SC3ウェブサイト 仙台市

私と「新」

ワタシト

仙台で活動するクリエイターとSC3編集部のライター陣が、毎月のテーマに沿って作品を発表する「ワタシト」。
そのテーマとのつながりを語りながら、写真やイラストと組み合わせ、一つの作品として発表します。
自分はそれについて、どんな印象をこれまで抱いてきたのか。
自分の人生にとって、一体どんな影響をもたらしているのか。
書き留めたエッセイとともに、クリエイターたちの「個性」を覗ける企画です。(月1回更新)

27歳、フリーライター。私はここ最近、やっと少しずつ人生に慣れてきた。

新鮮な刺激に溢れていた10代。退屈を思う存分持て余した20代前半。そして今。わからないことばかりの中でもがきながら進んできた新社会人の時と比べると、経験と知識が増えて引き出しが多くなった。「人生に慣れた」のは、見える世界が広がって選択肢が増え、生きやすくなったからだと思う。

ただ、その分新鮮なときめきがどんどん無くなってきているような気がして、寂しく感じる瞬間がある。

例えば私は映画をよく観るが、本数を重ねるごとに見覚えがある構成や演出に出会う。初めて観たらきっと感動していたであろう作品も、感動までたどり着かないことが増えた。心をわしづかみされるような物語に初めて触れた時のあの衝撃を知っているからこそ、物足りないような気がしてしまう。「もうすでに知っている」ことを、いつしか寂しく思っている自分がいた。

そんな時、ランダム再生していた音楽アプリから、宇多田ヒカルの「Automatic」が流れてきた。子どものころ親の車で何百回と流れていた曲で、当時は飽き飽きしていたのを思い出した。懐かしいと思いながらよく聴いてみると、不思議と歌詞やメロディのかっこよさに聴き惚れていた。「彼女はこういうことを歌っていたのか!」と目を見開くような新鮮な気づきがあった。私の経験や知識が、聞き飽きていたはずだった曲に色を付けたのだ。

そうか。「新しさ」は自分の内側にあったのだ。同じ物事に触れても、その時私が感じていることは日々アップデートされ、感じ方が異なる。そこにフォーカスすると次々と新しい感覚に出会い、ワクワクする。

久しぶりに読む好きな小説や映画で自分が感情移入する人物が違っていたり、昔はよく分からず飲んでいたコーヒーの知識が増えてより深く味わったり、どうせできないと諦めて手をつけなかったギターを弾くのが楽しくて仕方なかったり。そういうたくさんの「新しさ」が自分の中で見つかっていく。勝手に寂しさを感じていた私の人生は、まだまだ知らないことばかりで飽き足らない。それに気づいてから毎日が「新しい」のだ。

自分の捉え方次第で世界の見え方は一変する。いくつになってもたくさんの「新しい」に出会いたい。

Writer = 佐藤文香(ふみぽん)

1994年12月生まれ、宮城県気仙沼市出身。編集/ライター/ディレクター

岩手大学教育学部 卒業。
現在岩手を中心にフリーランスのライターとして活動中。
「柔らかく誠実な文章」を書くのが得意。
よく言われる言葉は「美味しそうに食べるね~」
占い好きが高じてタロット占いができるようになる。

note:https://note.com/fumipon30

Illustration = 鈴木杏(スズキアン)

1993年 岩手県釜石市生まれ、盛岡育ち。ファブリックメーカー、専門学校非常勤講師などを経験し、シェア方複合施設THE6のスタッフとして運営に携わる。2020年よりフリーランスとして活動中。仙台と岩手の二拠点生活を実践中。

Instagram https://instagram.com/anne56mochi_/

SEARCH

SITEMAP