SC3ウェブサイト 仙台市

私と「涼」

ワタシト

仙台で活動するクリエイターとSC3編集部のライター陣が、毎月のテーマに沿って作品を発表する「ワタシト」。
そのテーマとのつながりを語りながら、写真やイラストと組み合わせ、一つの作品として発表します。
自分はそれについて、どんな印象をこれまで抱いてきたのか。
自分の人生にとって、一体どんな影響をもたらしているのか。
書き留めたエッセイとともに、クリエイターたちの「個性」を覗ける企画です。(月1回更新)

幼い頃、夏の終わりのとうもろこし畑で風をつかまえることが好きだった。
祖父がつくった畑の小さな一角に、家族で食べる分だけ育てている。
その風はいつも同じ方角から吹いてきて、少しだけしっとり。風と一緒に「何か」がやってくる気配に心踊り、背丈より高く伸びた茎のその一本を握ったまま、吹く方向から目を離すことができなかった。
びゅう、と言いながら何度も吹いて、顔を、葉っぱを叩いて鳴らす。気を抜いたらどこかに飛ばされて行きそうな、こっちのことなどお構いなしに吹いてくる風。
さんざん外を遊びまわって暑いはずなのに、それが吹くときだけは鳥肌が立つほど涼しい。
いま思えば秋の訪れを知らせる長雨前の風だったのか、それから暑さはすっかりおさまり、季節の変わり目に私は必ず風邪を引いた。

風が吹く夜、友人から砂漠地帯のオアシスに立つ大きな風車の写真が届いてそんなことを思い出す。久しぶりに風をつかまえてみたくなって、窓を少しあけた。
びゅう、と言って風が降りて、荒地にまわる風車が浮かぶ。
その一角に揺れる小さな畑。祖父の初盆に、とうもろこしをなんとなく食わず嫌いしていたことを告白した。
しばらく風だけが吹いて、ひんやり静かな眠りにつく。明日長袖を出してみる。

Artwork & Text = Aloha

「Aloha」は、𠮷田勝信(デザイン)、荒達宏(建築)、鈴木淑子(編集)、大江よう(テキスタイル)らによる、滞在活動およびコレクティブです。「どこでも出かけ、なんでも作る。採集物から作られたプロダクトや採集物そのものは、やがて一つの部屋となり風景になってゆく」をコンセプトに東北の山や海で活動を続け、フィールドワークやリサーチを通して見つけた一つの採集物から、デザインや印刷、言葉、テキスタイル、家具などのプロダクトの制作を試みています。

SEARCH

SITEMAP