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クリエイターインタビュー|平間 博之さん(後編)

「Leather Lab.hi-hi」で革の鞄や小物などの制作・販売をしている平間 博之(ひらま ひろゆき)さん。「自分はつくらせてもらっている」という平間さんの、鞄づくりを始めたきっかけや転職、イタリア留学でのたくさんの人との出会いについて、そして「自分だからこそできる形を追求したい」というものづくりへの思いを伺いました。

 

―帰国してからはどうされたのですか。

しばらくは家のことなどをしていました。少し落ち着いてから、留学前に声をかけてもらっていた母校の大学で、助手として働き始めました。少しずつ道具を揃え、また手を動かし始めました。

―徐々に鞄づくりを再開されたのですね。

イタリアでの経験もそうですし、帰国後も、つながりのある職人さんから道具などの支援をいただいて、その中で「自分はつくらせてもらっているんだな」と思い始めたんです。会社を辞めた時も、震災があった時も、本当はつくれない状況になっていたし、つくらなくてもいい状況だったと思うんです。でも、何か縁があって、つくってみようと思うきっかけをいただいたのだから、しっかりやっていかないとなと思いました。それまで「hi-hi」という名前で鞄づくりをしていたのですが、再スタートの思いを込めて「Leather Lab. hi-hi」という名前で再開しました。

―大学の仕事が終わってから作業をされるのですか。

そうですね。平日は、夜自宅に帰ってから12時くらいまでが作業時間です。休日はやれるだけやるという感じです。自宅脇にアトリエをつくって仕事場にしているので、気持ちをうまく切り替えています。

平間さん自身も制作に加わり完成したアトリエ

―個人の方からのオーダーの他にはどういったところで販売されるのですか。

今は、イベントでの販売(*)、あとは少しですが小売店にも卸しています。イベントだと、毎年秋にサンモール一番町という商店街で開催されている『杜の都のクラフトフェア』にも出させていただいていますし、お店だと、せんだいメディアテークにあるカネイリさんや陸前落合にあるアパレルのお店の温手さんで小物などを取り扱っていただいています。

―鞄以外のものもつくられているんですね。

メインは鞄の他、財布やコースター、キーホルダーといった小物類ですが、大学で働くようになってから、そこで出会った革以外の作家さんとコラボして、家具や照明をつくることにも挑戦しています。数年前には、木工作家さんと一緒にスツールをつくりました。

―家具もつくることができるのですか。

私は家具をつくった経験はないので、椅子の革張り技術は持ってないんです。そこで、「鞄屋が椅子をつくるならどうつくるか」と考えて、手縫いで鞄や小物をつくってきた技術を使ってやってみることにしたんです。座面を豆の形にしたかったので、曲面がきれいに出せる方法を考えて、最終的にベースボールステッチという野球ボールと同じ縫い方を使って座面をつくりました。スツールの足の部分は木工作家さんがつくるので、工程ごとに2人の間を何度も行き来させて完成しました。

座面が豆の形をした「mame stool」(木のしごと 樹々 × Leather Lab. hi-hi)

―鞄づくりの技術の応用や他の作家さんとの連携で、新しいことに挑戦しているんですね。

以前は、一から十までを自分でやりたいと思っていたのですが、他の作家さんとつながることでできなかったことができるようになって、可能性が広がるということをすごく実感したんです。今はやり方を絞らず、生活の中であったら便利だなというものや暮らしを彩るようなものを自分なりの方法でつくっていけたらいいなと思っています。

―それでも、つくりたくても技術的につくれないということもあるのですか。

基本的に、つくれないものはないと思っているんです。スツールの話と同じで、セオリーどおりにつくろうとしたら、技術的に勉強しないとできないことはあるかもしれないです。でも、そのやり方ではなくても、自分だからできる発想や、その技術を知らないからこそ工夫して生まれる方法があるんじゃないかと思っていて。「普通はこんなつくり方しないよ」と鼻で笑われるかもしれないんですけど、それがかえっておもしろくなることもある。正解があったとしても、不正解はないのかなと思ってやっています。

―フルオーダーの場合も、その考えでつくられるのですか。

そうですね。お客さまが欲しいと思っているイメージに近づけつつ、そこにどれだけ自分の色があらわれるのかという差し引きを意識しています。

なぜ自分がつくることを続けているのかと考えると、やっぱり自分の手から生まれる形を追求したいというのがあるからなんです。なので、その点はオーダーの難しいところではあるのですが、自分だからこそできる、使う人が生きる形というのを考えながらつくっています。

―やり方を決め打ちせず、自分なりに考えて、やりながらまた考えるという方法もまた、平間さんならではですね。

屋号の「Leather Lab. hi-hi」も、実験的なことから生まれるものづくりをしていきたいという思いがあって「Lab.」とつけているんです。試して、失敗して、でも楽しみながら自分がいいと思えるものをつくっていきたいですね。

―今後の目標はありますか。

Lab.という意味では、これからの展望というのも大きくは持っていないんです。今は、少しずつ規模の大きなイベントに出ていきたいなとか、展示会をやりたいなという目の前の目標はあるので、それをひとつひとつ試して、吸収していきたいと思っています。そこから、よりいいものがつくれたり、自分の作品を多くの方に知っていただける結果につなげていけたらと思います。

―最後に、クリエイティブ分野で働きたい方へのメッセージをお願いします。

今はネット環境が充実していて情報を得たり発信できる機会がすごく増えているので、やりたいことがあったら、どんな人でも挑戦できる環境だと思うんです。だから、つくってみたい、売ってみたいと思ったら、まずしっかりつくってみて、発信してみるといいんじゃないかなと思います。そこですぐに反応も見られるし、それをフィードバックしてまた試すこともできる。だから、思い切ってやってみるということが大事ですね。ただ、ネットで何でもできてしまうからこそ、そこで完結してしまわずに、自分から外に出て、人に会う、人に直接見せるということもやってほしいです。ネットだけでは見えないものや、知り得ないものとたくさん出会えると思います。

取材日:平成30年8月27日
聞き手:仙台市地域産業支援課

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平間 博之

宮城県岩沼市出身

東北工業大学工学部デザイン工学科在学中に革を用いた鞄・小物の制作を始める。

卒業後、2011年にイタリア・フィレンツェへ短期留学し鞄の製造を学ぶ。

帰国後、「Leather Lab. hi-hi」として革の鞄・小物を中心とした制作・販売を始める。

展示会やイベント出展等を行いながら、鞄や財布等のセミオーダーの受注生産も行っている。

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