活動を気に入って喜んでくれたり応援してくれているのであれば、それは突き進んでいいことなんじゃないかと思います。発表することって怖いですよね。今でこそ少し自信が持ててきたけど、最初やったときなんて手足が震えまくって夫に当たりまくりました(笑)。「人なんか来てくれるの?」って。そんなとき夫が「(お客さんが) 来なかったら来なかったで何が悪いの?」って言ってくれて。来なくったって別にいいじゃん、つくったものを並べて写真撮って紹介して、次に繋げられればって。そうだなと納得しました。見てもらえなかったら恥ずかしいとかそういう気持ち以前に、もっと先を見て、はじめの一歩は奮い立たせるしかないんだなって。

ー 一歩踏み出す勇気が出ないこともあるけど、実はみんなそうなのかも知れないですね。

そのときは手応えを感じなくて辛い気持ちになったとしても、何ヶ月か経って当時の写真を見返すと「自分がんばったじゃん」って思えたりする。改善点も見えてきたり。やってみないと、どう進んだらいいかもわからない。まずは一回ぽんって前に踏み出してみて、みんなに見てもらうことも大事なのかなって思います。

取材日:令和2年10月8日

取材・構成:鈴木淑子
撮影:小泉俊幸

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大江絵美(おおえ・えみ)

神奈川県出身。桑沢デザイン研究所卒業後、アパレルで勤務。2018年、家族で仙台に移住したことをきっかけに本格的ににぎって楽しいファブリックブランド『LAWN』の活動を始める。テキスタイルとのふれあいや、そこから物語を想像することといった親と子の豊かな関係性への想いのもと、製作している。8歳、6歳、4歳の3児の母。

https://www.instagram.com/lawn_by/

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