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クリエイターインタビュー前編|宮本一輝(俳優・ワークショップファシリテーター)

CREATOR INTERVIEW クリエイターインタビュー

一般的な俳優像よりも『つくる』『教える』など、アーティスティックな側面が強いかもしれません

俳優として舞台で演じるだけではなく、「つくる」「教える」「社会とつながる」要素を大切に活動している宮本一輝さん。インタビュー前編では、宮本さんが演劇の世界へ飛び込んだきっかけや、どのような想いで普段の活動に取り組んでいるか、伺いました。

― 普段の取り組みについて教えてください。

2019年に自身で立ち上げた任意団体のArrowDirectionと2018年から所属している劇団の仙台シアターラボの双方で活動しています。

(上)方丈の海2021プロジェクト 『方丈の海』仙台公演

双方の活動で共通して言えることですが、一般的な俳優像よりも『つくる』『教える』など、アーティスティックな側面が強いかもしれません。

私が立ち上げた団体のArrowDirectionは多様化していく社会課題の解決や教育・福祉・医療・環境・観光・産業などの他分野で文化芸術の役割を開拓していくための団体です。

芸術そのものが社会に開けていけるような文化的接点の創出を目的に、ワークショップを中心とした活動に取り組んでいます。

演劇だけではなく、音楽や舞踊など芸術分野を幅広くカバーしたいという想いで立ち上げたものの、現在は運営体制も手探りのため、今後は幅広く芸術分野をカバーしていけたらと考えています。

仙台シアターラボはいわゆる劇団としての主催公演事業のほかに、ワークショップなどの教育普及事業を通した社会とつながるきっかけづくりにも取り組んでいます。

ワークショップでは、未就学児・小学生向けの運動遊びから高校生向けの身体訓練(トレーニング)まで対象年齢によってプログラムを分けており、多様な世代に演劇というものに触れていただくことを目的としています。

とはいえ、2020年上半期は新型コロナウイルス感染症の影響により、しばらく公演や事業を行うことがままならない状況でした。屋内の稽古場ではなく河原で稽古をしたり、ワークショップもオンラインでの開催になったりと、情勢に合わせた柔軟な対応が必要で、情報の波に右往左往しておりました。

仙台シアターラボの定期的な取り組みのひとつとして、福島県を拠点に活動する劇団シア・トリエとの合同公演「Fukushima Meets Miyagi Folklore Project」というプロジェクトがあります。2018年6月から始まったプロジェクトで、これまでに「SAKURA NO SONO」「みちわたる」「BABEL」という3本の作品を上演してきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で新作公演は中止になりました。

2020年9月にやっとの想いでTRIAL公演が実現し、演劇を再始動できたことで自分が演劇と向き合っていることの意義や、演劇を待っていただいたお客様の気持ちを改めて考えさせられました。

この2020年9月から上演していた4作目の演目はアルヴェール・カミュの代表作『ペスト』。9月のTRIAL公演・12月の本公演を重ねながらブラッシュアップし、2021年6月には東京でもこの演目で公演を行うことができました。

(上)『ペスト』で使用した衣装。

ー 演劇を軸に多様な活動に取り組まれているのですね。しかし、日常生活が全く想像できないのですが、普段はどのようなスケジュール感で動いているのですか?

シアターラボでは年2回の公演があるため、その公演に合わせて稽古や準備を進めつつ、その合間に他の仕事やワークショップを開催しているような感じです。

普段は週2日、17:00~22:00まで稽古があり、公演の本番が近づくにつれて稽古の時間が増え、直前になると週5日ペースで朝から晩まで稽古に励む…というのが慣例となっています。

ー 公演以外のお仕事というのはどのような取り組みか、詳しく教えてください。

たとえば、俳優としては株式会社ライセンスアカデミーの事業で近隣の高校生などの進路指導、講演会を行っています。俳優という立場だけではなく、個人事業主としての目線も併せて高校生の率直な進路の質問などに答えています。

また、毎年10月に秋保の杜 佐々木美術館&人形館が主催するイベント『夜の美術館』では仙台シアターラボとしては主催の公演とは異なる演目を上演し、個人としてはイベントの運営制作面や会場のライティングもバックアップさせていただいています。

そのほかにも人々を無知・無関心から守る絵本のヒーローをコンセプトとした『輝望閃詩ダクシオン』というヒーローコンテンツの製作にも力を入れております。ダクシオンプロジェクトという団体で、コンテンツ開発や技術ワーク面・脚本演出などをやらせていただいています。

また、仙台シアターラボでは文化庁芸術家派遣事業として幼稚園や小学校など多数の施設を回って巡回公演+ワークショップの開催も行ってきました。

絵本に登場するキャラクターの真似っ子遊びを通して気持ちや言葉を考える『絵本の中にはいってみよう』や、忍者のお師匠さま&弟子という設定で、体を動かすことの楽しさを伝える運動遊び『にんじゃになるんじゃ』、絵本の「桃太郎」を題材に劣等感に苛まれる中学生の葛藤を描いた『LIVEももたろう』の上演など、演劇のエッセンスを活かして創造性を育むプログラムを実践しています。

