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クリエイターインタビュー後編|宮本一輝(俳優・ワークショップファシリテーター)

CREATOR INTERVIEW クリエイターインタビュー

本当にやりたいことだったらやれば良いし、自分の状況・生き方に合っている方法で演劇と向き合えば良いんじゃないかな。

「舞台から降りたら気軽に頼ってもらえる、地元にいる身近なプロになれたら」と話す俳優の宮本一輝さん。後編では自身が立ち上げた団体での活動について伺いながら、仙台で若手俳優が不足している現状や、今後演劇を長く続けていきたい若い世代へのアドバイス・メッセージなどをお聞きしました。

― 俳優として演劇公演を行う活動とワークショップなどで演劇を伝えていく活動に取り組まれているとお伺いしましたが、宮本さんとしてはどちらに重きを置いている感覚がありますか。

もちろん両方取り組んではいるのですが、「重き」という観点ではごく僅差ですが自分たちで発信したり演じたりする前者だと思います。演劇に携わるものとしてやっぱり自分自身も演劇を楽しみたいですからね。

余談ですが、劇団では俳優としてだけではなく「この物事についてどのような切り口で考える?どのように表現する?」という力が試されます。そういった作品創作の思考方法は企画考案やワークショップにも活きるので、俳優としての活動に重きを置いてはいるものの、創造することが好きなので「どちらが好きか」と聞かれると選べないというのが本音です。

ー 仙台シアターラボにて活動する一方で、2019年12月にはご自身で任意団体「ArrowDirection」も設立されていますが、設立のきっかけや想いなどを教えてください。

仕事で学校などの教育機関へ足を運ぶことが多いのですが「こういう機会も大切だけど、まずは受験勉強や就職活動の方が大事だ」という学校もあります。おそらく、現在の日本の教育現場ではこの考えが一般的です。自分の周りでも日常的に美術館や劇場など、文化・芸術振興の拠点へ足を運ぶ方は少ないと思います。

しかしながら、我々を頼ってくれる施設の方々は文化芸術体験の大切さをそれぞれの施設で重んじてくれていますし、我々自身も演劇に助けられて、活動を続けていけている側面もあります。そしてそんな素晴らしい場所が気軽に足を運べる距離にあることにありがたみを感じています。

そこで「社会の中で芸術は身近な存在だと伝えていきたい」と考え、団体を立ち上げて活動を開始しました。

この分野に興味関心が無い方も最初は視界の端に入るところからで良いので、まずは芸術と出会ってくれたらいいなと。芸術という分野が社会ともっと接点をつくっていくために、人と芸術との出会い方のレパートリーを増やせていけたらと思います。

ー ArrowDirectionでの具体的な取り組みなどを教えていただけますか。

直近だと、2020年8〜9月にオンライン演劇サマースクールを開催しました。プロの俳優・演出家3名による授業(全18コマ)を、自身の都合に合わせて入退室自由で受講できるシステムのオンラインワークショップです。

新型コロナウイルス感染症の影響により、経済的な問題や思うように稽古・活動ができないことが原因で演劇を諦めかけている方の手助けをしたいと考えたのが開催のきっかけです。

ArrowDirectionのミッションではないのですが、このままだと将来の文化芸術の担い手不足が加速していくと感じたからです。

このオンラインワークショップでは参加費1,000円という気軽さで、困っている方々が気負いせずに充実したプログラムを受講できるよう奔走しました。参加者は総勢30名ほどで、県外からも多数の参加があったため、参加者同士の交流にも繋がったのではないかと思います。中でも、高校生〜大学生の参加が目立ちました。

「今の情勢下でどのように演劇に向き合って良いかわからずに悩んでいた。しかし、このサマースクールの参加を通して公演や稽古ができない時の訓練方法を知ることができ、道が開けた!」との声も多くいただいて好評でしたし、今後も開講していきたいですね。

ー 情勢を踏まえた上で、演劇を続けていく手助けとして開催したのですね。
宮本さんは所属されている2団体それぞれで若い世代向けのワークショップ開催に取り組まれていますが、現在仙台市内で演劇に積極的に取り組んでいる若手はどのくらいいらっしゃるのですか。

仙台シアターラボの中で言えば、団員6人のうち自分を含む5人が20代のため、若手がたくさんいるように見えるかもしれないのですが、仙台市内全体で見ると若手世代はかなり少ないと感じています。特に20歳前後くらいだと、自分も含め知名度や技術に関しては成長過程の方がほとんどです。

ー 若い世代の担い手不足で、実際に起きている問題はありますか。

現在はオーディションで募集をかけると、1つの公演につき3〜4名は応募してくださいます。しかし、今のところ担い手そのものは足りているものの、やはり若手は少ない印象です。俳優不足は作品多様性の低下へ繋がります。新しい風としてニューフェイスを歓迎したいけれど、オーディションで募集をかけても固定的な顔ぶれになってしまうことがもったいない。若い世代の担い手不足はそこに影響してくると考えています。そんなことから高校の演劇部など、若手の声や要望を拾っていけるように注力しています。

ー なるほど。現在は部活動・サークルなどで演劇に取り組んでいるけれど「これから本格的にやってみたい」と考えている若い世代は多いのでしょうか?

