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THINK! MAKE! SHARE! -7- プロトタイピングは七転び八起き -ケース&テキスタイル編-

朝日クラフトの廃材「ターポリン」を再利用し、新たな商品開発を行うプロジェクト。FabLab SENDAI - FLATのデジタル工作機を活用した試作から商品開発までの工程を紹介していきます。

大網 前回に引き続き試作を行っていきます。

小野寺 まずは、以前製作した名刺サイズ程度のケースのリデザインから。無地のターポリンをそのまま使用したものは少し味気ないので、生地の表面に自分で書いた絵をプリントしてみることにしました。

 

小野寺 はじめに、画用紙に絵の具で色を塗っていきます。絵の具が乾いたら好きな形にカットして、別の画用紙に貼り付け。

 

小野寺 それをスキャンしてパソコンに画像を取り込み、色の調整などをしてデータの完成!とても簡単です。

 

小野寺 あらかじめケースのかたちにカットした生地をUVプリンタ(紫外線で硬化するインクを用いて、平面素材にプリントが出来るマシン)にセットしたらプリント開始!およそ10分程で加工が完了しました。

 

小野寺 実際に組み立ててみるとこんな感じ。無地のものに比べると可愛いさが一気に上がりました。

 

小野寺 別の絵をプリントしたものがこちら。全面に模様が入るとなかなかの迫力です。

大網 ここでひとつ疑問が。今回は白い生地にフルカラーでプリントをしましたが、他の色の生地を使用した場合、どのような色の見え方になるのでしょうか。

ということで、早速プリントのテストをしてみることに。今回使用した生地は、白、グレー、黄色、オレンジ、黄緑の5色。

 

大網 それぞれ左が1回塗り、右が2回重ね塗りをしたものです。

 

大網 比較してみると、2回塗りのほうが黒塗り箇所が全体的にはっきりとした印象に。他の色については、色の濃さはあまり変わらないものの、塗りの回数を増やすごとに素材の表面がコーティングされて、テクスチャが隠されていきます。素材感を活かしたい場合には、なるべく少ない塗り回数でプリントする必要があるようです。また、2回塗りではインクの盛り上がりが目立つため、黒い文字が若干太く見えるようになりました。ややシャープさに欠ける仕上がりとなったので、細い図柄をプリントするときには、事前に塗り回数による見え方を比較するというテストを行ったほうが良いかもしれません。

 

大網 ちなみにメッシュ状の生地にプリントしたものがこちらです。小さい文字はほとんど読めない状態ですが、大きな柄などをプリントしてみると面白い表現が見つかるかもしれません。

 

大網 それに加えて、白いインクもそれぞれの生地にプリントしてみました。それぞれ上の段が1回塗り、下の段が2回塗りをしたものです。文字については、2回塗りしたもののほうがぷくっと盛り上がっており、ややシャープに見えます。写真のほうは、白い四角をプリントした上に実際の画像をプリントしていますが、こちらについては1回塗りも2回塗りも見え方の違いはほとんどありませんでした。

小野寺 ここまでは、UVプリンタを使用した装飾方法を検討してきましたが、また違った方法も試してみることに。

小野寺 次に使用したのは、簡易的に箔押しをすることのできる「スタンピングリーフ」という箔シート。レーザープリンターなどでプリントした図柄や、特殊な糊の上にシートを重ねてアイロンでプレスをすると、そこに箔が定着するという優れもの。

熱を加えると柔らかくなるというターポリンの特徴を活かして、糊などを使用せずに箔を定着できないかを実験しました。

小野寺 好きなかたちにカットした箔シートをターポリンへのせ、あて布をしてアイロンをかけること約5秒。冷めたら箔シートの表面に付いている透明フィルムを剥がします。

 

小野寺 するとこんな仕上がりに。生地自体に若干凹凸があるためか、箔がのっていない箇所があり、かすれた風合いです。

小野寺 細かくカットした箔シートでも試してみましたが、同様の仕上がりになりました。指でこすってみると、細かい箔がやや付着します。ただ、テープで余計な箔を剥がしとっていくと、指にはほとんど付かなくなりました。最後のひと手間が必要ということと、アイロンを当てすぎてしまうとターポリン自体が溶けてしまうことに注意すれば、装飾方法のひとつとして十分に使えそうです。

 

大網 編みテキスタイルの方も、まずは大きいものを作ってみようということで、ひたすらパーツを切り出して編み続けること丸2日。

大網 本物のニット生地のような見た目になりました。今回は大きなサイズのものを作ってみましたが、伸縮性を考えるとフラットなシートよりも、袋状になっているほうが面白そうだし何かに活用できそうだなという気もします。

製作の手間を考えると、このテキスタイルについては便利なものよりも見た目の面白さを活かしたプロダクトを作るのに向いているのかもしれません。

 

小野寺 また、前回製作したバッグを実際に使って、使用感のテストも行ってみました。

小野寺 カメラやノートなど、約1kgのものを入れて持ち歩くこと2日間。白い生地を使用していることもあり、擦れたような汚れが付いてしまっています。

 

小野寺 持ち手の上の部分も、力がかかっていたいたために少し伸びてしまいました。ただ、さすが強度がウリのターポリンというだけあって破損箇所は無く、本体とパーツの接合部もしっかりくっついたままでした。

大網 元々、物をガサッとラフに入れておけるバッグを想定していたので、使用する生地の色を考慮すれば汚れ問題は解決できそうです。持ち手部分については、持ったときの手への食い込みについてしか検討を行っていなかったので、形状そのものをもう一度見直したいと思います。

 

小野寺 なんとかかたちになってきたので、次はそろそろユーザーテストや販売を行なってみたいところ。ただ、私たちは商品の開発や販売については完全に素人。どんなことをどのように決めなければいけないのか、全く検討がつきません。

大網 次回は専門家の元へお邪魔し、実際にお客様の手に届けるために必要な決まりごとや準備について伺いたいと思います!

FabLab SENDAI ‒ FLAT

FabLab SENDAI ‒ FLAT は、個人や小規模チームによるものづくりの実験の場であり、実践の場です。レーザーカッターや3D プリンターなどデジタルデータを利用する加工機械を使い、スピーディーかつ低コストなトライ&エラーを通して、自分のアイデアを形にしていくことが可能です。
また、集まった人同士で情報交換や協力をし合ったり、日本や世界に広がるFabLab ネットワークを通じた世界中の人たちとの交流の中からアイデアが立ち上がるような、新しい形の工房です。

FabLab SENDAI ‒ FLAT で機材を利用するためには、機材ごとに初回講習を受講していただく 必要があります。初回講習や見学会などは、下記よりスケジュールをご確認ください。 http://fablabsendai-flat.com/facilities/

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