ー 未就学児から小学生を対象にしたワークショップで大切にしていたことはありますか。

この年代を対象にしたワークショップに関しては、正解不正解の概念にとらわれず、個々の表現を尊重していくことを大切にしていました。ちょっとした癖や動きが子供達の創造性やアーティスト性、ひいては個性だと思っています。
ちょっぴり不思議な表現でも、俳優として共演しながら「君の動きや考えは、こういうところが面白いよね」と肯定的に声がけしていました。

高校生向けのワークショップでは発声トレーニングなど演劇に直結していく身体訓練を教えていますが、それとはまた色が違う感じです。

ー 宮本さんご自身が、演劇・芸術へ関心を持ったきっかけ・エピソードはありますか。

高校生の頃、学校の芸術鑑賞会で能や芝居を鑑賞する機会があったのが大きいと思います。特に、能へ興味関心を持ったのですが、大学受験の兼ね合いですぐに何かを始めることはできませんでした。その後、仙台市内の大学へ進学し「学生生活を送りながら演劇にチャレンジしてみよう」と思い、19歳でこの世界へ飛び込みました。

ー 演劇サークルなどに入部されたのですか。

いえ、そういったものは全く。学外での活動に重きを置いていました。アンサンブル(エキストラ)などの端役で出演させていただいたのですが、どうしても役を演じたく、2017年12月には自ら公演を企画したりしていました。

ー 自分で公演を企画するというと?

芝居を演じるだけではなく、公演そのものをつくる、ということです。練習用の場所は以前所属していた事務所やせんだい演劇工房10-BOXの協力で貸していただき、講師の先生としてお世話になっているA Ladybird Theater Companyの箱崎さんに芝居の演出・脚本をお願いして実現しました。出演以外の会場とのやりとり・音響照明・舞台美術・会計業務など…ほとんどの役割を担当しました。しかし、活動を始めて間もない時期ということもあり、右も左もわからずかなり苦労しました。

ー 費用面は、助成金制度など活用されたのですか?

いえ。19歳でしたし、文化・芸術系の助成金制度も頭になく、チケット販売(入場料)で費用面は賄おうと…(笑)。

ー パッション溢れるエピソードですね!これらの経験を経て、劇団への入団や団体設立へ繋がっていったということですか。

そうですね。2018年2月に仙台シアターラボと福島の劇団シア・トリエとの合同公演『Fukushima Meets Miyagi Folklore Project』 第一回公演のキャストを募るオーディションを受けて出演したのが、仙台シアターラボと大きく関わるようになったきっかけだと思います。

ちなみに、仙台シアターラボの公演は1人で何役も演じ、さまざまなシーンの重なり合いをコラージュして、アート作品を見た時の生理的な感覚をお客様に体験していただく構成になっています。一般的に想像される1人1役・セリフの掛け合いがメインでストーリーが進んでいく芝居・ミュージカルとは違って、コラージュアートのようなので『コラージュ演劇』と呼んでいます。それが衝撃的でした。

そして、その公演が終わったすぐ後に仙台シアターラボの劇団員オーディションを受け、入団したのは2018年7月。当時、仙台シアターラボは代表・野々下さんが実質1人で運営されていたのですが、僕を含めて2人入団したことで、3人体制のチームとなりました。現在は仙台シアターラボの劇団員は6人まで増えましたが、2020年3月まではこの3人で活動していました。

ー 何事も経験を活かしたチャレンジの連続で、次のステージへ進まれているように感じます。今後、チャレンジしてみたいことはありますか?

展望としては、将来ArrowDirectionを法人化して、文化芸術による課題解決のためのプラットホームを作りたいと思っています。

また、あくまで演劇の素養のひとつとしてですが、この世界に関心を持つきっかけとなった能にはいずれチャレンジしてみたいと思っています。あとは、古武術!仙台シアターラボのOBに古武術を心得ている方がいらっしゃるため、独特の身体操作に興味があります。

あとはそうですね…最近、けん玉に触れる機会があったのですが、身体感覚がシビアで、自分が取り組んでいる演劇と近い感覚があったため、今後もっとやってみたいと思えました!

取材日:令和3年6月29日

取材・構成:昆野 沙耶(恐山 らむね)
撮影:小泉俊幸
取材協力:仙台シアターラボ

前編 > 後編

宮本一輝(みやもと・いつき)

宮城県仙台市出身。俳優。

 2018年6月「仙台シアターラボ」と福島の劇団「シア・トリエ」の合同公演Fukusima Meets Miyagi Folklore Project【SAKURA NO  SONO】に出演後「仙台シアターラボ」と「構成演劇」に魅了され、仙台シアターラボに入団後も、エリアを問わず俳優活動や演出活動、演劇手法を用いたワークショップ開催を行う。
2020年より企画団体「Arrow Direction」を設立し、芸術の新たな形を創作していく。

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