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クリエイターインタビュー前編|坂部 認(パフォーマー・マネージャー)

CREATOR INTERVIEW クリエイターインタビュー

本来守られるべき「人としての在り方」を尊重したい

タイ舞踊や合気道を取り入れた大道芸を得意とする『ぼたもち堂』パフォーマーの坂部認さんは、自身の表現活動を続けながら障害福祉事業にも携わり、支援先と社会をアートで繋ぐ企画コーディネートやアートマネージメント業務を行なっています。坂部さんは、どの時代でも守られるべき「人としての在り方」を自らつくり出すことができない様々な人や子どもたちと対等な表現者の視点を大切にしていました。

― 坂部さんご無沙汰しております!5年ぶりくらいですかね(笑)。その節は大変お世話になりました。

NPO法人多夢多夢舎 中山工房(以下、多夢多夢舎)』が石巻でパフォーマンスイベントをしたとき以来ですね。こちらこそ、会場装飾などお世話になりました。

― 現在はどんな活動をされていますか?

幼稚園や児童館で大道芸などのワークショップを開催し、学校教育以外の環境で子どもの育成に関わる仕事やアーティストを支えるマネジメントをやりたいと思い、2013年に明才さん(木版画家)とのユニット『ボタルヤ』でマネジメント業務もはじました。これまで東北・宮城の地域に根差す「食、文化、表現」を地元企業様たちとパッケージデザインや福祉事業所製品でコラボレーションしていきました。

私自身もジャグリングのパフォーマンス活動も続けながら、他の福祉団体でも表現活動の支援を続けています。

ー 明才さんとは公私ともに、本当に素敵なパートナーですね。

ありがとうございます(笑)。明才さんとは齋さん(宮城県美術館 元教育普及部長)のところに、お茶を飲み行っていたことがきっかけで知り合ったので、婚姻届には齋さんに証人のサインしてもらいました。「巨大な生き物図鑑の上で書いたから忘れない」と言われたのが印象に残っていますね。

ー 明才さんの展示が7月中、開催されていましたね。

明才展『ボタルヤのおしごと』が県内3ヶ所を巡回して、「歩く民藝」と評されるボタルヤの集大成となりました。これまでお世話になった方々との仕事を紹介する内容になっていたので、お客様に楽しんでいただくだけではなく

会場では木版画で制作した商品をはじめ、おみくじやお札なども販売していたので、明才さんが在廊のときはお客様に作品やお札の意味について説明してもらえるように促したり、レジ担当に徹していました。

ここ数年でパッケージ・手ぬぐい・半纏・御朱印・そして舞台衣装に至るまで制作で携わらせていただき、その度にたくさんの方との出会いがあったので活動の幅が広がりましたね。

ー 福祉団体ではどのようなお仕事をされていますか。

一つは、『生涯発達支援塾TANE』という団体で「ひとは生涯にわたって発達し続ける」という考え方をもとに「心理、発達、教育、福祉、文化芸術」の領域を横断しながら組織・支援者・個人を繋ぎ、それぞれがともに活動する場づくりや、福祉事業所で企画コーディネートを行なっています。

それと、障害者のアート活動をはじめとした「エイブル・アート・ムーブメント(可能性の芸術運動)」を提唱する「NPO法人エイブル・アート・ジャパン」では、障害のある方をはじめとした芸術活動を支援したり、マネジメント業務を担うこともあります。

ー 福祉事業に携わろうと思ったのはなぜですか?

宮城教育大学在学中に特別支援教育を専攻したことがきっかけです。中高生向けの特別支援学校へ実習に伺ったとき、彼らが持つ得意不得意や抱えている障害の特性などの「個」が尊重されない取り組みや学習方法に疑問を持ち、一旦この業界からは離れていました。

震災後に知り合いから『多夢多夢舎』を紹介してもらい、通所者の方が伸び伸びと過ごしながら社会と繋がっているところに共感したんです。それぞれが得意なことを仕事に繋げるお手伝いができたらと、支援員として2018年まで働きました。

ー 確かに私たちが子どもの頃に見ていた就労支援は、主体性に重きをおいて活動しているところは少なかったように思います。

そうですね、私も社会の変化の潮目を感じています。世界的祭典のオリンピックとともにパラリンピックが開催されるようになり、その変化は顕著に現れているように思います。また、福祉事業所でハンディーキャップのある人たちの美術活動をコーディネートする中でも考えさせられることもしばしば。

例えば、初めはペンを持つことすらなかった人たちがどんどん創作に集中する姿や出来上がった作品がどれも素晴らしいんです。何が素晴らしいかというと、その作品は何かを誰かに伝えるためでも飾るためでも、売るためでもなく、作者たちが日々を紡いできたことの「一区切り」としての作品であることだと思います。そこに人々が共感し、感動してくれる機会や支援が増えてきました。

ー 坂部さんの活動は多岐に渡りますが、一貫して大切にしていることはありますか?

世間からしたら、落ち着きがないですかね(笑)。

でも私自身、価値観をズラすことなく筋を通しているから、その現場ごとに切り替えながらやれてきている気がします。さすがに、同時に二つのことはできないですけど。こういうことを改めて言葉にするのはなかなか難しいから、その分行動に移しているという感覚でしょうか。

ー なるほど。先に述べられていた特別支援学校での「違和感」に、坂部さんの信念があるように感じます。

芹沢銈介氏と柚木沙弥郎氏を参考に考えた「一人ひとりが、生活の中で『つくること』を大事にする」という言葉があるのですが、様々な活動を通して生活する人の表現を支え、表現する人の生活を支えていけたらと考えています。

以前『普遍的なオーソドックス』という表現をしたことがあるんですが「どの時代でも真ん中にある価値(モノ)みたいなことを大事できるようになったらいいな」と思ったんです。私自身もそうですし、自らそういう環境を作ることができない様々な人たちや子どもたちにも『本来の人としての在り方』を支援活動やパフォーマンスを通して共有していきたいです。

取材日:令和3年6月22日

取材・構成:太田和美
撮影:はま田あつ美
取材協力:せんだい演劇工房10-BOX

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坂部 認(さかべ・みとむ)

「ぼたもち堂」ジャグリングパフォーマー/アートマネージャー

宮城県仙台市出身。32歳。宮城教育大学卒。小学校教諭・特別支援学校教諭免許取得。

タイの舞踊や合気道を取り入れた「踊るジャグリング」が持ち味のパフォーマー。「NPO法人エイブル・アート・ジャパン」東北事務局プロジェクトスタッフ。「生涯発達支援塾TANE」プログラムディレクター。2012〜2018年「NPO法人多夢多夢舎 中山工房」支援員として勤務、現理事。2013年2月木版画家とのユニット「ボタルヤ」でマネージメント業務を開始。

ぼたもち堂 https://botamochidou.tumblr.com

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