高校生に関しては、結構いるように思います。たとえば仙台シアターラボで昨年開催した「演劇部のためのオンライン身体訓練」には県内の高校・12校が集まっていましたし、上昇志向の高校生が多くいるんだと感じました。

ー そう考えると、大学進学や就職のタイミングで演劇の優先度が低くなっているような感じでしょうか。

そうですね。演劇一本でやっていく厳しさを考慮し、結果的に他の興味分野を本職にしていくことを選ぶ学生がほとんどのようです。実際、他の分野でバリバリ仕事をしながら演劇にもたっぷり時間をかけて取り組んでいる…という方は少ない印象です。

若い世代に向けた演劇関係のワークショップを開催していると「学校を卒業し、社会に出てからも演劇を続けていきたいけれど、進路をどうしたらいいだろうか」と悩んでいる声も多く見受けられます。そういった相談に関して、僕は「演劇に対する業界や経済的な厳しさ、アーティストに対する社会からの偏見と向き合うことそのものは個人でどうかなることは少数。本当にやりたいことだったらやれば良いし、自分の状況・生き方に合っている方法で演劇と向き合えば良いんじゃないかな。プロを目指すことだけが演劇ではないし」と答えています。

僕自身も、みなさんが想像しているような俳優のプロではないですよ(笑)。しかしながら、舞台から降りたら気軽に頼ってもらえる『地元にいる身近なプロ・専門家』になれたらと思って、日々活動しています。全国区・最前線で活躍している俳優が、突然地方の高校にやってきて演劇の指導をしてくれたり、進路相談を聞いてくれたりすることって、ほとんど無いでしょうし。観客や子どもたちと近い距離間で関わっていきたいと思っています。

ー 最後に今後、仙台の演劇シーンやクリエイティブシーンを担っていく次世代へのアドバイスやメッセージをお願いします。

自戒の意味も込めてですが、自分がおもしろいと思えることを突き詰めていくことは必要だと感じています。具体的には、たくさんのものを見て、多様な生理感覚(=心のざわつき)の原因を探る、細分化していくこと。かっこいい!と一口で言っても「なぜかっこいいと感じた?果たして本当にこれはかっこいいのだろうか?」と疑い、自分の頭で考えて感覚を磨いていくことが大切だと思います。

僕も余裕がある日は朝の5:00に起床して、20:00くらいまで読書や映像を観てインプットする時間に充てています。この分野において、自ら切り開いていく部分は大きいですし、常にアップグレードしていく意識は大切です。

(上)宮本さんがインプットのために読んでいる書籍の一部。

自分が面白いとも思っていないことをやっていると虚しくなっていきますし、やりたい方向に合わせてクリエイションしていくことが重要なポイントのひとつだと思います。

事業者目線でいうと、芸術分野で収入を得るためには「この活動を続けながら生活を送るためには?」と常に考えていくことがマストです。活動そのもので稼ぐのか、他の面でも稼いでいくのかなど、芸術を仕事にしていく術を模索できないと活動をやめる選択肢しかなくなってしまいます。

そして、最後に繰り返しになりますが、芸術分野は社会と接点を持つことが大切です。芸術のみならず、クリエイティブに関わるときは常にそうあるべきだと考えています。演劇・芸術が一部の界隈だけで盛り上がっているものにしない意識を大切にしていきたいです。

取材日:令和3年6月29日

取材・構成:昆野 沙耶(恐山 らむね)
撮影:小泉俊幸
取材協力:仙台シアターラボ

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宮本一輝(みやもと・いつき)

宮城県仙台市出身。俳優。

 2018年6月「仙台シアターラボ」と福島の劇団「シア・トリエ」の合同公演Fukusima Meets Miyagi Folklore Project【SAKURA NO  SONO】に出演後「仙台シアターラボ」と「構成演劇」に魅了され、仙台シアターラボに入団後も、エリアを問わず俳優活動や演出活動、演劇手法を用いたワークショップ開催を行う。
2020年より企画団体「Arrow Direction」を設立し、芸術の新たな形を創作していく。

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